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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
温室管理人の追憶 番外編
78/120

08

「あの」

「どうしたの? 忘れ物?」

 珍しくアソラが一人で温室にやって来た。マリーと共にここを離れたのは数時間前だ。

「いえ、お金は払うので花束を作ってもらうことできますか?」

 その言葉を聞いたステラの脳裏を過ったのは真っ赤な薔薇。

 アソラを見るが、彼女の表情は変わらず、相変わらず何を考えているか分からない。それでも、アソラの気持ちは分かったステラは優しく笑った。

「ええ、できるわよ。でもお金はいらないわ」

 薔薇のとこへ行き、パチンパチンッと茎を切っていく。

「そういうわけには」

 できるだけ多くの花を切って、マリーが喜びそうな淡い色のピンクのリボンでラッピングする。

「いいのよ、薔薇の花は自宅でも咲いてるから、なにか入用なら自宅から持ってこればいいもの」

 ボリュームのある花束をアソラに渡す。

 黒い髪と瞳の彼女に赤い色がとても似合っていて、ステラは「あら」と目を輝かせた。

 そして一本だけ彼女のエプロンに差し込んだ。

「これはあなたの分」

「ありがとう、ステラ」

 彼女がほんの少し笑ったような気がした。


「ただいまー」

 自宅に帰ると「おかえり」と昔より皺が増えたトナが奥から顔を出した。

「ねぇ、薔薇、明日屋敷に持って行ってもいい?」

 自宅の庭管理をしているトナに尋ねると、老眼鏡を外し、ステラを見た。

「ああ、いいけど、屋敷にもたくさん咲いたって言ってなかったか?」

 最近字が見にくいと漏らした彼に、ステラは意気揚々と老眼鏡を買って渡した。最初は渋っていたが、それが見やすいと分かると躊躇いなくつけるようになった。

「それがね」

 今日あったことを、ご飯を食べながら話す。

 これがステラとトナの日常だった。

「だから私も久々にお嬢様に花束でも贈ろうかなって」

「それはいい、お嬢様も喜ぶさ」

 ステラがトナを見る。

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