恋愛ゲームの主人公、感情ジェットコースター。
ルルクさんにめちゃくちゃ仕返しされた。
美味しいご馳走を食べたはずのに、ルルクさんにずっとアーンってされて食べる食事が味がするはずがなかった。緊張と恥ずかしさのマリアージュで一周回って味がしない。もうトレビアンって言うしかない?
「‥もう!!ルルクさんの負けず嫌い」
「それはお前もだろ」
あれからある程度食べ終えた私をようやく手を離してくれて、「これに懲りたらあんなことをするな」って言ったけれど、それはルルクさんもです!!向かいの席に座ってじとっと睨むと、温かいお茶を差し出してくれた。
「‥ありがとう、ございます」
「この後、ケーキもあるがどうする?」
「一人で食べます!!!!」
「なんだ、残念だな」
お茶を吹き出しそうになって、もう絶対赤い顔だってわかっているけれどそれでも睨むと、ルルクさんがおかしそうに目を細める。クソ〜〜〜〜!!!!すぐそうやってからかってくるんだから!!頬を膨らませると、ルルクさんは頬杖をつきつつ面白そうに私の頬を突く。
「ちょ、ちょっと??ルルクさん?!」
「‥本当にすぐ百面相するな」
「これは!わかりやすく!怒っているんです!!」
「そうか。ああ、そうだ。収穫の方はとりあえず終わった」
「私の怒りをそんな簡単に流さないで下さいよ。っていうか、収穫終わったんですか?」
「雨が酷かったからな。落ちて悪くなったのも多くあった」
ああ、そっか‥。
あの嵐はすごかったもんな。
でも落ちた果物は少し安くなるものの、近隣の町や村に売るらしい。果物なんかはアレスさんが張り切ってジャムにするから普通に売って欲しいとおじさんに持ちかけたそうだ。アレスさん、紳士〜〜〜。
「あ、そういえばタリクさんが今日お土産を持ってきてくれたんですよ」
「は?」
「部屋にあるんで持ってきますね」
急いで部屋へ行って、お菓子と照明を持ってくる。
「‥なんだそれ」
「あ、これですか?新作の照明だそうで‥、えーと、このツマミを右に回すと‥」
パッと明るい光が部屋中に溢れて、まるで以前いた世界のように部屋全体が明るくなる。
「わーー!!すっごい明るい!!」
「これは、すごいな‥」
「はい。まだ試作品みたいですけど、これがちゃんと使えるようになれば、部屋の照明がもっと手軽に手に入るようになるって言ってました!」
「確かに、今は魔道具に金を払ってるしな‥」
「魔道具を買えない家は、まぁうちのようにランプとかロウソク生活ですしね」
これがあれば、夜も色々仕事ができて便利かもしれない。
テーブルで光る照明をルルクさんは感心したように見つめる。
「‥こんなのも作れるとはすごいな」
「お、ルルクさんが素直に褒めた」
「お前がはっきり夜でも見えるしな」
「んな???!!」
目を丸くしてルルクさんを見ると、ぶっと吹き出した‥。
この人は〜〜!!私の乙女心を弄ぶんじゃない!!
「ルルクさん、もう一回抱きしめましょうか?」
「またご馳走を食べたいのか?」
「く〜〜〜〜!!!絶対次はやり返してやる!!」
「そうかそうか。ああ、明日は朝の見回りに行ってくるからちゃんと用心しろよ」
「え、見回り?ああ、橋の方をですか?」
「川の流れは落ち着いたがな。大工が来るから魔物がいないか調べてくる」
ルルクさん、本当に働き通しじゃない?
守るぞ!って思ったのに、ご馳走になるわ、稼いできちゃうわ、お世話になりっぱなしだな。
「‥私も早く働きたい」
「ダメだ。しっかり休め。それも仕事だ」
「そうかもですけど‥」
「元気になったら、高台に行こう」
「え」
「‥あそこで食べる昼は美味しいしな」
ニヤッと笑うルルクさんに頷くけれど、そういえばリリベル様達と高台に行こうって話をした時には渋ってたから、あんまり好きな場所じゃなかったのかなって思ってたんだけど‥。ルルクさん、高台やっぱり好きだったの?
「‥ルルクさん、高台嫌なのかなって思ってました」
「は?」
「いや、ほらリリベル様達と行きたがらなかったから‥」
そういうと、ルルクさんは目をちょっと横に逸らす。
「‥あそこは、お前と食べる場所だからな」
目を見開いて、照れ臭そうにお茶を飲むルルクさんをまじまじと見つめてしまった‥。あの時、そんなことを考えていたの?そう思ったら、じわっと胸の中に嬉しさがいっぱい広がっていく。ああ、ダメだ。すごく嬉しい。すごく好き。
って、待って!!
まだどうなるかわからないから、感情の蓋!!
慌てて感情の蓋に、久々にダンベルを置いたけれど‥、私の胸の中は嬉しさと、早くこのゲームよどうにかなってくれ!!という気持ちでゴチャゴチャになっていた‥。




