77 初めての友だち (2)
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それは人形を見たノエルが熱を出して寝込んだ数日後のことである。
ようやく熱が下がった翌日、医師からはまだ安静にと言われていたが、ノエルがセイジェルやセルジュと会えるのは朝食の席だけ。
いや、セルジュはどうでもいいのかもしれない。
少なくともノエルは、自分の食事を用意してくれているのがセイジェルであることをわかっているらしく、セルジュが自分に興味がないことにも気づいているらしい。
だからといって特に会話があるわけでもないのだが、ノエルがセイジェルに会いたがるので……少なくともミラーカにはそう見えたから、食事のあとは部屋に戻って休むことを約束して、着替えて食事室に向かうことにした。
「今日はこちらにしましょう」
ジョアンとアスリンが薦めたワンピースの中からミラーカが一枚を選ぶ。
ミラーカに頼まれてマディンが用意したノエルの衣装の中にはブラウスやスカートもあるけれど、ミラーカはいつもワンピースを着せる。
多少サイズが合っていなくても着られるというのもあるが、一番の理由はあまりにも痩せた体をわかりにくくするためである。
着替えもさせやすい。
そんな理由でミラーカはノエルにはワンピースを着せているのだが、この日もあまり飾りのないワンピースにエプロンを掛けて食事室に現われたノエルは、髪もすぐ休めるようにとゆるく三つ編みにしただけ。
下ろしたままでは痛みの激しい髪は広がりやすく、すぐに絡まってしまうから束ねておく必要があるからである。
そしてエプロンと同じ白いリボンを結んでいる。
華やかなリボン飾りや繊細なレースもなければ絢爛な刺繍もないありふれたワンピースは、町の仕立屋で、おおよそのサイズを伝えて急ごしらえした物で、使われている生地も決して上質なものではない。
本来ならば白の領地を治めるクラカライン家には相応しくない装いだが、まだノエルの存在は公にされておらず、屋敷の中だけで過ごすなら問題ないと考えたのだろう。
相変わらずノエルの世話の全てをミラーカに任せていたセイジェルは、服装についてもなにも言わない。
しかしこの朝もすぐ公邸には向かわず、食事を終えたノエルを抱え上げて屋敷の一室に連れて行こうとする。
先日はミラーカの依頼だったこともありミラーカには事前に話していたが、今日はそのミラーカにも話していないらしい。
だからミラーカも何事かと怪訝な顔であとに続いていたのだが、途中で、向かっている部屋が先日と同じ部屋だと気がつく。
それはノエルも同じだったらしく、セイジェルに抱えられながらも急に怯えだす。
「こわい……ノエル、あっち、いきたくない」
「いい記憶力だ」
怯えながらも頑張って意思表示するノエルだが、抱えるセイジェルの腕の中で暴れるわけではない。
セイジェルもまた、幼く見える言動とは裏腹なノエルの記憶力に感心してみせるだけ。
もちろんうしろから来るミラーカが怒気を放っていることには気づいていたが、領主を相手に実力行使に出るわけにもいかず、小柄な全身を使って怒気を放つことで圧力を掛けようとしているので放っている。
そんな方法がうまく息はずもないことは言うまでもないだろう。
「こわい、いや」
怖くて怖くてたまらない。
でも泣いたら怒られるから必死に堪えようとするけれど、堪えられずどんどん涙が溢れてくる。
そんなノエルの様子を見たら、さすがのセイジェルも良心が咎めるかと思ったが……
「泣きたい時は泣きなさい。
我慢をする必要はない」
「閣下、そうではありません!」
ついに口を開いて抗議するミラーカだが、壁のような背中を向けたままのセイジェルは言葉を返すこともしない。
代わりに、ミラーカのさらにうしろから着いてきていた今日のお付きであるアルフォンソとウルリヒが口を開く。
「ひょっとして、令嬢は旦那様に子守りをさせようというのですか?」
「これはまた、とんだ無理難題を仰る」
「以前にも申し上げたと思うのですが……」
「人には向き不向きというものがございまして……」
露骨に呆れてみせる二人にミラーカは声を張り上げる。
「えぇい、おだまり!
そなたたちと話しているのではありません!」
「旦那様に相手にされていないのがお可哀想だと思っただけです」
「わたくしたちにまで見放されては可愛そうだと思いまして」
「ああ言えばこう言う!」
「わたくしたちの役目ですから」
「真面目に仕事をしているだけです」
本当に口の減らない二人を相手に、ついには足を止めて振り返って言い返していたミラーカだが、不意にウルリヒが前方を指さす。
最初は意味がわからずポカンとした顔をしたミラーカだが、不意にハッとして慌てて前方を見ると、セイジェルがノエルを抱えたまま先日の部屋に入ろうとしていた。
「閣下!」
怯えるノエルを心配して止めようとするミラーカだが、たった今の今、すぐそこにいたはずのアルフォンソとウルリヒが、ミラーカが一瞬目を離した隙に瞬間移動でもしたのか、セイジェルの側に立っており、アルフォンソにいたっては扉を開いているではないか。
まんまと足止めをされてしまったことに気づいたミラーカも慌てて駆け出すけれど、追いつく前に四人は部屋に入ってしまった。
「閣下、どうして……」
ノエルが嫌だと言っているのに、どうして無理矢理に連れて行くのかっ! ……と抗議しようとしたミラーカだが、遅れて部屋に入ると、そこに広がる光景を見て 「あら」 と拍子抜けしたような声を出す。
そこには沢山の人形が並んでいた先日とは全く違う光景が広がっていたのである。
「これは……まぁ、なんて可愛らしい!」
部屋に入った直後の険しい顔を一変させ、嬉しそうに声をあげるミラーカ。
彼女の視線の先には、色も素材も様々なぬいぐるみたちが、所狭しと部屋中に並べられていたのである。
主人であるセイジェルを部屋で待ち受けていたマディンとその隣に立つ男が、一行が部屋に入ってくるのに合わせて頭を下げる。
男のほうは先日の商人である。
おそらく今日も、これだけのぬいぐるみを運び込むために使用人を連れてきているはずだが、別室にいるのだろう。
部屋にいたのはマディンと商人の男の二人だけである。
「側で見てくるといい」
セイジェルに声を掛けられながら床に下ろされたノエルは、すぐさま駆け付けたミラーカに手を取られる。
「さぁ姫様、可愛い子が一杯ですわ」
取った手を引いてノエルをぬいぐるみに近づけようとするミラーカだが、ぼんやりと立ったままのノエルはなにか言いたげにセイジェルを見上げる。
「好きなのを選びなさい」
「さぁ姫様、近くでよく見ましょう」
そう言ってミラーカが手を引いてぬいぐるみに近づくと、ノエルはぼんやりとした表情のまま並べられたぬぐるみたちを見回す。
ノエルがよく知っている馬や牛、犬や猫、ネズミといったありふれた動物はもちろん、あまり見ないヤギや、白の領地では北の方で飼育されているが、赤の領地ではほとんどいないとされているヒツジ。
それに一見馬に見えるがなぜか額に一本角を生やしていたり、犬にしてはとても大きく毛足も長いなど初めて見る生き物も多く、ノエルがそれらの前で足を止めるたびにミラーカが紹介する。
「それはおそらく一角獣ですわ」
「いかくじゅう」
「白の領地に光と風の守護聖獣として金獅子がいるように、一角獣は水と氷の守護者として青の領地に棲息していると聞きます。
そちらの毛足の長い大きな犬に見えるのは、おそらく灰青狼ですわ。
緑の領地の森に棲息している緑と豊穣の守護聖獣で、かつてどこぞの神官が遭遇したという古い記録もありますわね」
するとなぜかここでセイジェルの後ろに控える二人の側仕えが吹き出す。
「どこぞって……」
「以前は神官をしておられたと聞きましたが、その程度の知識で……」
「灰青狼は緑の領地に棲息するのですから緑の神官に決まっているでしょう」
「うるさいですわ!」
すぐさまミラーカが恥ずかしげに顔を赤らめて言い返すけれど、二人は彼女を小馬鹿にするように笑ってみせる。
そしてセイジェルはそんな二人を放置して、目だけでノエルの動きを追って観察している。
「姫様、触ってみましょう。
ほら、とても柔らかくてふわふわですよ」
ぬいぐるみは見た目の可愛さも大事だが、触った時に感触も大事だとミラーカに説明されたノエルはセイジェルを伺うように振り返る。
するとノエルと目が合ったセイジェルはゆっくりと頷いてみせる……が、すぐにあることを思い出したらしい。
「……触ってみなさい」
そう、ノエルは言葉に出して説明しなければわからないのである。
だが話せば理解は出来るから、セイジェルに言われたノエルはそっと手を伸ばし、近くにあったヒツジのぬいぐるみに触れてみる。
おっかなびっくりと。
最初は指先に少し触れただけ。
そしてすぐにセイジェルを振り返るが 「もっと触れてみなさい」 と言われ、今度はもう少しゆっくりと触ってみる。
でもやっぱりすぐに引っ込めると、伺うようにセイジェルを振り返る。
「怒らないから、好きなだけ触りなさい」
当然のことだが、セイジェルにはぬいぐるみの選び方なんてわからない。
だからミラーカが触ってみろとノエルに勧めるのならそれでいいのである。
「おこられない」
「ええ、怒られませんわ。
さぁどの子になさいます?」
「ふわふわ」
「ええ、柔らかくてふわふわでしょう?
抱いてみますか?」
馬が苦手なノエルだが、ポップにデフォルメされたぬいぐるみだとそれが馬だと認識しづらいのか、平気そうにしているが、大きさも見た目の質感も本物そっくりな馬を見つけると、そっと側を離れる。
その時 「うしろ、だめ、うしろ、だめ」 と呟いていたのを聞いて、ミラーカは首を傾げる。
まるで剥製のようによく出来た馬だが、実際に触ってみると革ではなく布で出来ていることがわかるが、馬には近づくのも怖いノエルに触れられるはずもない。
「さすがにその馬は大きいですわね。
姫様でしたら乗って遊べそうですけど」
「うま、こわい」
「とてもおとなしい生き物ですのに」
一人で馬を乗りこなすミラーカにとって馬はおとなしく人によく懐く生き物だが、怖がるノエルに無理強いはしない。
相変わらずぼんやりとだが、並んだぬいぐるみたちを眺めながらゆっくりと歩くノエルに合わせてピッタリとうしろをついて歩く。
そしてその足が止まればもちろんミラーカも立ちどまり、ノエルの視線の先にあるぬいぐるみを見て 「あら」 と声をあげる。
それは少しワニに似た顔をしていて、段々腹や背びれに尻尾など爬虫類らしい様相をしているが二本足で立っており、手には宝珠のような物を持っている。
顔も可愛らしくデフォルメされていて、背にはとても小さな翼らしきものもついている。
「姫様は初めてご覧になりますか?
これはドラゴンという架空の生き物ですわ」
「かくう」
「ええ、冒険物語などによく出てくるのですが、たいてい勇者にサクッと狩られてしまいます。
とても凶暴で極悪非道と書かれているのですが、なぜか勇者の手に掛かればサクッと一撃で狩られてしまうのです。
あまりにもいつもいつもあっさりと退治されてしまうものですから、わたくし、そのシーンを読むたびに思いましたわ、これのどこが凶暴で極悪非道なのかと」
むしろ憐れにさえ思えたとか、最弱の間違いなのでは……と、物語を読みあさった子ども時代を思い出しながら話すミラーカをよそに、いつのまにかそばまで来ていたセイジェルが、所狭しと並べられたぬいぐるみの中からノエルが見ているドラゴンの一体を、大きな手で鷲掴みにしたと思ったら、なぜかノエルの頭の上に乗せる。
てーん
「これが気になるのか?」
そう言って少し雑に引っこ抜くと、ノエルの頭の上に乗せたのである。
声にならない驚きの声をあげたノエルは、慌てて両手を頭上に伸ばしてドラゴンが落ちないように掴む。
そしてホッとするのも束の間、その小さな頭上でミラーカがセイジェルに抗議する。
「閣下、子どもみたいな意地悪はおやめください」
「代わりに取ってやっただけだろう」
これは商人のうっかりだが、ノエルの背では人形を乗せた台が少し高いのである。
見て回るには問題ないが、おそらくうしろのほうに並んでいるぬいぐるみは、手前のぬいぐるみの邪魔もあってノエルには見えていないだろう。
セイジェルとミラーカのやり取りを見てその事実に気がついた商人はハラハラするが、セイジェルはミラーカが怒る理由がわからないというより、そもそも取り合う気がないらしい。
当然のように商人の様子など気に掛けるつもりもない。
そんなセイジェルに抗議する無意味さを察したミラーカは、小さく息を吐くと気を取り直してノエルを見、なぜかノエルは頭に乗せられたドラゴンのぬいぐるみを落とさないように頑張っていた。
「……姫様、なにを……いえ、せっかくですからそのドラゴンを抱っこしてみましょう」
「だっこ」
「ええ、だっこしてみましょう」
応えながらミラーカが頭から下ろしてやろうとすると、なぜか手を放したがらないノエル。
そのことに気づいたミラーカは手を放す。
そして屈むと、ノエルと視線を合わせて話し掛ける。
「さ、落とさないように抱っこしてあげましょう」
「だっこ……おこられない……」
「ええ、怒られませんわ」
しばらく考え込むように固まっていたノエルだが、その小さな頭の中でどこをどう辿って結論に辿り着いたのか。
わからないけれど、ぬいぐるみを持った両手をゆっくりと下ろす。
ところがぬいぐるみと目の高さが合ったところでピタリと手が止まったと思ったら、じっとその目を見つめている。
「姫様、どうかなさいましたか?」
「……め」
「目? ぬいぐるみの目ですか?」
あまりにも長い時間、ノエルがぬいぐるみと見つめ合っているので、側に屈んでいたミラーカもぬいぐるみを覗きこみ、白いドラゴンの目を見る。
その琥珀色の瞳を見てすぐに 「あら」 と声を上げる。
てっきり琥珀色のガラス玉が嵌められていると思っていたら……
「これ……本物の琥珀では?」
「そのようだな」
そんな二人の頭上で別のドラゴンの目を、腰を屈めて覗きこんだセイジェルが応える。
どうやら他のドラゴンの目にも本物の宝石が使われているらしい。
ぬいぐるみに本物の宝石が使われている事にミラーカは驚いたが、興味のないセイジェルはまたノエルの観察に戻る。
おそらくノエルは本物の宝石を見るのは初めてだろう。
あるいは宝石という存在を知らないかもしれない。
しばらく白いドラゴンの目を見ていたが、やがてそばに屈むミラーカを見てかすかに笑みを浮かべる。
「ミラーカさま、きれい」
「ええ、とても綺麗な目をしたドラゴンですわ。
さ、抱っこしてみましょう」
「する」
言っている側から細い両手で白いドラゴンを抱きしめたノエルは、その柔らかさに驚く。
そしてビックリしたように大きな目をさらに見開く。
「姫様?」
「……やわかい……」
「ええ、ぬいぐるみですから柔らかいでしょう?
それにとてもふわふわしているでしょう?」
「ふわふわ」
「今、姫様がそのドラゴンを抱いている感覚をふわふわとも言うのです」
「ふわふわ」
ただ 「ふわふわ」 を繰り返すノエルだが、その感触が気に入ったらしい。
ノエルの両腕に抱いて丁度いいくらいの大きさのぬいぐるみで、何度も何度もぎゅっと抱きしめては頬ずりをしてその感触の楽しんでいる。
「かわいらしい」
「しろちゃん、かわいい」
その様子を見ていたミラーカが思わずこぼすと、ノエルはそれをぬいぐるみのことだと思ったらしい。
ノエルの勘違いに気づいたミラーカはすぐに訂正しようとしたけれど、やめた。
そして 「ええ、そうですわね」 と相槌を打つ。
「そのぬいぐるみがお気に召しましたか?
他にも色がございますわ。
桃色や青、それに……」
緑と言い掛けて、ミラーカは不意に言葉を飲む。
桃色、青、緑、そしてノエルが抱いている白。
この四色の組み合わせに思うところがあったのである。
だがすぐなにもない振りをしてノエルに話し掛ける。
「緑もございますわね。
どの色がよろしくて?」
四色のドラゴンは全く同じデザインではない。
おそらくこの特徴も色に関係があるのだろう。
だが今のノエルにそんなことをいう必要はない。
気に入ったのならそれでいいのである。
ミラーカに勧められてノエルが他の色を見ようとした矢先、横から伸びてきたセイジェルの手が桃色のドラゴンの頭を鷲づかみにする。
そして無造作に並んだぬいぐるみの中から抜き取ると、またしてもノエルの頭の上に乗せたのである。
てーん
「あ、あ、あ、おち、おち……」
しろちゃんを抱いているため両手が塞がっているノエルは、頭に乗せられた桃色のドラゴンが落ちるのではないかと気が気ではない。
だが、だからといってしろちゃんをミラーカに渡して桃色のドラゴンを救出するとか、ミラーカに桃色のドラゴンを救出してもらうという発想はないらしい。
しろちゃんを抱きしめる手に力を込め、泣きそうな顔をしながらも頭の上のぬいぐるみが落ちないようにじっと堪えている。
「閣下!
さきほどから……どうして今日は、こうも子供じみた意地悪のなさるのですかっ!
大丈夫ですわ、姫様。
わたくしがとって差し上げますからね」
セイジェルを怒鳴りつけたミラーカは、慌ててノエルを宥めながら頭の上に乗せられたぬいぐるみを取る。
だがノエルがミラーカの手に桃色のドラゴンを見てホッとしたのも束の間、またしてもセイジェルが、今度は青色のドラゴンをノエルの頭に乗せたのである。
てーん
「あ、あ、おち、おちる、おちる」
「ですから閣下!
本当に……いったい何がしたいのですか!」
セイジェルはこれを緑のドラゴンでも繰り返したから全くもって不可解である。
子供じみた意地悪でも繰り返せば陰湿でミラーカは噴火寸前だったけれど、今にも泣き出しそうなノエルを宥めるほうが彼女にとっては先決だった。
「大丈夫、大丈夫ですわ、姫様。
どの子も無事ですわ」
そう言って両手一杯に抱えた三体のドラゴンをノエルに見せる。
おそらくノエルは、ぬいぐるみを落として怒られることが怖かったのか、それとも他に理由があったのか、わかっていないはず。
けれど目に溜まった涙がこぼれないように必死に堪えている。
その理由はともかく、泣いたら怒られるという母エビラが掛けた呪縛からまだ解放されていないのだろう。
だがミラーカの大変さもノエルが泣く理由もどうでもいいのがセイジェルである。
少し胸を反らせるように腕組みをすると、商人と並んで立っているマディンを見る。
「マディン、これをもらおう」
「かしこまりました」
【側仕えアルフォンソの呟き】
「色の判別は出来ている。
ということは、やはりおかしいのは味覚だけのようですね。
それにしても……
なんてネーミングセンスのない。
わたくしにお任せ下されば、もっと高貴で偉大な名前を付けてあげましたのに。
姫の、あの小さな頭ではとても覚えられないような名前を、ね……」