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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、殴り込み?


目を覚ましたら心配そうに私を見つめるルルクさんに、手の甲にキスをされて私はパニックになった。


こちとら恋愛ゲームの主人公だってのに、全く恋愛経験皆無!

恋愛ダメ絶対だってのに!!何王子様みたいなことをしちゃってくれてるの??


そう思ったけれど、私がルルクさんを好きだから今回もフラグ回収が始まってしまったことを確信したんだけど、ん?待てよ。ってことはこの事態はどういう事なんだ??好きって言ってないよね?イベントなんて暗殺者との間には、もちろん一つもなかった。あるとすれば私の首を切る時くらいだ。



‥恋愛ゲームなのに、切ないな〜〜‥。

ルルクさんとの接点がまさかの殺伐スチルしかないとか。



「‥ユキ?」

「あ、なんでもないです。って、待って!!トニーさん!トニーさんがうちにいて!!」

「知ってる。あとから駆けつけた騎士が捕まえて、今取り調べをしてる」

「え、そ、そうだったんですね」

「‥ただ、誰に操られていたかは覚えてないらしいがな」



ルルクさんの言葉にぐっと唇を噤む。

‥覚えてない、のか。

それでもトニーさんが捕まったことに安心して、体を起こそうとすると、ルルクさんがさっと私の背中に腕を差し込んでゆっくり起こそうとしてくれる。


「す、すみません‥」

「それはこっちのセリフだ。あとお前しばらくまた抱き上げて移動だ」

「な、なんでですか!!だって、ルルクさん絶対白魔術師さんにまた手当てさせたでしょ?!」

「当たり前だ。だが怪我が酷かったんだ。無理は禁物だろう」

「雷に撃たれた本人に言われた‥」


私のせいじゃないのに!!

そう言いたいけれど、言ってしまえばルルクさんに悪いし、完全に何も言えない。



「‥ひとまず、家に帰りましょうか」



私の言葉にルルクさんが一瞬動きを止める。

ん?私は何か変なことを言ったかな?


「ルルクさん?」

「‥後ろ向いてるから、ブーツを履け。そうしたら抱き上げて帰る」

「え、ええ〜〜〜?本気ですか?私は歩けますよ?」

「いいから、今すぐ履け」


さっと後ろを向いたルルクさんに、何を言えよう。

ブーツを履いて、ルルクさんのシャツの裾をちょっとだけ引っ張ると、ゆっくりと私を振り返って安心したように微笑むから‥。胸がぎゅっと痛くなる。


感情の蓋よ、今こそ戻ってくるところだぞ。


そう思った瞬間、ルルクさんがひょいっと私を抱き上げ、視線が同じ場所になる。

う、うわ、前回も思ったけれど、本当にこれは照れる。



「る、ルルクさん、あのやっぱり下ろして‥」

「はいはい、帰るぞ」

「ちょっとは聞いて下さいよ!」



そう言いつつも照れ臭くて、すぐに目を逸らしてしまう。

ルルクさんが医務室のドアを開けて、廊下へ出ると奥でウィリアさんがこちらへやってくるのが見えた。



「ユキちゃん!良かった!目が覚めた?!」

「ウィリアさんも無事で良かった!怪我は?」

「ああ、ほらユキちゃんの紋様のお陰でそこまで酷くなかったんだよ!とはいえ、ちょっと手当てはしてもらったけどね」



そう言ってにっこり笑う姿は、ゲームの中でよく見た人懐っこい笑顔だ。

そんな姿に嬉しくなって私までつられるように笑ってしまうと、奥のドアでガタガタと大きく何かが倒れる音が聞こえたかと思うと、バタンとドアが開いた。



「え?」



奥の方で誰かが立っている?

そちらに目を向けてみれば、髪を振り乱して、目が爛々としているトニーさんが手を縛られていて、こちらを睨んだかと思うと、いきなり飛びかかってきた!!



「俺は!俺は何もしてねぇえええええ!!」

「わ‥」

「ユキちゃん!!!」



抱き上げられているこの状態じゃ、ルルクさんだって咄嗟に反撃できない!

思わずルルクさんを庇おうと首に腕を巻きつける。



けれど、ウィリアさんがものすごい勢いで剣の鞘を抜いたかと思うと、トニーさんの鳩尾を殴って、廊下の向こうへと吹っ飛ばし、トニーさんがぱったりと倒れた。



その瞬間、ウィリアさんの腕に描いてあった四つ葉のクローバーが光った。



「え?」

「光った‥?」



私とウィリアさんはお互いまじまじと見つめた。

クローバーが、4つあったはずの葉っぱが一つ消えている?!


「え、なんで葉っぱが‥」

「俺が‥」

「え?」

「‥・誰かを守れるようにって、願ったんだ」


ウィリアさんを見上げると、涙目になってる。



「‥まだ、鞘越しだけど剣を持てた‥」

「はい」

「俺、騎士が、できる‥かな?」

「絶対できます!!」



思わずそう強く言うと、ウィリアさんはとうとう涙を零した。


「ああ、くそ、嬉しいのに‥」


騒ぎを聞きつけた騎士さん達が急いで駆けつけると、ウィリアさんが剣を持てたことを知るや否や、皆で背中を叩いたり、頭を乱暴に撫でつつも一緒に喜んでいて‥、私はその光景を見ただけで胸がじんわりと暖かくなった。



「‥良かったですね」



ギュッといつの間にか抱きついていたルルクさんに、涙目で微笑むと、ルルクさんはちょっと赤い顔をして「そうだな」って言うと、すぐに目を横に逸らしてしまったけれど‥。えっと、急に抱きついてごめんなさい?




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