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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、魔物虫と蝶。


あれからルルクさんと一緒に手を繋いで帰った。

って…、えーと今更だけどあれはフラグにはならない、よね?まぁ、もう帰ってきちゃったし、今更か。



一緒にいつものように夕飯を食べ終え、テーブルで明日の仕事で使う紋様液の準備をする。


今日はウィリアさんという存在に大きく振り回されたけれど、明日からどうなっちゃうんだろ‥。ていうか、仕事もあるのに遊ぼうとか‥そんなのできるのか?私は首を傾げていると、ルルクさんが剣を腰に携えて作業部屋から出てきた。



「あれ?ルルクさん、どこか出かけるんですか?」

「‥レトが、湖の見回りに行って欲しいって連絡がきた」

「え?今??夜ですよね」

「夜だからな」

「でも、徒歩で??」

「レトが馬を連れてくる」

「あ、それなら良かった‥」



流石に夜道を徒歩はキツイ。

ホッとしていると、ルルクさんが私を見て、


「一緒に行くか?」

「え?」

「夜の「湖の夜明け」を見たいと言ってたろ」

「え、でも仕事、ですよね?」

「魔物が出たら、どっちにしろ馬から降りて倒す‥時もある」


どっち??

と、思いつつも今日の出来事で気分がどうしても重くなってしまうので、確かに気が紛らわせるなら有難い。


「お邪魔でないなら‥いいですか?」


私がそういうと、ルルクさんは面白そうに笑った。

急いで仕事道具の紋様液を作り終え、準備をした頃に馬の蹄の音が聞こえて、ルルクさんが先にレトさんに話をしに行った。その間に、私は支度をして外へ出るとレトさんとギルドの人達が数人馬に乗って私を見つけるなり手を振って挨拶してくれた。



「お〜、ユキちゃん、今日大変だったみたいだね」

「なんだな、あの軟派な騎士は!」

「ああいう手合いはほっとけばいいからね!」

「あ、あはは‥。はい、そうします」



皆、やっぱりあの場面をバッチリ見ていたのか。

でもそう言ってくれて、私は大変気が軽くなる。けれど、断りたいんだけどバラされては困るという‥人生難しすぎない?と、ルルクさんが私を手招きする。


「ユキ、こっちに来い」

「あ、いいんですか?」

「魔物は少ないからな。問題ない」


馬に乗ったレトさんを見上げると、ニカッと笑って「せっかくの湖の夜明けが嫌な思い出で終わったら嫌だろ?」って言ってくれて‥。私は本当にここに逃げて良かったなぁって思わず涙が出そうになる。



しかし、そんな私の情緒を知るよしもないルルクさん。

ヒョイっと私の腰を掴むと、あっという間に馬に乗せて、自分も後ろに飛び乗った。‥ちょっとくらい情緒〜〜‥。



「よし、行くぞ」



レトさんの掛け声で、皆また湖の方へと馬を歩かせる。

暗いのに馬もすごいなぁと感心していると、間もなく林の向こうが明るくなってくる。



「わ‥、綺麗!」

「事件の時以外は、ユキは見てないもんな〜。いいもんだろ!今年は結構長く光りそうなんだよ」

「そうなんですか」



レトさんの言葉に目を丸くして、また湖を見るけれど‥、確かに私が初めて見た時よりも明るいかも。後ろのルルクさんに振り返る。


「これって、白い魔石も関係しているんですかね?」

「多分そうだろう。タリクがどうも白い魔石が通常より多いからかもしれないと言ってた」

「へ〜〜」


白い魔石の量で発光する量が変わるのかな。

ゲームでもタリク先生が色々説明してくれたけど、よくわかってなかったので今更ながらにもうちょっと聞いておけば良かったと悔やまれる。



それにしても、キラキラと底から光が溢れてくる光景は本当に綺麗だ。



「‥これ、ボートに乗って見たらきっと光の中にいる感じなんでしょうね。綺麗だなぁ‥」

「‥‥そうだな」



うっとりと眺めていると、不意に虫が飛んでいるのが目に入って、ギクッとする。


「魔物虫??!」

「蝶だ」

「え、蝶?」


よくよく見ると、黄色の蝶だ。

本当だ!でも、夜に蝶って飛ぶの?

明るいから、昼間だって勘違いしちゃったのかな?



「‥もう魔物虫は懲りごりなんで、蝶なら何でもいいや‥」



思わずしみじみと呟くと、レトさんがぶっと吹き出したかと思うと、ギルドの皆もルルクさんも面白そうに笑った。


「普通はあんな集まって発火しないもんな〜」

「集まっても、2・3匹だしな」

「そ、そうだったんですか???!」


2・3匹どころか黒い塊だったんだけど??

目を丸くして、ハッとする‥。やっぱり、あれフラグの回収だったのでは‥?



じゃあ、今回はどうなるんだろう。

確かルート通りにいけば暗殺者に執拗に狙われることになるんだけど???そろっとルルクさんを振り返ると、いつものように優しく笑ってくれて‥。



うん、ないな。

そのルートはきっとない。

ないったらない!!!



私は無理矢理そう思い込んで、曖昧に笑い返した。





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