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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公と蝶の魔法。


ルルクさんが雷に撃たれて、私とウィリアさんは呆然と見ていると、

ゆっくりとルルクさんは膝を折って、地面に倒れた。



「ルルクさん!!」



駆け寄って、ルルクさんの体を揺するけれど、返事がない。

まさか‥死んじゃったの?ルルクさんを必死に揺するけれど返事がない。真っ青になった私に、ウィリアさんが急いで私の肩に手を置くと、


「すぐに助けを呼んでくるから!洞窟まで運ぶから待っててくれ」

「は、はい‥」


ウィリアさんが大きなルルクさんを担いだかと思うと、さっき逃げ込んだ洞窟にルルクさんをそっと置いた。


「魔物は、多分大丈夫だと思う。でも何かあればすぐ逃げてくれ。不安かもしれないが、絶対助けを呼んでくる」

「お、お願いします」


ウィリアさんは私の言葉に力強く頷くと、また雨と雷の鳴る中を飛び出して走って行ってしまった。


ザアザアと雨の強く叩きつける音と、雷の轟音に胸がドキドキと鳴る。

ルルクさん‥!お願いだから、いなくならないで。

岩の上に寝かされているルルクさんが見ていられなくて、そっとルルクさんの上半身を抱き上げて、私の膝の上に頭を載せて、顔を覗き込む。



雨でびっしょりに濡れているルルクさんは目を閉じたままだ‥。

気を失うとか、ダメージを与えたら操られた状態は解けるって言ってたけれど、大丈夫だろうか‥。私はルルクさんに手を伸ばしてかけて、引っ込めた。



私がルルクさんを好きだからきっとフラグを回収しようとストーリーが動いていると確信してしまったから‥。



やっぱり、私は誰も好きになっちゃいけなかったんだ。

でも、もうこの想いをどうすればいいかわからない。忘れようと思ったのに、流してしまえばいいと思ったのに、隠して、蓋をして、誰にも知られないようにしようと思ったのに、どこかできっと気持ちが漏れてしまったんだと思う。



「ごめんね、ルルクさん‥」



ルルクさんを助けたら、私はこの地を離れてルルクさんと別れて、もう絶対に誰とも関わらないように生きていこう。きっとそれが一番いいルートなんだ。



涙が溢れて、真っ青な顔に、びっしょり濡れた前髪をそっと耳の方へ流すと、ルルクさんの瞳がそっと開いた。いつも見ているコバルトブルーの瞳にホッとした。



「ルルクさん!?大丈夫?今、助けを呼んだから‥」

「‥ユキ」

「ここに、ここにいるから‥」



ルルクさんが手を彷徨わせて、私はその手をギュッと握る。

大丈夫、きっと大丈夫だから。



「ルルクさん、大丈夫だから」



できるだけ安心して欲しくて、一生懸命に口角を上げるとルルクさんが眉を寄せて、辛そうに顔を歪めた。でも違うんだ。本当に悪いのはルルクさんを好きでいる私なんだよ‥。



すると、ぼんやりとどこからか何かがふわふわと飛んでいるのが目に入る。



「え‥」



ぼんやりと光るものを目を凝らして見つめると、それはあの湖で見た黄色の蝶達だ。ふわふわと群れで、洞窟の中を自由に飛んで私とルルクさんの周囲を明るく照らすように飛んでいて‥、



ぼろっと涙が溢れた。



私はルルクさんが本当に好き。いまも、これからもずっと大好きだ。

それなのに、こんなに迷惑を掛けて、巻き込んでしまった。

私が恋愛ゲームの主人公でなければ、ルルクさんを好きにならなければ‥。矛盾する自分に涙が止まらなくて、ボロボロと泣いてしまうと、ルルクさんがゆっくりと体を起こした。


「ルルクさん?ダメですってば、雷に撃たれたんですよ?」

「‥大丈夫だ」

「でも、ちゃんと寝て‥」


そう言いかけた途端、ルルクさんが私をギュッと抱きしめた。



「え」

「‥‥ユキ」

「はい?」

「‥悪かった。怖い思いをさせた」



もしかして、記憶があるの?

私は驚いてルルクさんを見上げると、眉を下げて辛そうな顔をするから‥私はブンブンと首を横に振った。


「ルルクさんのせいじゃないです。それに、元に戻って良かった」


ギュッとルルクさんの体に腕を回すと、トクトクと心臓の音が聞こえる。

ああ、良かった‥。生きていた。


顔を上げてルルクさんに小さく笑いかけると、照れ臭そうに目を逸らすくせにルルクさんも私の体に回していた腕を自分の方へと引き寄せる。



恥ずかしいのに、嬉しくて、

怖いのに、安心してしまって‥、一気に安堵感と疲労感と痛みがドッと押し寄せてきた。




「‥ルルクさん、大好き‥」



悪いことをしたなんて一つも思わなくていいよって言おうとしたのに、感情の蓋がどこかへ飛んでいってしまったんだろう。ずっと一生懸命押し込めていた言葉が、口を突いて出てしまったのを、意識を飛ばしかけていた私は気が付く間もなく瞳を閉じてしまった。





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