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円環の聖女と黒の秘密  作者: 藤瀬京祥
二章 クラカライン屋敷
95/109

92 ノエルの一日

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

 ノワール・クラカラインことノエルの朝は早い。

 とはいっても赤の領地(ロホ)にいた頃のように夜明け前に起きるわけではない。

 クラカライン屋敷に来てからは、真っ暗なうちに起きて水汲みをする必要はなく、掃除や洗濯をさせられることもない。

 それでも長年の習慣でずいぶん早い時間に目を覚すと、まずは点呼から始める。

 もちろん四体のぬいぐるみの点呼である。

 寝る前にきちんと揃えたはずのぬいぐるみたちは、ノエルが眠っているあいだに好き勝手自由に遊んでいるらしく、朝起きると寝台の上をあちらこちらに転がっているからである。

 そんな四体を揃えて、朝の挨拶代わりに一体一体抱きしめて頬ずりをしながら話し掛けるのだが……


「ももちゃん、どこ」


 ある朝、目を覚したノエルがいつものように点呼をするとももちゃんがいなかった。

 広い寝台の上を何度見回しても姿が見当たらないから、きっとどこかに遊びに行ってしまったのだろう。

 ひょっとしたら部屋がわからなくて帰ってこられなくなったのかもしれない。

 独りぼっちで、どこかで淋しくて泣いているかもしれない。

 そう思うとノエルまで淋しくなって涙が溢れそうになる。


 頑張って泣くのを堪えたノエルは、ももちゃんを探しに行くべく急いで寝台を飛び出す。

 だが遮光と保温のために引かれていたカーテンを鷲掴みにし、寝台を飛び出そうと足を下ろした刹那、足裏に柔らかな感触を覚える。

 それが何か本能的に察するけれど、重力に逆らうことが出来ず無残に踏みつけてしまった。

 体勢を崩して床に転げたノエルはすぐに振り返り、踏んだものの正体を確かめて慌てる。


「ももちゃん、ごめんね!

 ノエル、ふんだ!

 いたい! いたいよ!」


 どうやらももちゃんはお転婆が過ぎて寝台から転げ落ちてしまったらしい。

 しかも運悪く、丁度ノエルが足を下ろそうとしたところに落ちており、見事に小さな足に踏まれてしまったのである。


 慌てて床を這い寄ったノエルはももちゃんを抱きしめると、堪えきれず声をあげて泣き出す。

 これはまだニーナが側仕えに就任する前のことで、身支度を調えたミラーカがジョアンとアスリンを連れてノエルの部屋に来た時には、ノエルはももちゃんを抱きしめたまま床に座りこんで大泣きをしていたのである。


「ノエル、ももちゃん、ふんだ。

 ももちゃん、いたい」


 慌てて駆け付けたミラーカたちだったが、途切れ途切れなノエルの説明でも状況は十分すぎるほどに理解出来たのだが、慰めるのにはずいぶんと時間が掛かってしまった。

 おかげでこの日以来、朝の点呼時に誰かいなくなっていたら、ノエルは閉められたカーテンと寝台の隙間を覗きこんでから寝台の外に探しに行くことにした。


 学習能力


 そう、ノエルは学習することが出来るのである。

 見た目は五、六歳程度だが、本当の年齢は九歳である。

 精神年齢は見た目よりさらに幼く、おっとりした性格でのんびりしているが、ちゃんとひとの話を聞くことも出来るし学習することも出来るのである。

 ただ知っていることが少なすぎて理解出来ないことが多いのである。


 ぬいぐるみ四体の点呼を終えたノエルは、次に寝台の四隅を陣取るように鎮座しているおっきい子たちと挨拶をする。

 もちろんこちらも四体それぞれに、である。

 どの子から挨拶をするかはその日のノエルの気分次第。


 柔らかい寝台の上を這って移動すると、おっきい子の首に抱きついてふわふわな頬をスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ……。

 あまりの気持ちよさと嬉しさに、本当はずっとずっと頬ずりしていたいのだが、小さい子たちと同じくおっきい子たちも四体いる。

 それにこのあとも予定があってゆっくりしていられないのである。

 実は一見のんびりしているように見えるノエルの日常だが、朝だけは予定が詰まっているのである。


 後ろ髪を引かれる思いを繰り返しておっきい子たちと朝の挨拶を終えると、次は寝台の真ん中で小さい子たちと円陣を組む。

 そして会議を開くのである。

 議題は毎日同じ。

 その日の朝食にノエルと一緒に行くのは誰か? ……という、ノエルにとってもぬいぐるみたちにとっても非常に重大な議題を取り決める会議が開かれるのである。


 だがこちらものんびりと相談している時間はない。

 なぜなら朝食に遅れてしまうからである。

 ノエルがセイジェルと会えるのは朝食の席だけなので、どうしても朝食に遅れるわけにはいかないのである。


 日中は公邸で公務を執り行っているセイジェルが、公務を終えてクラカライン屋敷に戻ってくる頃にはノエルはすっかり寝入っている。

 しかも食事室に連れて行ける子は一人だけとセイジェルに言われているから、ノエルにとっては非常に悩ましく重要な会議となるのだが、絶対朝食の時間に遅れるわけにもいかないのである。


 この朝はみどりちゃんをお伴に朝食の席に着いたノエルは、食後に少し散歩に出た。

 みどりちゃんと一緒に庭の木々を眺めて歩いていると、偶然玄関近くを通りかかった時、支度を整えたセイジェルが公邸に向かうところに遭遇。

 マディンを筆頭に、数人の使用人と一緒にセイジェルを見送ってから部屋に戻った。


「しろちゃん、ただいま」


 居室にあるソファの上で、おとなしく並んですわって待っていた残りの三体に挨拶をする。

 もちろん一体一体、順番に、である。

 それから外に出て少し乱れた髪を直してもらうと、あとは昼頃までのんびりとぬいぐるみたちと過ごす。

 もちろんミラーカやニーナが話し相手を務めながらである。

 この日はニーナがノエルのおさげを編み直しながら話し掛ける。


「姫様はなにかしたいことはございますか?」

「なにか」

「ええ、なにかです」


 ニーナの問い掛けに、ノエルがいつものようにぼんやりと応えるのを見て、ミラーカが少し具体的なことを提案してみる。


「お部屋の模様替えもいいですわね。

 これから寒くなってゆきますし。

 もちろん新しいお洋服が欲しいとか……新しいお友だちが欲しいとかでもよろしいのですよ」

「おともだち……アーガンさま……」


 ニーナに続きミラーカの言葉を口の中で繰り返したノエルは、ずっとずっと我慢していた言葉をぽろりと漏らしてしまう。


「アーガン?」

「公子様がどうかなさったのですか?」

「アーガンさま、こない」


 不思議そうな顔をするミラーカと優しく尋ねるニーナ。

 ノエルはそんな二人に答えるが、一度口から漏れてしまうと次々と淋しさが溢れてきてもう我慢することは出来なかった。


「アーガンさま、こない……アーガンさま……こない」


 ボロボロと涙をこぼし、しゃくり上げながら拙い言葉を繰り返す。

 それでも大きな声を出して泣き叫べないのは、無意識のうちに怒られることを恐れているから。


「アーガンさま……こな……ぃ……」


 ノエルがウィルライト城に入った日、セイジェルの配慮でクラカライン屋敷まで同行することを許されたアーガンは、別れる時、いつでも呼べば来てくれると言っていた。

 でもノエルにはいつ呼べばいいのかわからず、どうやって呼べばいいのかもわからない。

 そうしてアーガンに会えないままひと月以上が経ってしまったのである。

 そのあいだずっと堪えていたアーガンに会いたい気持ちが、ニーナの何気ない一言でこぼれてしまった。


 アーガンのほうからも全然会いに来てくれないとか、言いたいことは沢山あったけれど、ノエルの口から出てくるのは同じ言葉ばかり。

 思うように言葉が出てこないもどかしさも募り、涙も止まらない。

 しゃくり上げながらも、ただただ同じ言葉を繰り返す。


「アーガンさ、ま……こ、こな、い……」

「姫様……」


 はからずもリンデルト卿家の屋敷で緊急家族会議の場に居合わせてしまったニーナは、その内容からアーガンとノエルが知り合いであることは想像がついた。

 だがだからといってニーナにはノエルの希望を叶える方法がわからず、戸惑いノエルとミラーカを交互に見るばかり。

 一方のミラーカはすわっていたソファから立ち上がり、ゆっくりとノエルのとなりに移る。


「姫様はアーガンがお好きなのですね。

 不器用なあの子が姫様に慕われるなんて意外ですけれど」

「ミラーカ様……」


 ニーナと違い、事情が理解出来たミラーカは楽しそうである。

 だが助けを求めるニーナだけでなく、ジョアンからも 「お嬢様」 と窘められると、ふふふ……と笑いながらそっとノエルを抱きしめる。


「では閣下にお願いいたしましょう」

「セイジェルさま」


 しっかりと両手にみどりちゃんを抱きしめたノエルは、涙に濡れた大きな瞳でミラーカを見上げる。


「ええ、閣下にお願いするのです。

 アーガンを呼んで欲しいと」

「アーガンさま、くる」

「もちろんですわ。

 この白の領地(ブランカ)で一番偉いのは閣下ですもの、誰も逆らうことは出来ませんわ」

「アーガンさまも……」

「ええ、アーガンもです」


 本当はノエルだってセイジェルの次くらいに偉い立場である。

 女子であるため家を継ぐことも領主にもなれないが、クラカライン家の序列では四番目。

 二番目と三番目が表舞台から姿を消しているため、ノエルの存在が(おおやけ)にされれば実質的に二番目の同然の立場である。


 ただ騎士が忠誠を誓うのは領主であるため騎士としてアーガンを呼び出すことは出来ないが、リンデルト卿家の公子としてならば本来のノエルにでも呼び出すことが出来る。

 今は無理でも、いずれ権力の使い方を覚えたら、まず最初にアーガンを呼び出してみましょうと笑うミラーカは、ハンカチでノエルの涙や鼻水を拭ってやる。


 ここがクラカライン屋敷でなければ、きっとミラーカはノエルのために自分で弟を呼び出していただろう。

 騎士であり、貴族であるアーガンは領主の命令に逆らうことは出来ないが、姉の命令にも逆らえないから。

 でもクラカライン屋敷ではそれも出来ず、少なからずミラーカももどかしさを覚えたはずだがそんな様子は微塵も見せず、彼女は落ち着き払った口調でゆっくりとノエルに話し掛ける。


「明日の朝食の席でお願いしてみましょう。

 姫様のお願いなら、きっと閣下はすぐにでも叶えてくださいますわ」


 そう言ったミラーカは、ノエルが落ち着くのを待って 「お願い」 の仕方を教える。

 ただアーガンに会いたいと言えばいいだけのことだが、今のノエルにはまだまだ難しいと思ったからである。

 実際に翌朝、食事室でセイジェルと顔を合わせたノエルは話し出すよりも先に泣き出してしまった。


「閣下、食事の前に姫様からお願いがございますの」


 ノエルが自分から話を切り出すのはまだ難しいだろうと気を利かせたミラーカが、自分の席に着いた早々にそんなことを言い出す。

 セイジェルがいつもと変わらない表情で視線だけをノエルに向けると、ミラーカは、広いテーブルを挟んで向かいにすわるノエルに 「さぁ姫様、閣下にお願いしてみましょう」 と促す。

 だがセルジュまでが見守る中、ノエルはセイジェルを見ると、なにか言うよりも先にボロボロと泣き出してしまったのである。


「姫様」


 ニーナが側仕えになってからも、朝食の席でノエルが専用の椅子にすわる時は、セイジェルのお伴をしてきた彼の側仕えがノエルをすわらせる。

 当然食後に椅子から降りる時も彼らが降ろしてくれるのだが、食事中の世話はニーナの仕事である。

 堪えきれず泣き出したノエルを見て一瞬は動揺したけれど、すぐにノエルのすぐ横にかがみ込んで顔を覗きこむ。

 そして話し掛ける。


「泣かなくてもいいのですよ。

 さぁ旦那様にお願いいたしましょうね」


 ミラーカに続いてニーナにも促されたノエルは、しゃくり上げながら小さく頷く。


「ん……ぁ……さま……」

「ゆっくりでいい。

 ちゃんとわかるように話しなさい」


 今度はセイジェルが促してくる。

 だがその口調がいつになく柔らかかったからミラーカやセルジュも意外だったらしく、二人揃って少し驚いた顔をする。


「アーガン、さま」


 涙が止まらないノエルはアーガンの名前を呼ぶしか出来なかったのだが、珍しくセイジェルにもそれだけで通じたらしい。

 すぐなんでもないことのように答える。


「アーガンならばすでに騎士団を通して召喚した」

「しょうかん……」


 それはノエルの日常にはない言葉である。

 意味がわからず小さく呟くのをきいてニーナが説明してくれる。


「公子様にお屋敷に来てくださるようにと、騎士団にお伝えしたのですわ」

「こうし……アーガンさま、くる」

「ええ、きっといらしてくださいますわ」

「アーガンさま、くる」


 意味を理解したノエルは、ニーナの励ましもあって少し気持ちが持ち直す。

 まだ涙は止まらないけれど、少し表情を明るくしたノエルは期待するような目をセイジェルに向ける。

 だがセイジェルは現実を突きつける。


「但し、アーガンは騎士だ。

 騎士には騎士の務めがある」

「アーガンさま、きしのおしごと」


 自身で難しい言葉を使うことの出来ないノエルだが、セイジェルの言葉は理解出来ているのだろう。

 セイジェルもまた、ノエルの呟きをきいて相槌を打つ代わりに頷いてみせる。

 そして続ける。


「今は騎士団も忙しい。

 都合が付くまで数日待つことになるだろう」


 収穫期のウィルライト……いや、アベリシアには、白の領地(ブランカ)北部から来る出稼ぎにくわえ流れ者も多く集まる。

 さらには税を納めに来る領民やそれを受け入れる役人などの往来も慌ただしく、争いごとや事故も多い。

 そんな中で騎士団だけが遊んでいるわけにもいかないのである。


「アーガンさま、まだ(・・)こない。

 ……ノエル、しょんぼり……」


 アーガンは来ないわけではない。

 いや、来る。

 それは理解出来たノエルだが、やはりまだ(・・)来ないという事実に、期待に満ちていた表情が曇る。

 落ち込むノエルを見て、事実は事実として伝えなければならないことはミラーカもわかっているが、「言い方というものがございましょう」 とセイジェルに抗議する。

 そんな彼女とテーブルを挟んだ向かい側では、傍らに控えるニーナがノエルを慰める。


「まぁ姫様ったら。

 公子様がいらっしゃる日がわかったら旦那様が教えてくださいますわ。

 それまでに公子様とお会いする日のご衣装を決めなければなりません。

 それに振る舞うお茶やお食事も考えなくては」

「ふく……」

「ええ、可愛らしくしましょうね」

「ごはん、たべる」

「ええ、美味しいものを公子様とご一緒に召し上がりましょう」


 自分が着る服だって決められないノエルに、食事の内容や茶菓子など考えられるはずがない。

 もちろんニーナだってそれはわかっている。

 おそらくそのあたりのことはマディンか調理人に任せることになるだろうが、ニーナの思惑どおりノエルの気分をあげるのには役に立ったらしい。

 ニーナの話を理解するとノエルの表情がパッと明るくなる。


「わかった。

 ノエル、かんがえる」

「お待ちしてるあいだも沢山することがございます。

 姫様もお忙しくなりますわ。

 まずは涙をお拭きして、温かいうちにお食事をいただきましょう」

「わかった、ごはんたべる」


 ニーナにされるがまま世話を焼かれるノエルが落ち着くのを待って、セイジェルがいつものように唱える。


「日々の(かて)を恵み(たま)う光と風に感謝を……」


 セイジェルの言葉を切っ掛けに、いつものように始まった朝食がいつものように終わると、セイジェルとセルジュは自室に戻って身支度を調えると公務のため公邸へ。

 ノエルはミラーカとニーナに伴われて自分の部屋に戻る。


「しろちゃん、ただいま」


 朝、食事室に連れて行けるぬいぐるみは一体だけ。

 部屋で留守番をしていたぬいぐるみたちに、いつものように戻ってきた挨拶をするノエルを眺めながら、テーブルを挟んで向かいにすわるミラーカは思案する。


「当日のご衣装……そうですわね。

 でもアーガンのために衣装を新調するなんて……」


 そこまでを呟いて小さく息を吐く。

 そして不満そうに続ける。


「どうして姫様が初めて迎えるお客様がアーガンなのかしら?

 もっとこう……」


 ノエルのお客様に相応しい相手として、ミラーカがどんな人物を想像したのかわからないが……いや、想像出来なかったのだろう。

 言葉半ばで考え込んだと思ったら、また小さく息を吐く。

 そこを控えていたジョアンが窘める。


「お嬢様、坊ちゃまも立派なお客様でございますよ」

「もちろんわかっています。

 ですが……」


 ここでまた溜息を吐く。

 どうしても姉目線で弟を見てしまうため、得出来ないのだろう。

 そんな二人の前では、ニーナがノエルに話し掛けている。


「まだお袖を通しておられないご衣装が沢山ございますが、そちらから選ばれますか?

 今までにお召しになったご衣装でお気に入りがございましたらそちらでもよろしゅうございますが。

 あと、リボンも可愛いものを選びましょうね」

「ふく、りぼん」

「ええ、まずはご衣装を選んでいただいて、リボンはご衣装に合わせましょう」

「りぼん……」


 ノエルに合わせてゆっくりと話すニーナは、不意に考え込む様子を見せるノエルを見て次の反応を黙って待つ。

 するとノエルは抱えていたしろちゃん、続いて並んですわっているももちゃん、みどりちゃん、あおちゃんの順に見て、それから再びニーナを見る。


「りぼん、しろちゃんもする」

「あら」

「かわいくなる」

「ええ、なりますわ」

「ももちゃんもする」


 ノエルの期待に満ちた目や表情を見て、ニーナも、テーブルを挟んで見ていたミラーカも乗り気になる。


「まぁまぁ、でしたら姫様とお揃いにいたしましょう。

 早速マディンに言って商人を呼ばなくては」


 物欲のないノエルの持ち物はまだまだ少ない。

 だからある物から選ぶにも限られており、ぬいぐるみたちもお揃いにするとなれば当然新たに仕立てる必要がある。

 それこそリボン一本でも。


 ミラーカから商人を呼ぶように言われたマディンに伺いを立てられたセイジェルは、最初 「任せる」 とだけ答えたのだが、不意になにかを思いついたらしく、もう一つ用事を言い付けた。

【リンデルト卿家公子アーガンの呟き】


「閣下はご不在の時間だろうが、だからといっていつもの格好というわけにはいかんか。

 ということは、やはり礼装か。

 はぁ~……。

 そういえば、イエルが髭や髪も整えろと言っていたな。

 とりあえずカミソリを研いで、髪も少し切るか」

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