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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、首はまだ無傷。


毎年湖の底が光るのを見に貴族さん達が観光で見にくるので、別荘地の管理もしているギルドでは草刈りをしたり、木を剪定しているそうで‥、レトさん達はある程度道具を持って下調べしてきたらしい。


「いやぁ〜、結構草も伸びてたから明日から草刈りだなぁ」

「毎年お疲れ様です」

「おう。つーわけでギルド登録始めて間もない奴に仕事として頼むから紋様を頼む。なにせすーぐ腰が痛えだの、腕が筋肉痛だの、こんなの俺の仕事じゃないっていう奴らがいるからなぁ‥」


レトさんがはあっと大きくため息を吐くと、「じゃあ頼むな」と手を振ってカウンターの奥へ行ってしまった。



「‥あの湖の周辺を草刈りか、確かに大変だな」

「そうなんですよね。結構外周広いから‥。毎年「湖の夜明け」は、皆にとっては草刈りで疲れて「湖の夜更け」になっちゃうってボヤいてますね」



私の言葉にルルクさんがふっと笑う。


「確かにそうだな‥」

「あ、でも湖の夜明けを一緒に見た相手に告白するなんてイベントもあるんです」


「‥は?」


えーと、なんか皆盛り上がってたけど、なんて言ってたかな‥。


「永遠の愛を誓うと、ずっと一緒にいられるだっけかな?」

「‥‥お前は、誰かと見に行ったのか?」

「昼間に草刈りは手伝いましたけど、夜は疲れて爆睡ですね。第一私を誘う人なんていませんよ〜〜!」


あっはっはと元気よく笑ったけれど、恋愛ゲームの主人公が誘われないのもどうかと思う‥。いや、恋愛フラグはノーセンキューなので良いことにしよう。泣くな、私。


ルルクさんは私をまじまじと見て、


「‥‥湖に落ちそうだしな」

「なんで湖に落ちる前提なんですか?!そんな大事なイベントの時には落ちませんよ!‥多分」

「多分なのか」

「いや、ある程度そう言っておかないとフラグを回収しそうで」

「フラグ?」

「いえ、こちらの話なので大丈夫です」


危ない、危ない。

前世の言葉は極力控えねば。

誤魔化すようにニコッっと笑って仕事道具を早速テーブルに並べた。



それからすぐにレトさんが言っていたように、明日は草刈り!気合いを入れるぞ!といったお客さんがやって来て、私は急いで紋様を描く仕事を始めた。白い魔石は貴重なので、流石にいつも使っている紋様液でだけど‥。



「はぁーー!!終わった!」

「お疲れ。今日は結構客がいたな」

「そうですね、季節の変わり目で体調を崩しやすい人もいるし‥。でも、私も昨日紋様を描いておいたから、結構疲れてないかも‥」



筋力向上のお陰かな?

紋様液がもったいなくて、あまり自分には描かないけれど‥、たまには描いておくのもいいかもしれないな。仕事道具を片付けて、お弁当へ高台へ行こうと話していると、レトさんが奥のカウンターから出てきてルルクさんを呼んだ。


「悪い!ルルク、ちょっと今度の湖に備えて相談したいんだが‥」

「あ、じゃあルルクさん、私そこで待ってますから」

「‥わかった」


ルルクさんはチラッと私を見てから、レトさんの方へ行ってなにやら奥で地図を指差しながら話をしている。湖の夜明けに向けて色々準備しないといけないから、その辺の話かなぁ〜なんて思っていると、ギルドの剣士さんや魔術師さん達がドカドカと足音を立てながらクエストから戻ってきた。



「お〜、ユキちゃん!一人なんて珍しいな」

「いやいや、そっちにルルクさんいますから」

「ありゃ本当だ。でも今ならいいかなぁ〜」

「ん?なにがですか?」

「湖の夜明けって行く予定ある?」

「いえ、ないですけど‥」



と、剣士さんと魔術師さんが顔を見合わせ、


「「一緒に行かない?」」

「って、あ、お前俺が言おうと‥」

「それを言うなら俺の真似をするな!」

「え、えっと‥」


まさか湖の夜明けなんて恋愛イベントに誘われるなんて思いもしなかった。

ま、まずいぞ?!恋愛フラグなんてもってのほかなのに!

攻略対象に気を取られてて、トニーさんの一件もあったのにすっかり忘れてた!



すると、ヒヤリと首筋が冷たくなって、

思わずそろっと後ろを振り返ると‥、



「おい、なにをしているんだ?」



なんていうか100人倒しちゃった時のような鋭い眼光のルルクさんが目の前に立っていて‥、私だけでなく、周囲にいた皆も「ひえっ」と声を上げた。



ぎゃぁあああ!!!ま、まさか首を切られる?切られちゃうの??!涙目になった私をルルクさんがジロッと睨むと、私の手を握ってスタスタとレトさんのいるカウンターへ戻っていく‥。



「‥‥切られてない?」

「なにを切られてないって?」

「いえ!!こちらのことです!!どうぞお構いなく!!!!」

「‥怪我はしてないんだな?」

「してません!無傷です!!」



慌てて返事をすると、ルルクさんが静かに頷き、



「‥とりあえずここにいろ」



いや、あの、ルルクさん‥私の手を握っているの気が付いてない?

私はそっとレトさんに視線を送ると、静かに口元に指を当てた。うん、わかった、黙ってる。




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