表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
12/249

恋愛ゲームの人物と過去。


美味しい夕食を完食し、お皿は私がルルクさんの分も洗う。

だって作って貰ったのに、何もしないとか無理でしょ。

お皿を洗い終えてから、お茶を淹れてルルクさんにカップを手渡す。



「あの、一応家の決まりごとを決めておきません?」

「決まりごと?」

「洗濯とか、お風呂に入る時間とか?」

「ああ‥、そっちか」

「他に何かあるんですか?」

「‥‥いや、ない」



じゃあなんだその間は。

ひとまず洗濯は一緒にするけど、下着はそれぞれで。お風呂は私が先で、ルルクさんが後。リビングの隣にある私の部屋へは原則侵入禁止。といっても、扉に『悪意ある者、侵入不可』って防御用の紋様と一緒に書いてあるから入れないと思うけど。


ソファーで寝るには流石にきついと思うので、仕舞っておいたオットマンを出してルルクさんの長い足をカバーして貰うことにしたけど、この世界にソファーベッドってあるかなぁ。あれば用意しておきたい‥って、それじゃあいよいよ長きに渡って雇用延長の運びになりそうだし‥、でも睡眠も大事だしなぁ。


そんなことを考えつつ、決めたことを紙に書き込んでいく。


「よし、まぁ一緒に生活していって、適宜に色々すり合わせしていきましょう」

「‥お前はもう少し警戒心をその間に育てておけ」

「お前じゃありませーん!あ、そうだ、早速すり合わせ!ちゃんと名前で呼ぶこと!これ決定です〜〜」


ふふん!

一応私は雇用主になったから、嫌とは言わせないぞ?

さっきトニーさんと一緒にいる時、私の名前を呼んだんだから、ちゃんと覚えているのはわかってるしね。私がニマニマしながらルルクさんを見上げると、ルルクさんは呆れたように私を見て、


「‥その気になったらな」

「ええ!ずるくないですか?私はちゃんとルルクさんって呼んでるのに」


口を尖らせて不満を訴えるも、ルルクさんはお茶を飲んで我関せずな顔だ。

全く‥雇用主の意向を少しは汲んでくれ。



「明日は何時に家を出るんだ?」

「今日と同じですけど‥、ルルクさんまだ怪我しているんだから、大丈夫ですよ。明日は警戒心最大にして帰りますし」

「‥明日、どうにかなりたいのか?」

「だぁああ!!思い出さないようにしてるんですから、もう言わないでくださいよ」

「‥怖かったんだろ」



ルルクさんが静かに私を見つめて、飲んでいたカップをそっとテーブルに置いた。


「‥そ、れは、まぁ」

「今後は大丈夫だ」


低い声が私の顔を上げさせた。

コバルトブルーと、長い方の前髪の間から緑の瞳が私をじっと見つめ、


「怪我は、無理しなければ問題ない。それよりも怖い気持ちで出かける事の方がよくないだろう。仕事に差し支える。俺とギルドに行ってマスターに相談しておけ」

「あ、そ、そっか‥」


確かに、その方が安心だ。

私はコクコクと頷くと、ルルクさんは「風呂、お前が先なんだろ」と言ってまたお茶を静かに飲んだ。どうやら送り迎えは決定らしい‥。いいのかなぁ、怪我結構酷かった人に送り迎えさせちゃって。そうは思うけど、怖かったのは確かだし、レトさんに相談するのは大切だ。


「‥えっと、とりあえず先にお風呂入っちゃいますね」

「ごゆっくり」


ルルクさんはそう言って立ち上がると、ソファーにごろっと寝転がる。

‥まだ怠いのかなぁ。大丈夫かな。気になるけど、明日もあるし‥と立ち上がってカップを洗ってから、お風呂に入った。



「‥そういえば、どこから来たとか、前職何してたとか、聞いておくべきだったかな?」



湯船の中で思い出して呟いたけど、まぁいっか。

どんな人にも色々な人生があって、聞かれたくないこともあるだろう。



だってそれは私も同じだから。

いつまで私は追われて、いつになったら落ち着いて生きていけるんだろう。

恋愛ゲームのシナリオを作った奴がもし現れたら、絶対ぶん殴ってやる!!そう思いつつ、お風呂から上がった。



そうして、翌朝。

眠たいを擦りながらリビングへ行くとシンと静まり返っている。



「え、」



ソファーを見ると、ルルクさんがいない!

もしかして、出ていった‥?

約束、したのに‥。



出ていってくれないかなぁって思ってたくせに、いきなり姿が見えなくなって、私はどこか呆然とした気持ちでリビングに立っていると、玄関の扉が突然開いた。



「なんだ、もう起きたのか」

「ルルク、さん?」

「‥鳥を狩ってきた。夕飯に使う」



そう言って、手には頭のない鳥を持っていて‥、瞬間、

私の叫び声が家中に木霊したのは言うまでもない。ないよね?!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ