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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、警戒値引き上げ要求。


びしょびしょになって我が家へ帰ってきた私とルルクさん。

おじさんから借りた穴が開いた傘から雨水が落ちてくるのを見るだけで笑ってしまったけど、そのお陰でどこかギクシャクとした空気がいつもの雰囲気に戻っていてホッとした。


まぁ半分以上は私の責任でもあるんだけど。

家に入っても、外は相変わらず大雨が降っていて、明後日の嵐の前にこんなんじゃ当日どうなってしまうんだろうと、びしゃびしゃの体で窓の外を見ると、ルルクさんが私をチラッと見た。



「おい、先に風呂入れ」

「え、でもそれならルルクさんが‥」

「家の決まりだろ。お前が先だ。それに顔が白いぞ」

「‥うう、じゃあすみませんがお先に入ります!」

「ちゃんと温まれよ」



びしゃびしゃのルルクさんにひとまず乾いたバスタオルを渡してから、私は大急ぎでお風呂場へ駆け込んでシャワーを浴びる。暖かいお湯に体がホッとして力が抜けた。‥なんだか色々あったけれど、ともかくいつものルルクさんで良かった。


あのまま、リリベル様と一緒にいたらルルクさんはもしかして暗殺者になってしまうか、リリベル様と恋仲になってしまうのでは?って思ったし、何よりウィリアさんの剣を持てない理由が重すぎて‥。色々な感情を体から吐き出したくて、大きく息を吐いた。



お節介で四つ葉のクローバーなんて描いてしまったけれど、

あれだけ気に病んでいたウィリアさんだ。元気になるにもきっと時間が掛かるだろうな‥。



タリクさんや、アレスさん、シヴォンさんとはまた違う理由で苦しんでいる彼を、私は結局どうすることもできないんだよなぁ。攻略対象な上に、できれば接触を控えたいけれど、理由を聞いてしまうと、やっぱりどうにかできないかなぁって思うのは‥、最早性分なのかもしれない。余計なフラグを立てて、死にたくないけど。



髪の水滴をキュッと手で絞ってから、体を手早く拭いて急いで脱衣場へ移動して着替えようとして、ハッとした。



靴、びしょびしょだ‥。

慌ててお風呂場へ飛び込んだからスリッパを用意するのを忘れてた!!

‥どうしよう、異性に裸足を見せるのは確かベッドへお誘いするって、珍しく赤面したルルクさんに「今後絶対するな」って言われてたのに‥。


しかも肝心の着替えを忘れた。もっとまずい。


「やばい!!!何もない‥!下着を持ってきてなんで服を忘れた私!??」


慌てて周囲を見回すと、ルルクさんの大きなシャツが洗面所の前に乾かそうと思って干してある。



「こ、これ借りてもいいかな?」



いや、今回は緊急事態だ。

申し訳ないけれど、一旦このシャツをお借りして、あとはバスタオルで体を包んでから、顔だけ出して状況説明して、急いで自分の部屋へ飛び込もう。



そっと洗面所のドアを開けて、静かに顔を出してルルクさんがいないか周囲を見回す。けれど、リビング兼ダイニングには誰もいない‥。シンと静まり返っている。‥もしかして作業部屋で着替えているのかな?それならダッシュで走って部屋へ行こう。そっとドアを開いて、部屋まで走って行こうとした瞬間、



作業部屋のドアがパッと開いて、乾いたタオルで乱暴に髪を拭いていたルルクさんと目が合った。



「あ」

「え」



ルルクさんのシャツを着て裸足のままの私と、ルルクさんの間に一瞬の静寂が訪れ‥、



瞬間、ルルクさんが顔を赤くして、私をジロッと睨んだ。



「お前は!!!!!」

「す、すみません!!!服とスリッパ忘れちゃったんです!!」

「いいから、早く部屋へ行け!!」

「はいぃいいい!!!!」



バタバタと走って部屋へ飛び込んだけれど、うわ〜〜〜〜!!!

なんてこんな時に限ってタイミング悪く色々起こるんだろう‥。大きなルルクさんのシャツを脱いでから、自分の洋服を棚から取り出して着替えた。


「疲れた‥」


感情の起伏が、たった半日と少しなのにジェットコースターのようだった。

もう絶対今日は夕飯を食べたらさっさと寝よう。

自分の服に着替えて、しっかりスリッパも履いて、ルルクさんのシャツをいつもより丁寧に畳んでそっと部屋から出てくると、赤い顔のままのルルクさんがジロッとこちらを睨む。


うう、私の命日は今日ですかね?



「か、重ね重ねすみません‥」

「‥‥お前、本当に警戒心を持て」

「る、ルルクさんだし、大丈夫かなって‥」



窺うようにルルクさんをそっと見上げると、ルルクさんは未だ目元を赤く染めたまま複雑な顔をしたかと思うと、大きく息を吐いた。



「‥‥‥‥俺でも、警戒しろ」

「は、はい?」



ルルクさんは大丈夫ってダメな感じなのか。

いやきっと男性はすべからく警戒しろって意味なのかもしれない。コクコクと頷くとルルクさんは私の抱えていた自分のシャツをスルッと取ると、洗面所へ向かっていって、私はホッとため息を吐いた。




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