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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
魔女の追憶 番外編
65/120

13

 オポズの自分の家に戻る頃には明け方になっていた。

 その眩しさに目を細めると、キラキラと一層輝く髪の男がいた。

「お疲れ様」

 マルリットだ。

「まさか本当にお母さんを取り戻すなんて、君の才能には驚きだよ」

 それは本心だった。まさかこんな幼い少女が、一人の女に骨抜きなっているとはいえ、あの食えない男を殺してくるとは夢にも思っていなかった。

 少女は小さく欠伸をした。

「さすがに、お疲れのようだ」

 布団に潜りこんでいても全然眠くならなかったのが嘘のように、急激な眠気がエリーを襲う。

「君に頼みがあるんだ」

 一刻も早く寝たいエリーにマルリットは声をかける。

「必要な教材を家の中に置いておいた。私の為に勉強をしてくれないか」

 その眩しい顔を見て、エリーは眉間に皺を寄せた。

「また私に人を殺せと言うの?」

「必要があればそうするが、今はただ純粋に君を試したい」

 エリーは難しい顔のままマルリットを見る。

「君がどこまでこの脳に知識を詰め込むか、それを見てみたいんだ」

「ふわぁ」

 我慢が効かずつい欠伸をしてしまうエリーにマルリットは申し訳なさそうに、戸を開けた。

「すまないね、とりあえず寝なさい。また時が来たら話に来るよ。ユーリス先生にもよろしく伝えておくれ」

 そう言ってマルリットは帰って行った。

 部屋の隅に前まで置いていなかった大きな紙袋が置いてある。

 中を覗き込むとそこには大量の薬学の参考書があった。

 それは医療のものから、毒薬のものまで、幅広い分野の本だった。

 エリーは瞬きを繰り返しながら、その本をさらに隅に追いやり、布団に倒れこんだ。

 薄れゆく中でヴィエラの声が聞こえる。

『うっとりとした恍惚とした目になるんだ』

『そういう目をした女には気をつけろ』

『そういう目をした女は、好きな相手の為なら何でもやる』

 カナロフの自室で見た光景が忘れられない。

 あの鏡にはエリーが映っていた。

 あのときの自分の目は、あの日の母親と同じ目をしていた。

 女の目だ。


 数年後、オポズの魔女はジョーダン家へと侍女として雇われる。


番外編完。


番外編なのに長々と失礼しました。

他にもこのように本編に関係ない話を間に挟んでしまうかもしれません。

すみません。

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