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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、一難は何度もくる。


誘拐されたと思ったら、虫の襲来!

私は全身鳥肌が立って、ギイッと開いたドアの向こうに緑の魔物虫がうじゃうじゃと白い魔石に群がっているのを見て、気を失い‥いや、失ってる場合じゃない!!逃げなきゃ!!



多分だけど、虫のいるあの部屋の先にあったあのドアを出れば、きっと逃げられる!



心の中で、3・2・・とカウントして、1になった途端、私は全力で誘拐した人達が開け放したであろうドアを目指して、真っ直ぐに走る。なんか足元がバキッとか、グニュッとか感覚がするけれど無視だ!無視!



一気に走ってドアを出ると、外に出た。



はぁはぁと息を切らせ、周囲を見回すとヒンヤリした空気と、森の香り‥。それもそのはず、辺り一面鬱蒼と茂った森の中だ。後ろを振り返ると小さな山小屋の中にいたのだと初めて知った‥。



‥ここ、どこ?!!キョロキョロと周囲を見回していると、林の向こうの方で誘拐した人達の声が聞こえた。



「なんだったんだ!?あの虫は‥」

「早く小屋に戻らないと人質が逃げるぞ‥」

「くそ、何か武器を持って戻るぞ!!」



まずい!!こっちに戻ってきちゃう!!

私は急いで声のした反対側へできる限り足音を立てないように走っていく。

急いで茂みの中へ身を隠そうとすると、足をずるっと滑らせて、一気に下り坂を体がゴロゴロと転がっていく。



あ”あ”〜〜〜〜〜〜!!!??



声を出したいけど、出すとバレるし、体は痛いわ、目が回る!!

最後に立っていた木に体がぶつかるとようやく勢いは止まって、葉っぱだらけの体をのそっと起こす。


「ううっ、恋愛ゲームの主人公なのに‥」


なんでこんな目に遭うんだ‥。

いや主人公だからなか?目に涙を溜めつつ、腕を動かすけれどまだ手首のロープはビクともしない。どこかで切れないかなって思って、暗い中周囲を見回すと、木々の向こうがぼんやりと明るい。



「‥明るい?」



サクサクと木々の間を縫うように歩いていくと、パッと視界が開けて目の前には大きな湖の底が淡く光って、発光している‥。



「湖の、夜明け‥?」



まだ光る予定じゃなかったよね?

早いよね?

でも、一気に希望が出てきた!湖があるってことは、私は遠くまで連れ去られてないってことだ!急いで湖の方に辿り着ければ道があるはず。


急いで下へと降っていくと、道らしきものが見えた!!

一気に坂を駆け下りて、木の間から湖の道へ飛び出すと、



「ユキさん?!!」

「え?」



なんと馬に乗ったシヴォンさんが驚いた顔で私を見て、目を丸くしている。



「し、シヴォンさん!??」

「良かった!!誘拐されたと連絡を受けて‥、お金を工面していたんですが、矢も盾もたまらず探しに飛び出してしまって‥」

「ええ!??お金を工面??!」



驚くのはそこではない気もするけれど、驚いた。

目を見開く私に、シヴォンさんが急いで馬から降りて、ランタンを持って駆け寄る。


「縄が‥!待って下さい!今切ります」

「あ、ありがとうございます。あの、でもシヴォンさんもしかして一人ですか???」

「‥はい。止められたんですが、心配で」

「シヴォンさん‥」


うう、成果も出せないのに優しいな‥。

でも大事なご子息を一人にしてはまずい。なにせまた誘拐犯が来たら大変だ。シヴォンさんは魔術を使えないんだ‥。ようやく自由になった手首を動かしてから私はシヴォンさんを見上げた。



「シヴォンさん、ひとまずすぐにここを離れた方がいいです」

「‥その前に、一つだけいいですか?」

「は、はい?」



今?そう思っていると、シヴォンさんが私をじっと見つめ、

真剣な顔をするので、思わずどきりとする。


え、ええっと、これって、まさか‥?

じんわりとなんだか嫌な予感がする。ちょっと待ってって言いたいのに、口がうまく動かない。



「‥‥俺、こんな呪いを受けたのに助けてくれようとした貴方が‥、」



その瞬間、ブウンン‥と大きな羽音がする。しかも間近に。



私とシヴォンさんがその音の方へ顔を上げた瞬間、

魔物虫がそれはもう黒い塊のようになって、こちらへ飛んできて‥、



「「うわぁあああああああ!!!!!」」



またも叫び、私とシヴォンさんは一斉にダッシュした!!

だからなんで虫ーーーー!!!!

涙目で必死に足を動かすけれど、シヴォンさんはもう顔面蒼白だ。そうだよね、虫嫌いって言ってたもんね!と、あまりの恐怖にかシヴォンさんが石につまづいて転んでしまった。


「シヴォンさん!」


私が叫んだその瞬間、魔物虫がシヴォンさんに飛びかかった。



「ぎゃあああああ!!」

「わぁあああああ!!」



もうホラー展開に真っ青になって、私は急いで手近に落ちている木の枝でシヴォンさんの体ごと叩いて、虫を払うと急いで手をギュッと引っ張る。


「シヴォンさん、逃げましょう!!」

「うう、は、はぃいい‥」


未だ体にくっ付いている魔物虫をペッペと払いながら走って行こうとすると、魔物虫達が突然リン!と音を出す。な、なに??まだ何かあるの???



リンリンと鈴を鳴らすように、虫達が羽音を起こすとその体がボッと突然燃え出した。



「「なーーーーーー!!!??」」



私とシヴォンさんは走りながら思わず同時に声を上げた。





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