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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公と一級建築士。


向かいの席には、ルート通りであれば私の婚約者であったであろうウィリアさんが座っていて、私の横にはルルクさんが座っている。



なんだろう、このとんでもない絵面。

いや、ルルクさんもウィリアさんも何も悪くないんだ。

主に私が恋愛ゲームの主人公なのに、どなたとも恋愛フラグを立てたくない私だ。



「それでは、これから聴取を始めさせて頂きますね。俺は、ウィリア・フェイトと申します。いくつか質問しますが、思い出すと怖いとか、辛いことがあれば無理に話さなくても大丈夫ですから」

「あ、はい。よろしくお願いします」



短い黒髪にスカイブルーの瞳、キリッとした顔は3年経って随分と青年らしくなったなぁっと思いつつ、私はいくつか質問に答える。淡々と仕事をするウィリアさんに、これなら大丈夫かな?なんて思っていると、ペンを横に置いたウィリアさんが私をジッと見つめる。


「最後の質問なんですが‥」

「あ、はい」


なんでペンを置いたんだろう?

そう思っていると、



「彼氏はいますか?」

「はぁ???」



思い切り素っ頓狂な声が出た。

なんだって?何を言った??私が目を丸くすると、ウィリアさんがにっこり笑って、



「すげー可愛い子だなぁって思って!彼氏いないなら、俺と付き合って下さい!」



おーーーーい!!!!

格好いいとか思ったさっきの私を返して!!

あとフラグを!フラグを立てるんじゃない!!!

なんていうか、割とゲームでは照れ屋で硬派なイメージがあったけど、その貴方は何処へ??砕けた口調と軽い態度に目を丸くしていると、ルルクさんが思い切り舌打ちすると、勢いよく椅子から立ち上がる。



「帰るぞ、ユキ」

「あ、はい‥」

「君、()()失踪した「ユキ・ティラルク・ルーシェル」だよね」



椅子を立ち上がろうとして、ふっと体が固まる。

なん、だって‥?


「やっぱり!当たってた」

「いいえ、他人の空似です」

「ええ〜、仮にも婚約者になるはずだった人間を俺、間違えないよ」

「は?」


婚約者になるはずだった人間?

私がまじまじとウィリアさんを見ると、面白そうに口が弧を描く。



「ご両親と、うちの両親は仲が良くてね。葬儀にも行かせてもらったんだよ。その時、君を見かけて‥俺の婚約者になる子はあの子だよって言われたんだ。まぁ、その後はそれどころじゃなくなったようだけど‥」



まさかの葬儀で会ってた!!!!!

でも私はそんなの全然覚えてない。だっていきなり両親が亡くなってしまって、もう茫然自失だったし、これからどうなってしまうんだろうって不安しかなかったから‥。まぁ、その後はもっと不安だらけの日々になったんだけど‥。



ルルクさんはそんな私とウィリアさんを交互に見て、冷たく言い放つ。


「だからと言ってそれがなんの関係がある。今は他人だろ」

「でも彼女は、理由があってここに隠れてるんだよ。ね?」


うううう!!!

人の痛い所を的確に突いてくるな。

面白そうに笑うウィリアさんを、私はジロッと睨む。それ以上言ったら、口の中に聴取の紙を突っ込んでやる!!しかしウィリアさんは気にも留めず、ニコニコ笑って‥、



「俺さ、ここに2週間仕事でいないといけないんだ〜。こんな田舎じゃ暇だなって思ってて、まぁ君がいれば楽しめそうだし、ラッキーだなぁ」

「私は一言も付き合うなんて言ってませんけど!??」

「じゃあ、しばらく一緒に遊んでよ。それでいい」



急に要求下げてきたな??

一体、なんで??私が困惑しているのをいいことに、ウィリアさんは椅子から立ち上がって、「契約成立ね」と笑うと、私の髪に触れた。


「よろしく。僕の婚約者」

「今は赤の他人です!!」


なんなんだ、この人ーー!!

フラグというフラグを消そうとしているのに、ボコボコと立てて‥こいつは一級建築士か?それとも大工なのか??



「ユキに触るな…」



低い、怒りを孕んだ声が頭上から聞こえて、そろっと横に立っているルルクさんを見上げると、それはもう今にも倒しますっていう眼光でウィリアさんを睨んでいる。


わ、わあああ!!!!こっちはこっちで怖い!!

でもちょっと嬉しいって思っちゃう私もちょっと落ち着いて!!


確かに私がここに隠れているのがバレては困る。

大変困るのは確かなのだ。こうなる前に、元執事長さんに早く手紙を出しておくべきだった。せめて伯爵が私を探していないとわかってさえいれば‥。ジロッとウィリアさんを睨んで、



「言っておきますけど、私は絶対お付き合いはしませんからね」

「望み薄いかぁ〜、残念」

「全然そんな顔してませんけどね」



思わず呆れた声でそう話すと、ウィリアさんは恭しくドアを開けてにっこり笑った。




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