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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
温室管理人の追憶 番外編
75/120

05

「初めまして、マルリット・ジョーダンと申します」

 客人であるマルリットと名乗るジョーダン家の子息がベルベッドに柔らかな笑顔を向ける。

「ベルベッド・キュリラスです」

 ベルベッドの手の甲に口づけをするその姿は童話の中の王子のようだ。

 周りの侍女たちが色めき立つ。

 ステラは静かにその光景を見ていた。

「こちらへどうぞ」

 案内された部屋で、二人はにこやかに話し始めた。

 最初、キュリラス家の侍女はステラを含めて三人いたが、ベルベッドが相次いで物事を頼んだ為、残ったのはステラだけだ。

 マルリットとベルベッド、そして彼の執事のハロルドとステラの四人が部屋にいた。

「マルリット様」

「なんでしょう」

 ベルベッドがカップを置き、口を開いた。

「私、結婚する気はございませんの」

 ステラの肩が跳ねる。しかし驚いたのはステラだけだったようで、マルリットとハロルドは眉一つ動かさなかった。

「私、もっと人の役に立つことがしたいと思っています。だから、誰かの奥様になってその人の為に生きていくというのは致しかねます」

 その声音には、彼が嫌で破局を望む為についた嘘ではないことが分かる。「申し訳ございません」と頭を下げるベルベッドにマルリットが問うた。

「それは、お父様はご存じで?」

 顔を上げたベルベッドは頭を左右に振る。

「いえ、まだです。このようなこと言ってしまえば、お父様はお怒りになって勘当されるかもしれません」

 目を伏せるベルベッドのカップを持つ手が震えている。

 家族との縁を切ってまで自分のやりたいことをやろうと決意したが、不安でいっぱいなのが誰の目に見ても明らかだった。

 マルリットが立ち上がり、ベルベッドの横で跪いた。

「え?」

 驚く彼女の手を彼は握り締める。

「そのお気持ち、大変立派だと思います。ですが貴女一人では大きな弊害も伴うことでしょう」

 言われたベルベッドもそれは十分承知だった為、視線をマルリットから逸らした。「だからこそ」とマルリットが口を開いた。

「私が貴女をお守りしましょう」

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