08
綺麗な身なりをした男女がいた。
エリーでは無ければ気づかないかもしれない。でもエリーは彼女がどれだけみすぼらしい姿をしていても、絢爛豪華な服を身に纏っていても、気づく。
彼女が自分の母親だと。
走り、母親にしがみつくと、叫び声と共に、体が浮いて、尻もちをついた。
何が起きたか理解が出来なかった。
顔をあげると、殺されそうなほど憎悪が籠った目があった。
「お、母さん……?」
「私はあんたの母親じゃないわ!!」
そうだ、そうやって言われて突き飛ばされたことをエリーは思い出した。
「行きましょう、カナロフ様」
母親はカナロフと呼んだ男に腕を絡め、その腕に愛おしそうに頬ずりをした。
エリーには一瞥もくれず、二人は去って行った。
ポタッとエリーの頬に雫が伝った。
それはポタポタと降ってくる。
周りの人が雨だと騒いで去っていく。
しかし、エリーは地面から生えた蔦に、全身をからめとられているかのように動くことができなかった。指一本さえも動かせず、座ったまま雨に打たれた。
どれくらい時間が経ったのだろう。
「エリー!?」
ユーリスが穴の開いた傘を片手に駆けて来た。
座り込んでいるエリーに声をかけるが、エリーは動かない。体を揺さぶっても焦点の合わない目をしたまま、座り込んでいる。
「フーヒフ!」
「コンラッド、とりあえずエリーの僕の診療所へ!」
コンラッドに抱えられ、エリーはその場を離れた。
ユーリスはエリーが座っていたところを見た。
どこに彼女が座っていたのか分からないほど、濡れていた。




