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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
魔女の追憶 番外編
60/120

08

 綺麗な身なりをした男女がいた。

 エリーでは無ければ気づかないかもしれない。でもエリーは彼女がどれだけみすぼらしい姿をしていても、絢爛豪華な服を身に纏っていても、気づく。

 彼女が自分の母親だと。

 走り、母親にしがみつくと、叫び声と共に、体が浮いて、尻もちをついた。

 何が起きたか理解が出来なかった。

 顔をあげると、殺されそうなほど憎悪が籠った目があった。

「お、母さん……?」

「私はあんたの母親じゃないわ!!」

 そうだ、そうやって言われて突き飛ばされたことをエリーは思い出した。

「行きましょう、カナロフ様」

 母親はカナロフと呼んだ男に腕を絡め、その腕に愛おしそうに頬ずりをした。

 エリーには一瞥もくれず、二人は去って行った。

 ポタッとエリーの頬に雫が伝った。

 それはポタポタと降ってくる。

 周りの人が雨だと騒いで去っていく。

 しかし、エリーは地面から生えた蔦に、全身をからめとられているかのように動くことができなかった。指一本さえも動かせず、座ったまま雨に打たれた。

 どれくらい時間が経ったのだろう。

「エリー!?」

 ユーリスが穴の開いた傘を片手に駆けて来た。

 座り込んでいるエリーに声をかけるが、エリーは動かない。体を揺さぶっても焦点の合わない目をしたまま、座り込んでいる。

「フーヒフ!」

「コンラッド、とりあえずエリーの僕の診療所へ!」

 コンラッドに抱えられ、エリーはその場を離れた。

 ユーリスはエリーが座っていたところを見た。

 どこに彼女が座っていたのか分からないほど、濡れていた。


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