恋愛ゲームの主人公睨みも様式美。
ルルクさんに紋様液に使う素材を調べてみたらどうかと言われ、美味しい夕飯を食べてから、テーブル一杯に何冊も本を広げ、タリクさんから頂いたメモ帳に使えそうな素材を書き出していく。
発色がよくなる植物。
効果が強くなる魔石。
色もちがいい魔物の素材。
こんな効果もあったんだって今更ながら知ることもあれば、だからこれがダメだったのか‥なんて、仕事をした上で新たに学ぶ大切を知る私。これは町の図書館に行って、新しい本があればを調べておかないとだなって考えていると、ルルクさんがカップにお茶を淹れて渡してくれた。
「どうだ?少しは何かわかったか?」
「うーん‥、魔石の本はいくつかあったんですけど、やっぱり白い魔石に関する記述はないんですよね‥。タリクさんはどうやって白い魔石を見つけたんでしょうね‥」
「ああ、あれは転んで落ちた穴で見つけたと言ってたが、怪我をして血が石に落ちて、そこで初めて魔石の存在に気が付いたらしい」
「‥え?」
血が石に落ちて?
じゃあそれまでは見つけられなかったって事?
そういえばゲームでもどうやって見つけたかまでは深く語られてなかったな。
そもそもなんで今まで色々な洞窟へ調査へ行っていたタリクさんが、白い魔石を見つけられなかったんだろう。首を傾げると、ルルクさんが飲んでいたカップを静かにテーブルに置いた。
「‥人間の目には、識別しにくい魔石なのかもしれない」
「識別?」
「‥あれから俺が洞窟へ行った時、すぐにそこかしこにあるのが分かった」
「ルルクさんは分かったのに、タリクさんはどうして‥」
魔石の学者になっちゃうくらい熟知している人なのに?
ルルクさんはカップに目を落として、少し迷ったように口を開いた。
「‥俺が、半分魔族の血を引いているから、かもしれない」
ルルクさんの言葉に私が目を丸くする。
そういえば魔族のハーフでしたね!?暗殺者で霞んでましたけど、そういえばそうでしたね?!
「忘れてました‥」
「‥お前はそういうと思ってた。一度見つけやすいポイントを教えて以来、タリクは自力で探していたがもしかしたら何かコツがあるのかもしれないな」
「なるほど‥」
白い魔石といえば、ゲームの中では照明としてこの世界に大きな革命をもたらすアイテムになるんだけど、タリクさんは調査はしているけれどその発見はいつするのかな‥てしか思ってなかった。
でもあの魔石が魔物を呼ぶ作用があるのかもって、ルルクさんも言ってたし‥。照明だけではない他の何かがあるってことか??うーん、謎だ。謎が多過ぎる。思わずテーブルに顔をのせて、大きくため息を吐いた。
「白い魔石については、多分最近発見されただけあって魔石の本にも書いてないから、効果が何にもわからないんですよね‥。そっちはひたすら実験してみるしかないかなぁ‥」
「実験‥」
「白い魔石を溶かした紋様液で、色々な効果を描いてみるんです」
となると、まずは怪我をしてみるか?
チラッと自分の腕を見て、カッターで切るくらいならいいかな?って思っていると、ルルクさんが私の頭をわしゃっと撫でた。
「‥間違っても自分の体を傷つけるなよ」
「え?なんで分かったんですか?」
「‥本当にお前は‥」
ルルクさんは心底呆れたように私を見てから、自分の腕をずいっと差し出す。
「俺の腕にいくらでも蝶を描け。花でもいい」
「え、それなら私も描きます!」
「じゃあお揃いだな」
ふっとルルクさんが笑って、顔を上げた私を見つめる。
‥その瞳があんまりにも優しいから、私の心臓がまたも突然飛び跳ねた。
あわわわ、暗殺者め!!不意打ちとは卑怯なり!!いや、不意打ちではない‥のか?ググッと感情の蓋を力を込めて押し込むと、私は顔を起こす。
「‥紋様液作るので、ルルクさん実験に参加してくれますか?」
「いくらでも」
「お揃いになっちゃっても?」
「それこそ今更だろ」
そう言って、私の手の甲に描いてくれた黄色の蝶を指差すので、思わずふっと笑った。そうだった、すでにお揃いだったっけな。椅子から立ち上がって、「じゃあ紋様液作ってきます!」元気いっぱいに宣言すると、ルルクさんはニヤッと笑って、
「溢すなよ」
というので、お約束のようにジロッと睨んでおいた。




