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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公ハンモック再び。


なんとかシヴォンさんを説得したものの、流石にどんなにお茶を飲んでも疲労困憊はすぐには解消しない。紋様はまた明日‥ということになった。


玄関先までシヴォンさんが心配そうな顔で見送ってくれたけど、ツンデレの要素はお出かけしちゃってるな。やっぱり魔術を使えないことが本人にしてみると大きいんだろうなぁ。手を振って大きな門を出た瞬間、ルルクさんが私のお腹に手を回して、グイッと自分の方に引き寄せた。



「‥ったく、無理するな」

「えへへ、すみません」

「足元フラフラしてて、よく大丈夫なんて言えたな」

「だって心配かけたくないじゃないですか。っていうか、ルルクさんよく気が付きましたね」

「‥‥そりゃ気が付くだろ」



そうなんだ?

私はルルクさんに上手く隠されていたらわからない自信があるな。

いつもなら恥ずかしいけれど、今回ばかりは疲れていたので遠慮なく寄っかからせてもらって、ホッと息を吐いた。


「‥我儘言ってすみません」

「‥お前のは我儘じゃないだろ」

「そう言って頂けると‥」

「だが、自分をもっと大事にしろ」

「そこは、善処します」


私の言葉にルルクさんがはぁっとため息を吐く。

うう、呆れた顔を頭上でしているのが目に浮かぶ。思わず首を竦めると、



「左手の甲にも蝶を描かせろ」

「え?」

「‥俺は魔力は込められないがな、お守りだ」

「お守り‥」



顔を上げてルルクさんを見ると、眉を下げて寂しそうに笑った。


「それくらいしないと、心配だ‥」

「心配‥」


ゲームの中では私の首をスパスパ切ったルルクさんが心配って‥。

とはいえ、その気持ちが嬉しくて私は頬がゆるゆるになってしまう。しかし反対にルルクさんの眼差しはキツくなっていく。あわわ、すみません!だって嬉しかったんだもん〜〜!



「早く、どうにかなるといいな」

「そうですね。魔術を、あの「呪い」を解く方法が見つかるといいなぁ。終わったら、祝杯を上げます!」

「‥祝杯ね」

「その時にはルルクさんに奢りますね!美味しいの私はよくわからないんで、教えて下さい」

「わからないのに飲むのかよ‥」



ルルクさんの顔がふっと優しいものになって、ホッとする。

ただでさえルルクさんには心配かけ通しだからね‥。少しでも安心して欲しい。



しかし‥問題はまだまだ山積みだ。

シヴォンさんも白い魔石を知らないというし、効果も効能もまるでわからない。でも、何の変化も起こさなかったあの「呪い」に文字が吸い込まれたってことは何かはあるはずなんだよなぁ。


植物も入っているし、それも関係しているかもしれないし‥。

家に帰ったら、すぐに紋様も腕にびっしり描いておかないとだ。

あれやこれやと考えていると、馬の振動といい、ぴったり寄り添っているルルクさんの体温も心地いい。うとうとして、何度か慌てて目を開けるけれど、つい目を閉じた。



それからどれくらいしたんだろう。



どこかいい匂いがする。

ふわふわと何かに包まれている感覚が気持ちいい。

口角が知らず上がっていくと、何かが私の頭を撫でていく。



「ふふ‥」



くすぐったくて、優しい気持ちになって、笑ってしまう。

そんな自分の声にハッとする。あれ?もしかして私、寝てた?

ガバッと体を起こそうとするものの、何かにすっぽりと包まれていて思うように動けない。


「あれ?」


寝ぼけた目をゴシゴシと擦って、もう一度ゆっくり目を開けると、私はどうやらルルクさんのハンモックの中にいるようだった。そりゃすぐに起きられない訳だ。慎重に体を起こして、部屋の中をぐるっと見回すと薄っすら暗い。もしかして、夕方を過ぎた頃かな?



やっぱり体がすごく疲れてたのかな‥。

こんなに寝ちゃうなんてびっくりだ。両足を床に付けてから、体を起こしてリビングへ行こうとすると、ドアがガチャッと開いた。


リビングの明るい光でうまく見えないけれど、シルエットはどう見てもルルクさんだ。



「起きたか。体調はどうだ?」

「すみません‥、寝ちゃったんですね。でもお陰でスッキリしました」

「スッキリしたなら良かった」



ルルクさんが私の側まで来て、顔を覗き込むのでちょっと照れてしまう。

な、なんでそんなまじまじと見つめるんだ?私がちょっと体を後ろへ引こうとすると、ハンモックに乗っていたのをすっかり忘れて、そのまま倒れそうになった。


「わ!!」

「っと」


ルルクさんがサッと私の腕を引っ張った反動で、今度はルルクさんを下敷きにする形で一緒になって床に倒れた。



やってしまった‥。

そろりと顔を上げたると、目を丸くしたルルクさんと私の目がパチッと合う。瞬間、自分の顔が一気に赤くなる。恋愛ゲームの主人公が暗殺者を押し倒すってどないやねん!!



「わぁあああああ!!!すみません!!」



慌てて素早くルルクさんから飛び降りて、思わず正座をする私。

ルルクさんはゆっくり起き上がると、小さくため息を吐いて、



「起きた途端に、お前という奴は‥」



と、呟くのでそのまま手をついて頭を下げておいた。す、すみません!!





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