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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
侍女と執事の会議
84/120

04

「本来彼らは逆らうことのないように教育され、一片の乱れの無いよう統率されてきた。しかし戦争が終わったことで統率という縛りから解放され、彼らは自由になった」

「……それが、間違いだった」

 ガラが呟くとハロルドは頷いた。

「指示が無いと動けない人間は自由が分からない。そして唯一出来る、人を傷つけることが禁止とされた。その結果があれだ。皆、知っているだろう」

 人を傷つけることでしか生きられない者。

 自由を理解できず生きていく術なく死んでいく者。

 戦争が終わったことで罪悪感を初めて知って狂う者。

「戦後すぐなら彼らを再び統率できたかもしれないが、十年経った今ではまともな十人を探し出してやっとというレベルだろう」

 エリーの視線がまたしてもアソラに移った。

「なに?」

「いやぁ、そう聞くとアソラってまともなんだなぁってぇ」

「あれだけマリー様にこき使われて、文句ひとつも言わないのがまともかどうか怪しいとこだがな」

 ガラは自分が呼ばれるのを想像したのか、少し険しい顔をしてアソラを見下ろした。

「まぁ、そうなんだけどさぁ、でも、その程度じゃん?」

 オポズで何人かの元軍人を見て来たエリーが口を開く。

「だいたいガラだって執事長にこき使われたって文句ひとつ言わないでしょ」

 人のこと言えないよ、とロイドが鼻で嗤った。

「あ?」

 ガラは再び額に青筋を立てた。

 一触即発、そのとき、アソラが口を開いた。

「いや、私はまともではないよ」

 エリーが目を丸くする。

「え? どこがぁ?」

「旦那様に禁止されているから殺さないだけで、殺せと命じられれば今でも殺せる」

 マルリットはここの人間たちを雇う際に、いくつかの条件を出した。

 自分が殺せと命じない限りは殺してはいけない。それが条件の一つだった。

 内心、そんなこと言えば全員がまともではないことになる、と思ったが誰も口を開かなかった。その心の内を知らずアソラは「それに」と言葉を続けた。


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