恋愛ゲームの主人公と動けない騎士。
ギルドになんとタリク先生‥じゃなくて、タリクさんが現れて驚いた私。
そういえばつい最近まで先生だったもんね。
ウィリアさんは目を横に逸らしつつ、タリクさんのお小言を聞いていたけれど、一通り言い終わると私の方へ向いて、
「さて、ユキさん。私も魔石の紋様をお願いしても?」
「先生〜〜、それズルくないですか?」
「いいえ、私も今日は魔石の発掘をしますから、全然ズルくありません」
ウィリアさんの言葉を一蹴して、サラッと言ったけどタリクさんも参加するの?
「あ、もしかして白い魔石ですか?」
「はい。この間池ができて、そこに白い魔石が沢山発見されたでしょう?あれを放置しておくと、魔物が寄ってくることが調査ではっきりしたので、早々に発掘してこようという話になったんです」
タリクさんはそういうと、ウィリアさんが座っていた椅子にサッと座って、慣れた様子で腕をまくると「今日はここにお願いします!」といい笑顔で笑った。うん、迷いがないなぁ。
ウィリアさんはそんな様子を不満げに見て、
「っていうか、マジで魔物が集まるんですか?」
「アレスと以前、白い魔石を見つけた洞窟付近の魔物の出現数を調べたら、やはりそちらも増えていました。だから騎士団も来たんでしょうに、信じてなかったんですか?」
「信じてますよー。ていうか、それじゃ他の所もやばいんじゃ‥」
「そっちは白い魔石は僕が採って、すでに王都に厳重に保管してありますから。だけどこっちはまだ手付かずだから‥」
そうだったんだ‥。
照明を見つける前に、魔石が魔物を呼んでしまうなんて大変なことを知ってしまったら、そっちを早急に手を打たないとまずいよね。と、照明で思い出した。
「そういえば、うちに湖の水を持って来て下さってありがとうございます。あれ、昼間でも明るくて照明の代わりになってすごく便利でした」
「そうでしょう?あれ、照明にできないかと試行錯誤してるんです」
「え、そうなんですか?そうだったら嬉しいなぁ〜〜」
「そうですか?じゃあ、これ良かったら‥」
魔石の紋様を描き終えると、タリクさんが持っていたカバンから白い丸い玉を取り出した。ツルッとした丸い玉は丁度手の平に乗るサイズだ。
「‥これって?」
「まだ試作品なんですけど、これを水に付けると発光するんです」
「え、すごいですね!」
「ただ10分くらいなんです。だけど結構明るくなるので、災害があった時には便利かなって」
「ええ、それはすごく良いアイデアですね」
そういうと、タリクさんは嬉しそうにニコニコ笑って、私に一つ手渡してくれた。
「ありがとうございます!ええ〜、いつ使おうかな」
「湖に落ちた時じゃないか?」
「もう!ルルクさん、そんなしょっちゅう落ちませんってば」
すかさず後ろからツッコミを入れるルルクさんをじとっと睨むと、アレスさんがこちらへ駆け寄ってくるのが目に入った。
「え‥お前、ウィリア?!もう、大丈夫なのか?」
大丈夫?
突然やって来たアレスさんが驚いた顔でウィリアさんを見て聞けば、ウィリアさんの顔が瞬時に固まる。
「‥わからない‥」
「お前、ユキさんに相談したのか?」
「‥そんな、ことしない」
「でも、何かあったら‥」
「大丈夫だって。今日は魔石の発掘だけだし。じゃあねユキちゃん!」
ウィリアさんは逃げるように、サッと騎士さん達のいる場所へ行ってしまったけれど、なにかあったの?アレスさんを見上げると、ちょっと眉を下げて笑った。
「‥ちょっと、まずかったですね」
「アレスが心配する気持ちもわかりますけど、本人もどうにかしたいと思って、ここへ来る事を希望したんでしょうし、もう少し様子を見ましょう」
タリクさんとアレスさんの会話に私は二人を交互に見ると、二人はちょっと悲しそうに笑った。
「‥‥彼、剣を握ると、体が動かなくなってしまうんです」
「えっ!?」
「騎士になって、仕事を始めて間もなく‥」
「だ、だって、さっき騎士になりたくてって‥」
「ええ、ですが体が動かなくなってしまっては、仕事ができません。だから彼はここの所、戦うことのない場所へ配属してもらっているんです」
「そんな‥」
ゲームではあれだけ騎士になる為に練習をしてたのに‥。
戦えないって‥。思わず呆然とする私にルルクさんがちらりとこちらを見る。
「緊張で体が動かない事はよくある」
「そうなん、ですか?」
「‥場数を踏めば、動けるようになるだろ」
「ルルクさん‥」
むすっとしつつも、元戦士の言葉は結構重い。
きっとルルクさんもそんな事あったのかもなぁ‥。
「じゃあ、今度紋様を描きに来たら、元気に動けるように何か描いておかないとですね」
「「ぜひ!!」」
タリクさんとアレスんさんが口を揃えてそう言うので、つい笑ってしまった。
なんだかんだ攻略対象は皆、仲が良いんだなぁ。




