恋愛ゲームの主人公、攻略対象面会拒否。
天国のお父様、お母様、お元気でしょうか?
もしかしたらユキは近くそちらへお邪魔するかもしれません‥。
だって!!
なんで新しい攻略対象がもういるの??!!
もうちょっとタリクさんから、アレスさん、シヴォンさんと間があったよね!??
って部屋の中心で頭を抱えたけれど、なかったな‥あんまり間がなかったな?でもさ!!ようやくシヴォンさんの「呪い」が解けて、私も元気になった〜ってところでなんでいるの?!
そこでふっと思い出した。
白い魔石が見つかったから、王族が管理するってタリクさんの言葉。
そしてそこで誘拐なんざあったから、騎士団まで出てくる事になったんだよね、多分。
「原因、主に私じゃないか‥」
まさかの絶対会わないであろう騎士さんが!!
私のせいで来てしまったのか?!
「い、いやいや、まだ会うとは決まってないしね」
そうだ私。
落ち着くんだ私。
いかに私が恋愛ゲームの主人公といえど、そんなに人生うまくいく訳がない。今までもうまく人生がいってるとは思えないけど‥。
「‥ユキ?大丈夫か?」
ドアの向こうで控えめなノックと共に、ルルクさんの声が聞こえてハッとした。
そうだった、籠を取りに行くって言って思考の海を泳いでしまった!
慌てて籠を持って、ドアを開くとルルクさんがホッとした顔をする。‥心配かけちゃったかな?
「すみません、どの籠がいいかなぁ〜って思ったら思考の海を泳いじゃって‥」
「思考の海を泳ぐだけならいい。そっちも持つ」
「大丈夫ですよ、軽いし。私だってちょっとくらい重いの持てるんですから!」
「そうかそうか」
ルルクさんは私の言葉を流して、サッサと私の手から籠を取り上げて歩いていく。
あ!ちょっとそんな紳士な事、またして!
「‥ルルクさんは、雇用主の言う事聞かないんだから‥」
「それは申し訳ありません」
「ぶっ、ルルクさんが素直」
「雇用主にまた首って言われたら、困るからな」
うっ‥。
思わず言葉に詰まって、ルルクさんの背中を見上げる。
なんでもないような顔をして、裏の畑へ通じる扉を開けてルルクさんが先に外へ出たけれど‥、私だって好きで首にしたい訳じゃない。だって、どんどん想いが募ってしまって‥。でも、ルルクさんをこれ以上巻き込みたくないんだよ。
あの最初に拾った時のボロボロだった姿を思い出すと、今でも胸がギュッと痛くなる。魔族とのハーフって言ってたし、やっぱりそれなりに酷い差別も受けてたんじゃないかなって思うし。そう思ったら、ルルクさんのシャツの裾を右手が無意識に掴んだ。
「‥ユキ?」
「あっ」
しまった。
無意識に手が‥。
チラッとルルクさんを見上げると、不思議そうに私を見下ろすコバルトブルーの瞳と目が合った。な、なんて言い訳したらいい?なんだか切なくなってとか?どうしようと思いつつ、ギュッとシャツの裾を握ってしまうと、ルルクさんがふっと笑う。
「‥顔、見たくなったのか?」
その言葉に、目を見開いた。
それ、ルルクさんが魔物退治に行く前に言った私の言葉だ。
「‥覚えてたんですか?」
「そりゃ、まあな」
「えへへ〜〜、確かに今その気分だったかも」
「だったかもって‥、気が付かなかったのか?」
「ルルクさんに言われて確信が持てました」
「なんだそれ」
ルルクさんが眉を下げて笑うと、私も釣られて笑ってしまう。
ああ、本当にこの空気が好きだな。ずっとこうだったらいいのにな‥。
と、ルルクさんが裏の畑の横道にある馬の蹄の後を見て、
「そういえば騎士達もさっきここを通ってたな。警備隊に騎士にと、ここも騒がしくなりそうだな」
「そ、そうですね」
騎士‥。
そうだった〜〜〜!!
あの攻略対象であるウィリアさんが見間違いであって欲しい。
けれど、私の第六感がそれはないと叫んでいる。流石にこれだけ色々巻き起こしているから、私にもわかる。
ストーリーが破綻しているけれど、回収をする為なのか、次の攻略対象がもう来てしまったんだ。できれば、今度こそ!!今度こそ!!なんの接点もないまま過ごせますように!!祈るように畑の野菜に手を伸ばす。
「あの騎士達にまた聴取か」
ルルクさんのボソッと呟いた言葉に、思わず野菜で空を掴んでしまった。
そ、そうだったーーーー!!!聴取あったーーー!!!!




