表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
魔女の追憶 番外編
59/120

07

 朝日が昇ろうとも帰ってこない。

 エリーは家を飛び出した。

「コンラッド!」

 珍しく昼間に歩いているコンラッドの姿を見つけ、声をかける。

「お母さんを知らない?」

 息を切らしているエリーの姿を見たコンラッドは何かあったのか、と拙い活舌で尋ねる。

「お母さんが帰ってこないの!」

 今まで帰りが遅くなることはあった。しかし、太陽が真上に来るまで帰ってこないことは一度もなかった。

「なに、どうしたの?」

 欠伸交じりな声に振り向くと、前に焼き菓子をくれた娼婦が家から顔を出していた。

「お母さんが帰ってこないの!」

「マリアが?」

 母親の名前にエリーは首を縦に振る。

「最近、身なりのいい男に指名されてて、今朝そいつと街の方へ出て行く姿を見たよ」

 エリーは街の方へ走り出した。

「エヒィ!?」

 コンラッドが後ろで叫ぶのが聞こえたが、エリーは足を止めることなく駆ける。

 綺麗な街へ行くには階段を駆け上がらねばならない。

 汚い場所から綺麗な場所へ続く、まるで天界へ向かう階段。

 エリーが階段を登りきると、身なりのいい人間たちが歩いている。

 彼らはエリーを巨大な虫を見るかのような目で見た。

「さっさと帰れ!」

 何かが飛んできて、エリーの頭に当たる。

 白い殻が割れて中からどろりとした物が垂れてくるが、エリーにはそれが何か分からなった。大して痛くもなかったので、エリーは気にせず走り出す。

 どれだけ走ったか。

 綺麗な街並みがどこまでも続く。

 しかしどれだけ綺麗でもエリーの心が動くことは無かった。

 しかしある姿を見た瞬間、その心が跳ねた。

「お母さんっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ