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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、何も考えない。


ちょっと赤い顔のルルクさんと、ニヤニヤ笑う私。

ええ、ハンモックで私を抱きしめて寝ていたルルクさんはそれはそれは驚いたらしく、飛び上がったルルクさんと一緒にハンモックから落ちたのだ。


向かい合って、ルルクさんお手製のパンケーキを食べるけれど、大変複雑な顔をしたルルクさん。



「‥お前、本当にそういう時は起こせ」

「いやぁ、思いのほかルルクさんが気持ちよく寝てたから‥」

「‥‥警戒心をもっと育てろ」

「ちゃんと育ててますよ。それにルルクさんは大丈夫ってわかってるし」



そういうと、ルルクさんがそれはそれは大きな溜息を吐いて、私をジロッと睨む。


「‥じゃあ、次に何かあっても同じことを言えるんだな?」

「えーと‥、次は気を付けます」

「そうしろ」


ちょっと遠くを見つめるルルクさんに小さく笑って、私はふわふわのパンケーキに舌鼓を打つ。美味しい‥。最高に美味しい。



「そういえばルルクさん、畑へはいつ行くんですか?」

「食べたらすぐに行ってくる。絶対に寝てろよ」

「‥そんなすぐにでも動き出しそうな勢いで」



いや、まぁ掃除くらいはしようって思ってたけどさ。

ルルクさんはジトーッと私を見る。うう、全く信用されてない。


「わかりましたよ、ちゃんと寝ておきます」

「そうしてくれ」


静かに頷くルルクさんにこれ以上何を言えよう。

お皿までさっさと洗われ、部屋に押し込まれそうになった‥。

そんなに心配しなくても大丈夫だってば。



「全然役に立てなくて申し訳ないし、せめて蝶を描かせてもらえませんか?」



私の言葉にルルクさんはちょっと考え込んだけれど、蝶の誘惑には抗えないらしい。

眉間に皺を寄せて、「蝶なら‥」と言ってくれて、思わずにこーっと笑ってしまう。それならもう張り切って描きましょう。急いで部屋へ戻って、紋様液を持ってくると腕をまくってルルクさんが座っている。


「一応、描く前に言っておく」

「へ?」

「‥別に、役に立つとか立ってないとか、そんなのは考えたこともないからな」


そういうと、顔を横に逸らしてテーブルに腕を置いたけれど‥。

本当にこの暗殺者ってやつは‥。私をどれだけ気遣ってくれるんだよ。しかもまたも好きになっちゃうだろうに。フラグ回収が動いているんだから、気をつけて欲しいのに。


そう思うのに、嬉しくて結局頬が緩んでしまう。

黄色の蝶を描きつつ、そんな優しいルルクさんが今日も元気で、笑顔でいられますようにって、願いながら描き込んでいく。



「よし、できた」

「‥ありがとう」

「いえいえ、ルルクさんこそいつもありがとうございます」

「俺は何もしてないぞ」

「ええ??!あれだけしてくれておいて何を言ってるんですか?」



クスクスと笑いながら、紋様液を片付けるけれど素で言ってるんだろうな。

何を言っているんだとでも言いたげな顔をしているルルクさんを見上げて、何かあっても私が絶対守るぞって密かに誓う。なにせ恋愛ゲームの主人公だしね。好きな人くらい守ってみせる。


「‥それじゃあ、行ってくる」

「はい、行ってらっしゃい!」

「‥くれぐれも戸締りはしっかり。ドアは簡単に開けるな」

「はーい」


ゲームでは私の首をスッパスッパと切ってた暗殺者が心配してるのが、最早面白い。

笑いながら返事をすると、ルルクさんがドアの前に来た私を、両腕を伸ばしていわゆる壁ドンをした。



「へ?」

「‥簡単に捕まるくせに、気が抜けすぎだ」



じっと私を見下ろすコバルトブルーの瞳が、苦しそうに見つめている。

どこか痛いのかな?何かあったのかな?


「お前は‥、警戒心を持て」

「ええっと‥」


そうは言っても、私はこの19年警戒心をそこそこ持って生きてきたよ。

それこそ、ルルクさんが来てから爆上がりしたと思う。とはいえ、戦士を引退した身とはいえ私はすぐにでも切れてしまうような脆弱な存在だと思われているんだろうな。



どうしたものかと考えて、未だ両腕に閉じ込めているルルクさんに、



えいやっと抱きついた。



「は?」



ルルクさんの体がピシッと固まった。

お、やった?

ルルクさんて、急な対応にあんまり動けない感じだったから。これならイケるかな?って思ったんだ。そのまま、ギュウッとついでに抱きしめてみると、ルルクさんはますます固まってしまった。



そうして、パッと腕を離してルルクさんの腕から身を素早く屈めてすり抜けた。



「どうです?警戒心はないけど、逃げられますよ?」



ニンマリ笑って、ルルクさんの後ろからそう言うと、ルルクさんはそのまま前に一歩進んでドアに額をぶつけると、


「‥こいつは、本当に‥」


と、何やらぶつぶつ言っていて‥、

目元を赤く染めた顔でこちらをチラッと見た。



「‥お前、今日みてろよ」

「え」

「行ってくる」



そう言うと、ルルクさんはスルッとドアをすり抜けるように出ていったけれど‥。

今日みてろって一体何を見るの?もしかして、何か地雷を踏んでしまったのだろうか。‥色々考えてみたけれど、ひとまずベッドに潜って考えないことにした。





これで付き合ってないだと?という展開が

大好きです!!!!!!!!!!!!!!!

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