恋愛ゲームの主人公、本当の騎士。
ウィリアさんが庇ってくれたけれど、大蛇にあわや食べられそうになった。
けれどそんな私達を助けてくれたのは、ほかでもないルルクさんだった。一体ルルクさんはどんなセンサーがついてるの?と不思議である。
しかも今回も大蛇の首が綺麗〜に切り落とされている‥。
暗殺者って首を切り落とさないと我慢できない生き物なの?
ただでさえシチュエーションが怖いのに、何故かジロッと睨むルルクさん。
やっぱり暗殺者!睨んだら迫力がある!!って、そうじゃない、ちゃんと説明しないと。
「あの、レトさんに言われて‥」
説明しようとすると、ルルクさんが眉間に皺を寄せたままズンズンとやってくると、え、え、なに?
「離れろ」
低い声でルルクさんがそう言うと、
「え〜〜、やだ!」
ウィリアさんが私をギュッと抱きしめた。
そうだった!庇ってくれたんだった!でもそこは離してくれ〜〜!!するとベリッとルルクさんが問答無用でウィリアさんを剥がしてくれた。た、助かった‥。
慌ててルルクさんの後ろにパッと隠れて、
「ウィリアさん!助けてくれたのは感謝しますけど、その後の行動は感心しませんよ!??」
「俺すごく頑張ったんだし、それくらい良くない?」
「「良くない!!!」」
私とルルクさんの声が重なった。
本当に3年間で大きく変わり過ぎじゃない??真面目成分どこ行った?
ルルクさんは私をチラッと見て、
「怪我はないな」
「あ、はい。でもレトさんと来たんですけど途中で別れて‥、」
「レトとここへ来たのか?」
「はい。魔物が出たって言うから‥、紋様を描きにきて」
「それでか‥」
私の言葉にようやくルルクさんは納得してくれたのか、小さく頷くとウィリアさんに視線を向ける。
「ユキを守ろうとしてくれたのは感謝してる。だが、逃げる時はちゃんと逃げろ」
「‥え」
「誰かを守ろうとする姿勢は騎士だがな」
お、おお、ルルクさん、もしかしてウィリアさんを励ましてる?
あまり見ないルルクさんの姿に目を丸くして、まじまじと見つめると、ルルクさんに「見過ぎだ」と言われて頭をワシワシと撫でられた。照れ隠しか‥。
ウィリアさんはそんなルルクさんにちょっとぽかんとして、それから自嘲気味に笑った。
「‥剣が使えない、騎士だぜ?」
「剣を構えるだけでも勇気がいるんだ。誇れ」
「もし今、間に合わなかったら?同じ事が言えたか?」
「間に合うようにする。そして同じ事を言う」
キッパリとルルクさんが言い切ると、ウィリアさんは目を見開いた。
さっきは茶化してたけど、やっぱりウィリアさんは剣を使えない事をすごく気にしているんだな。‥そりゃそうだよね。だって3年間騎士になる為に頑張って騎士団に入団したんだもん。
ルルクさんの言葉に俯くウィリアさんに、なんて声を掛けようかと思っていると、ルルクさんは私をさっと縦に抱き上げた。
「る、ルルクさん?!!」
「どうせろくに歩けないだろ‥。まだどこから魔物が出るかわからないんだ。このまま騎士達のいる場所へ一旦行く。その後、レトを探してくる」
「え、ええ??でも降ろしてもらっても‥」
「今しがた襲われかけていたのは誰だ?」
「紛れもない私です〜〜‥」
ジロッとルルクさんに睨まれて、私は静かに口を閉じた。
う、うう、私だって好きで魔物に襲われそうになった訳じゃないのに〜〜。
と、ガサガサと林を歩く数人の足音と声がする。
そちらを見ると、数人の騎士さん達が剣を持って私達を見るなりこちらへ駆け寄ってくる。
「こっちに大蛇は?」
「おい!怪我はないか?!」
「あ、だ、大丈夫です。ルルクさんとウィリアさんが助けてくれて‥」
私がそう説明すると、首を綺麗に切られた大蛇を見て騎士さん達が驚いたように声を上げた。
「あ、あと、レトさんが‥、ギルドマスターのレトさんが一緒にいたんですけど」
「彼なら大丈夫だ。さっき俺達が保護した」
「怪我は?」
「腰を痛めている。貴女は紋様師ですよね?白魔術師もいるが、大蛇の奇襲で怪我人が出ているので、治療をお願いしても?」
「はい、すぐ行きます!」
といっても、ルルクさんが私を運ぶしかないんだけど‥。
チラッとルルクさんを見ると、ニヤッと笑って、
「安心しろ。運んでやる」
「‥もう騎士さん達もいるから、魔物は大丈夫だと思いますけど」
「‥‥それ以外でも気を付けないとだろ」
「何を??」
それ以外で気を付けない事ってなんだろ。
ルルクさんは私をジトッと見ると、騎士さん達が設営したという場所へ一緒に歩いていく。
ふと、林の中へ入っていく途中、後ろにチラッとウィリアさんが見えた。
私達をじっと見つめ、剣をギュッと握りしめている姿が目に入って‥、普段は茶化しているけれど、どこかあれが本当のウィリアさんの姿なのかなって思った‥。




