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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、暗殺者と一緒。


ルルクさんに手の甲にキスされたり、襲いかかってきたトニーさんからウィリアさんが撃退できた!四つ葉のクローバーに誰かを守れるようにと願いを込めたと聞いて‥、やっぱり騎士さんだなぁって思った。



いくらクローバーがあったからとはいえ、それまで剣を持つだけで震えていたのに、咄嗟に動けたなんてすごいとしか言えない。トニーさんは、どうやら鍵の甘い部屋で聴取されていたらしく、目を離した隙に飛び出してきたらしい。怖い。もっと強めに縛っておいてくれ。



うちで発見された時も手に斧を持っていて、橋を壊した犯人がほぼトニーさんで間違いないらしい。のびたトニーさんをウィリアさんが再度縛ると、すぐにレトさんが騎士さんに連絡してくれた。



「操った奴が何の目的かわからないが、とにかく壊しちまったのは言い逃れできない事実だから、ひとまず騎士団で預かってもらうことになった」

「そうなんですか‥」



ギルドの玄関先で騎士さんの馬車にのびたまま乗せられて、急ピッチで直した橋を通って、ダゴルの街へ連行されることになったそうで、剣をもう一度振るえるようになった感動に浸る間もなく、ウィリアさんは一緒に行くことになった。



「じゃあ、ユキちゃん。こいつ送ったらまたこっちへ来るね!」

「はい、気をつけて」

「あと、色々ごめんね‥」

「え?」



なんのこと?

私が目を丸くすると、ウィリアさんが吹き出す。



「付き合ってるフリしてって言ったろ?」

「あ」

「‥あれ、なしね」

「は、はい」



ウィリアさんはくしゃっと笑って、私の手をぎゅっと握る。


「‥ユキちゃん、どうか俺と結‥」


言いかけた途端、ルルクさんがウィリアさんの手を叩き落とそうとして、ウィリアさんが慌てて手を引っ込めた。



「あっぶな!騎士の言葉を遮るなよ!!」

「なにぶん戦士なんでそんな作法は知らなくてな」

「嘘つけ!!絶対わかってたろ!!」



えーと、何を言いたかったんだ?でもなしって事は、もう付き合ってるフリはしなくていいってことか。ホッとした私は渋い顔をしたルルクさんに抱き上げられたまま、ウィリアさんを見送ったけれど‥。怪我をしたのに、次から次へと大変だなぁ。



それに私もまだまだ問題は山積みだ。

なにせあのクモの正体も、誰が操って、何をしたかったのかもわからない。そして、私のフラグの回収もこれで終わり‥という確信もない。



恋愛ゲームの主人公なのに、あんまりな展開じゃない?

遠い目をしながら、馬車に手を振っている私を、ルルクさんがじっと見て、


「‥家に帰るぞ。しばらくは休め」

「ええ〜〜?でも、仕事が‥」


日銭が稼げないと困る。

どうしたものかと思っていると、レトさんがやってきて、



「今度は急ピッチで直した橋を補修する為に、大工が来るんだよ。あとお偉いさんも下見に来る。そうなったらまた仕事を頼むから、それまでは少し休んでおけ」

「そ、そうなんですか?」

「なにせ白い魔石を発見されたから王族の管理する土地になったろ?橋は、今度こそ簡単に壊れないようにしないとだから、今度は大掛かりな工事になるんだ」



なるほど‥。

それはまさに補助を得意とする紋様師の出番だな。


「まずは視察をして、それから必要な資材を持ってくるって話だから。ゆっくり休め。あ、あと畑の収穫はルルク頼むな」

「そうだった!畑‥って、ルルクさんが?」

「請け負った仕事は最後までちゃんとする」


‥なんだろう、その言い方が非常に暗殺者らしい。

い、いやいや、ルルクさんは大丈夫‥と、思いたいけれど、剣を持って私を睨んでいた姿を思い起こすとゾワッとしてしまうのは仕方ないよね?



「そうですか‥、じゃあ、すみませんがまた休ませて頂きます」

「おう!しっかり休んでおいてくれ!」

「はい、じゃあ失礼します」



ペコッと頭を下げると、早速ルルクさんが私を抱き上げたままのしのしと歩いていく。本当に歩いていく気だったのか‥。いや、ルルクさんはやるといったらやる男だったな。


空を見上げれば、少しずつお日様が夕暮れに向かっている。

あんなにすごい嵐だったのに‥。


と、ルルクさんが私を見つめて、反対の方角を指差す。



「何かありました?」



ルルクさんの指差した方向を見ると、薄いピンク色の染まる空に、黄色の蝶が羽を光らせながら群れになって踊るように飛んでいて‥、



目を見開いて、その光景を見た。



「綺麗だな」

「え、あ、はい‥」



優しく微笑まれて、思わず言葉に詰まる。

まさかまたあの光景を一緒に見られると思ってなかった私は、蝶達が空を舞う姿をじっと見つめる。



‥そういえば、私、ルルクさんに好きって言ったような気がするんだけど。

あれって、夢?それとも現実?意識が曖昧だったから、わからない。でも、特にルルクさんは何も言ってこないし、やっぱり私の夢だったのかな。



じゃあ、まだセーフ?

そっと視線だけ動かして、ルルクさんの綺麗なコバルトブルーの瞳を見つめる。



‥って事は、まだこの瞳を見てもいいってこと、だよね?



「‥綺麗、ですね」

「ああ」



蝶の方へ視線を移し、今はただルルクさんと一緒にまたいられることをひっそりと喜んだ。




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