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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢のわがまま
66/120

01

 冬は太陽が昇るのが遅い。その為、一年を通して同じ時間に起きる執事侍女たちも一度目が覚めたとき、夜中と勘違いしてしまうほど外が暗い。

 今朝は一段と空気が冷たい。吸い込んだ空気で肺が冷える。

 アソラは寝床から抜け出すと、真っ暗な部屋で火も灯さずに着替えを始める。

 服を着替え、髪を結いあげようとしたとき、遠くから誰かが走ってくる音が聞こえた。

 アソラはその聞き覚えのある足音に髪を結う手を止める。しかし、と思いながらカーテンを閉めたままの窓を見るが、やはり日は差し込んでおらず、外は真っ暗だった。寝起きの悪い小さな主人がこのような早い時間に起きているわけがない。そう思った瞬間、アソラの部屋の扉が激しい音を立てて開かれた。ちなみにその音で隣の部屋のエリーが襲撃かと飛び起きた。

「アソラッ!」

 部屋に飛び込んできたのは予想通りマリーだった。

「……どうしたのですか、マリー様」

「おはよう、アソラッ」

「……おはようございます」

 アソラは部屋に火を灯した。

 髪の毛を梳くのはアソラの役目だったので、髪は寝起きのまま乱れており、服は寝るときに着るものにカーディガンを羽織っただけだった。

 寄りにもよってこの冬一番冷え込んでいる朝にマリーは頬を赤らめて、薄着で走って来たのだ。

 アソラは以前マリーに貰ったブランケットをマリーに羽織らせる。

「あら、ありがとう」

「どうしてこんな朝早くに?」

 マリーは目を輝かせて「見てちょうだい!」とアソラの部屋のカーテンを開けた。

「雪が積もったの!」

 外はまだ暗いが、真っ白な雪が庭を埋め尽くしていた。

 タントッラ王国ではこの時期雪が降る日も多々ある。しかし、このように積もることは滅多になく、大人でさえもこの光景を見て高揚する人が多い。

 アソラは雪があまり好きではないので、目を輝かすことは無いが、マリーが楽しそうに外を眺めているのを見て、小さく笑った。

「もう少し明るくなったら外へ行きましょう」

「ええ!」

「とりあえず部屋に戻りましょう」

 そう言いマリーの手を引くと、その手はあまりにも冷え切っていた。

「少し厨房に寄りますか」

 マリーはアソラに手を引かれ、部屋を出た。

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