告白
老薬師ワカエは、シュウがお茶で舌を湿らせるだけの猶予をくれた。
急かす気がないことを示すつもりか、彼女はまた自分から口を開いた。
「外から強い――それこそ百人長クラスの封貝使いの気配を感じたこともそれは驚いたよ。百人長級と言えば、国家騎士団の精鋭ってとこだからね」
だが、と彼女はシュウを映し出す目を細めた。
「それ以上に驚いたのが、あんたの気配だよ。自分では気づいちゃいないんだろうが、アタシは震えを抑えるのに必死だったよ。こんな息苦しくなるほど濃厚な神気なぞ、そうそう出会えるもんじゃない」
もはや観念せざるをえなかった。
シュウはうなだれ、絞り出すように問う。
「分かる、ものなんですか……」
「下級神か神の分け身あたりが、直接降臨されたのかと思ったくらいさ」
「プルーチェルはそんな様子じゃなかったですけど」
「封貝使いってのは、同じ封貝使いの気配には敏感になるがね。気づかないうちに、それ以外には鈍くなっちまうことがあるんだよ。それに、あんたは色々と複雑だ」
「複雑、ですか?」
「その前に、教えてくれるかい。あんた、一体どんなバケモノと出会ったんだ」
「えっと……」
このごに及んでも逡巡してしまう。
なぜか目を合わせていられなくなり、シュウは顔を伏せた。
それから謝罪するようにか細く言った。
「たぶん、あの、クーネカップだと……思います」
息をのむ気配がした。
ワカエ師がどんな顔をしているのか、もはや想像もつかない。考えたくもなかった。
汗だくになりながら、どれほど重苦しい沈黙の時に耐えたか。
やがて、深々とした嘆息の音が聞こえてきた。
「クーネカップ……クーネカップと会ったのかい」
その声は、どこか憔悴しているようにも聞こえた。
「はい、すみません」
「なにを謝るのさ。〈両方の敵〉〈傍らにいる者の王〉〈夜の風〉〈我らを生かす者〉〈天と地の所有者〉……数々の異名を持ち、神々の中でもとりわけ大きな力を持つと言われる、あの偉大な神性に遭遇するなんて、もはや人の力の及ばぬ巨大な因果の世界だよ」
「えっと――はい」
ほとんど犯罪者の気分だった。
証拠を固められ、もはや取調の尋問に素直に応じるしかない。そんな心境だ。
「じゃあ、その身にまとってる物は?」
薬師が訊いた。
「はい。邪神クーネカップに選べと言われて」
「神器を賜ったのかい」
「まあ、賜った言いますか、押しつけられたと言いますか」
「ハァ……まったく、またとんでもないのが現れたね。アタシにすりゃ、村の連中の凶暴化どころの話じゃないんだが。本当、一体なにがあればあの邪神と出くわすようなハメになるんだ」
「いやあ、どこから説明したものか――」
まさか一からすべてを話すわけにもいかない。
「ああ、あんたの素性のことなら別に心配しなくて良いよ。アタシの〝眼〟は、少しだけどオウルの流れが見えるんだ。あんたが人間じゃないことは、最初から分かってたさ」
シュウは思わず顔を跳ね上げた。
老薬師の顔をまじまじと凝視する。
オウルの流れを見る。
それは存在の本質を直視できることを意味する。
つまりこの人には――
「ああ、誤解させるといけないからハッキリさせとくが、細かいところまでは分からないからね?」
「えっ」
「ただ、あんたが種として上位的な存在に祝福、ないし咒を受けている事はなんとなく分かるのさ。一例を挙げればコロパスのようにね」
コロパス。
もちろん、シュウも彼らのことは知っていた。
国によっては、大都市に行くと普通に人に紛れて暮らしていることもある。
猫と人が混ざった亜人・獣人の一種だ。
「あれはもともと人間だったが、邪神イスによって猫とかけ合わされて生まれた忌まわしき種族だと言われてる。実際、寿命が短いし、色々と背負ってるような特徴が多いもんさ。逆に祝福された例としてはラピョンが有名だね」
老薬師は、ウサギの特徴をもつ亜人を挙げる。
彼らもまた、そこかしこで見かける身近な存在だ。
「俺は――その中間ですね」
ふつうに言ったつもりだが、どうしても自重の響きが言葉に乗ってしまう。
「うちの先祖はその昔、地下深くに潜って神と出会い、祝福を得ると同時に呪いともいうべき代償を支払わされたって伝わってます」
「それによく似た話を聞いたことがあるねぇ……。ある種族が二つに割れて争い、負けた派閥は地上を追われた。地下の穴ぐらへ逃げ込み、暗がりの中を住処と定めた彼らは、その深淵で邪悪で強大な神と出会ったという。
そして地上に生きる全ての人族との不和を誓い、永遠の忠誠と寿命の半分を捧げることで、闇をどこまでも見通す眼と恐るべき暗殺者の力を得た、と」
「流石、博識ですね」
シュウは口元をひきつらせたように苦笑する。
もはや他に反応のしようもなかった。
「その神の名をクーネカップ。種族の名をブラーインと言います。俺の一族は、もともとあの邪神と縁深い存在ではあったんです」
「ブラーイン。またの名をダークエルフ……私も生涯で一度、それも一瞬だけその姿を見たことがある程度だ」
だったら、今日は記念すべき二度目だ。
それも今回は一瞬どころではない。
シュウは目を閉じ、無言のまま、虎と獅子を特徴を持った獣のマスクに手をかけた。
ゆっくりと脱いでいく。
絹糸のような銀髪がこぼれ落ちた。
さらさらと滑らかな、背中まで伸びる長髪だ。
この髪色は、邪神クーネカップへの忠誠の証だった。
彼女は不和を司る。
ダークエルフたちに闇の住人であり続けることを誓わせながら、暗がり中でも輝く銀の髪を背負わせたのだ。
こうした背反、矛盾こそを彼女は愛すると言われている。
神に与えれた制約はもっとも強力な呪詛のひとつだ。
あらゆる染髪の試みは無駄でしかなく、決して色を変えることができないという伝説も、純然たる事実である。
「ブラーインはゾ族のミューラ。それが俺の元の名前です」
シュウはゆっくり眼を開け、言った。
老婆は驚きも、取り乱しもしなかった。
ただ静かにシュウを見つめると、やがて目を伏せ、ひとつ小さくうずいた。
「そうだったのかい」
やさしく囁くように言った。
ただそれだけのことが、シュウの目頭を熱くさせた。
「まさかダークエルフだとまでは思わなんだ。強いるつもりはないと言ったのに、色々と覚悟をさせちまったようだね。軽率に暴くつもりはなかったんだが。アタシに至らないところがあったようだ」
「いえ。……しかし、なんでこんな話を?」
「迷ってるというか――あんた、自分のことに気づかずに戸惑ってるように見えたからね。酷く危うげな感じがしたんだよ」
「俺がですか」
「まあ、文字通り老婆心ってやつさ。そう思って無遠慮に踏み込んじまったことは、勘弁してくれるとありがたいよ」
「顔を見た瞬間、絶叫して――パニックになりながら震える手でナイフを探しはじめずにいてくれただけで、俺にとっては途轍もない奇跡ですよ」
「実際、この眼で見てもなかなか信じられないだけさね。あんたは、私たち人間が知っているダークエルフとは、あらゆる意味で全く違った存在であるような印象を受ける。見た目は伝承のままだがね。中身は丸きり別物のいいとこだよ」
「その伝承、たぶん外面・内面どっちも正しいんじゃないかな。人間がダークエルフに出会ったら、大声で叫んで仲間を呼び、逃げるか殺すか躊躇なく選ぶべきです」
でなければ、次の瞬間には生まれてきたことを後悔するような地獄を味わうことになる。
「ただ、俺が例外中の例外なだけです。異端過ぎて、生まれた頃から同族にすら気味悪がられて、しまいには隷紋を刻まれたくらいですから」
「そりゃまた……」
ワカエ師が言葉を詰まらせる。
ここまできたら下手に隠し立てするだけ無駄だろう。
半分自棄になっていることも否定はできない。
なんであれ、シュウは詳しく生い立ちから話すことにした。
奴隷として、どのような仕事をさせられたかも隠さず明かした。
あえて触れなかった部分があったとしたら、異世界人ミウラ・シュウの記憶や価値観を持っていることだけだった。
「――アタシも色んな話を見聞きしてきたが、もっとも恐ろしく、もっとも奇妙なものの一つにまさかこの歳で出会うことになろうとはね」
薬師はもはや笑うしかない、という表情だった。
「しかし、こんな話を聞かされたんじゃアタシも素性を明かしておかないと公平とは言えないかね? 今さらで申し訳ないが、アタシはワカエ・ミュゲルン。色々あってこんな辺境の農村で隠遁しちゃいるが、昔はちょっと宮仕えってのをしてたことがあるんだよ」
「宮仕えと言うと?」
「王宮占星寮って所なんだけどね」
「占星寮――星見ですか」
大いに納得できる経歴だった。
「失礼ですが、かなりの高官だったのでは?」
「まあ組織図で単純に見れば、王族を除くと上に一人しかいないくらいまではいったかねぇ、最終的には」
過去の情景がそこに映っているかのように、老婆は手にした湯飲みへ視線を注いでいる。
「色々と聞かせて貰ったし、アタシの昔話でよけりゃ幾らでも付き合う気はあるんだがね。あんたらには頼んでる仕事もあることだし、老人の無駄話で引き留めるわけにもいかない。続きに興味があれば、後日また訪ねてきてもらうとしてだね」
「はい」
「アタシが気になったのは、あんたの状態の不安定さなんだよ」
「はあ……」
そう言われても、シュウとしては首を傾げるしかない。
「あんた、ごく最近、体調を崩したことはないかね?」
「体調ですか? それなら――まあ、ありましたね。今日」
妙なことを聞くな、と思いつつ答える。
「クーネカップに会った後、気づいたらこの村の森にいたって所までは話ましたが、そのすぐ後です」
突然襲ってきたあの途方もない倦怠感には脅かされたものだ。
高熱。
吐き気。
なにより視界が歪む強烈なめまい。
シュウは思いつく限り正確に症状を描写して伝えた。
ついでに、倒れているところをラーメン公女たちに助けられたことも話す。
プルーチェルとの出会い。
ここへ赴くことになった経緯にも触れた。
これで語れることは全て語ったことになるだろう。
「なるほど。しかし、倒れたにしては今は随分と快調そうだねぇ?」
「不思議なことにその通りです。嘘だったみたいに、むしろ今は身体が軽く感じるくらいで。まあ、神器の補正もあるんでしょうが」
「ふむ、典型的だね」
ワカエ師はなぜか得心顔でうなずいた。
そして衝撃的な一言を発した。
「あんたその時、封貝使いになったんだよ」
すぐには何を言われたか理解できなかった。
「は――?」
「封貝使いってのは、生まれた時からそうである先天型が多い。でも、ある日いきなり封貝を使えるようになる後天型も割といるもんだ。で、その場合、覚醒前にたいがい原因不明の体調不良に見舞われる。風邪をうんと重くしたような症状で、場合によっちゃ意識を失うこともある。それっぽい話くらいは聞いたことないかい?」
「いや、ブラーインの封貝使いは珍しいので」
人間なら一〇人にひとりは封貝使いが生まれてくる。
ダークエルフなら、良いところ一〇〇人にひとりだろう。
「ああ、そうだったね。神と契約した種族は封貝の恩恵を受けにくいんだ」
「それより、俺が封貝使いになったというのは?」
「ああ、だからクーネカップから神器を賜ったんだろう? それが封貝だったってことだね。そういう伝承は古今東西、確かに結構あるんだよ」
言われてみれば、腑に落ちるところはあった。
気を失って、起きてみたら身体が軽いなど普通ではない。
それどころか、文字通り飛ぶように走れる。
一気に高木のてっぺんまで飛び上がれる。
バケモノの豪腕で地面に叩きつけられても「ちょっとびっくりした」で済む。
それでいて、派手に動き回っても息切れひとつしない。
封貝使いというバケモノになったと考えれば、説明はつく。
「じゃあ、この〝けもの装備〟も封貝?」
「おそらく常時顕現型の一種だろうね」
言って、老婆はお茶をすする。
「封貝ってのは本来、必要に応じて異界から呼び出す召喚具だ。使ったら消えて異界に返る。だが、こちらの世界で形を保ったまま使用者にずっと寄りそうタイプが、たまにあるんだよ」
大体が、あんたの物のように身にまとう防具型だね。
ワカエ師はそう結んだ。
「これが――封貝」
まじまじと、肉球グローブに包まれた両手を眺める。
封貝使いと言えば、統一戦争でも総動員されたことから兵士というイメージが強い。
それ以外はプルーチェルのような冒険者が一般的な封貝使い像だろう。
ファンシーな〝けもの装備〟とはなかなか結びつきにくい。
「まあ封貝使いと言ってもピンキリさね。大体はナイフを召喚できるだとかその程度だ。でもプルーチェルといったか、さっきのお嬢さんみたいに高位の使い手もいる。
そうとなると接近戦用、射撃用、防御用、移動用からなるコンポセットを備えてる。あんたも神器という特別な封貝を賜ったんだ。恐らく、これから高位の封貝使いになっていくだろう」
「つまり、今はまだ違うと?」
「覚醒は一気に進むこともあれば、段階的なものもある。あんたのその不安定さは間違いなく後者だね。そもそもちゃんと覚醒しきってれば、プルーチェル嬢が気づいてるよ。さっきもちょっと言ったろ。封貝使いは、同じ封貝使いの気配に敏感になる」
「俺はまだヒヨコというわけですか」
「そう。それも、まだ尻にカラのついた、ね」
「なにか気をつけておくべきことはありますか?」
「そうだね。新しい封貝を呼べるようになった時、暴走的に発現してしまうことがあるかもしれない。まあ、気をつけてどうにかなるもんじゃないが――」
「気にはとめておきます」
「あんたとは近々また会うだろうから、さよならは言わないでおくよ」
その言葉で、長い会見は終わった。
ワカエ・ミュゲルンは戸口まで見送ってくれた。
薬師の小屋を出ると、プルーチェルは召喚した乗騎の上で待っていた。
巨大なエイ型魔獣を空飛ぶ絨毯のようにして、シュウの胸ほどの高さで浮いている。
「あ、出てきた。結構、長話だったのね」
「待たせてごめん」
どんな話だったの、とは訊かれなかった。
「乗って。予定通り、村長さんのお屋敷に行きましょ」
シュウはうなずき、飛行魔獣に飛び乗る。
「いつでも出しちゃって」
「了解。じゃあ、行くね」
プルーチェルがひとなですると、バトライアはゆっくりと上昇しはじめた。
十分な高度に達したところで、プルーチェルが振り返った。
「例によって情報共有しとくね?」
「ああ、うん。それは助かるよ」
「まず、公女オードリィ様を徴税官とする私たち一行の行程だけど。この村に着いたのが昨日の午後。ほとんど夕方だった。これ自体は予定通りだった。もちろん、その時点で村にも私たちのパーティにも異常はなかった」
ルート的に、次の村までは半日の距離がある。
そのため徴税官一行はこの村で一夜を明かすのが通例だったという。
「私たちはオードリィ様を含めて一六人。ちょっとした大所帯だから、部屋数の関係で村長宅組と宿屋組に別れて泊まることになったの」
「なるほど。で、その村長宅の方で最初の異変は起きた、と」
「そう。村長さんの所には客間が四つあって、最上級の個室にオードリィ様。もうひとつの個室に爺やさんが泊まったの。お屋敷でも執事を束ねてる方で、彼自身も爵位を持つ貴族よ」
「流石に公爵家。部下も一流ってわけか」
「あと二つは四人部屋だったから、男女で分けて使うことになった」
女部屋にはオードリィ付の侍女二名。
それとプルーチェルたち護衛の封貝使い二名が入った。
「異変が起こったのは、男部屋の方ね。ブルーノという爺やさんの部下と、徴税業務に詳しい文官。それから料理人とその弟子」
「ブルーノって聞いた名前だな。確か、厄介な特殊個体になって村長の家の近くを徘徊してるとかいう――」
「そう。その彼よ」
「で、具体的には何があったのさ」
「分からない」
プルーチェルは疲れたように首を振った。
「空が白みはじめた頃、廊下から凄い音と叫び声がしたの。それで飛び起きて駆けつけたんだけど――」
「だけど?」
「悲鳴をあげたのは村長の小間使いだった」
彼女が、ブルーノに襲われてたという。
プルーチェルも、最初はわけが分からなかったようだ。
それでも、相棒の封貝使いモルテがブルーノをなだめにかかった。
必然、プルーチェルは小間使いを保護することになる。
「でも、パニック状態で口もまともに聞けない感じだった。それで、避難してるように言って、男部屋の様子を確認しに行ったの。ドアが蹴破られたみたいに転がってたしね」
中は血の海だったという。
料理人の親方はベッドの上で殺害されていた。
遺体は損壊が激しく、獣に食い散らかされたような有様だったらしい。
彼の弟子、および文官の男も重症を負い、倒れていた。
「そこに、こういう時だけ寝覚めが良いオードリィ様があらわれてね。いつもは盗賊の奇襲があっても、食事の匂いがするまで起きないのに……」
それで、シュウは公女オードリィ・〝ぽっちゃり〟・ラームウェンのことを思い出した。
一日、六度の食事。
一〇時間以上の惰眠。
これらを見かねた父親に尻を蹴飛ばされる形で、彼女は徴税の仕事にかり出されたのだ。
「あの公女がからむと、単純な問題もおそろしく面倒になりそうな気がする」
いささかげんなりしながら言うと、プルーチェルは力強く同意を示した。
「そうなのよ。だから部屋に戻るように説得してたんだけど。その時、驚いたことに、モルテがブルーノに吹っ飛ばされちゃって」
「公女の護衛を吹っ飛ばした?」
ブルーノも封貝使いなどの異能者なのか。
訊くと、彼女はきっぱり否定する。
「彼は普通の人。それどころか、荒事とは程遠い、実直で温厚な紳士だったのよ。だからモルテも戸惑ってたし、思い切った行動に出にくかったんだと思う。ずっと呼びかけてたしね。
でも、その隙をつかれて思い切り体当たりされちゃって。ガードはしたしダメージはなかったんだけど。威力を殺しきれずに、壁をぶち破って隣の部屋まで飛ばされちゃったの」
「まあ、特殊個体にぶっ飛ばされた経験者から言うと、あり得ない話ではないな。事前にヤバイって話は聞いてたし」
「そう。逆に、当時の私たちはそんな情報なかったから、本当にびっくりしたのよ。あのブルーノ氏が、獣みたいになってるし」
だが、それはまだ序の口だった。
そうこうしているうちに、重症で気を失っていたコックの弟子が動き出したのだ。
それもただ目を覚ましたのではない。
彼もまた、ブルーノと同様〝連中〟になっていたのだ。
まさに、惨劇の幕開けだった。