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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
わがまま令嬢とわがまま子息
52/120

07

 疲れ果てたのかマリーは早々に眠りについた。

 幼き主人の穏やかな顔を見て、アソラは小さく笑う。

 そして部屋を出て、向かった先は事務室だった。

 ノックをすると中から「どうぞ」と返答がある。

「失礼します」

 室内に入ると執事長のハロルドは定位置に座り、アソラを見て早々に口を開いた。

「どうだった」

「デューラの話によりますと、アンリ様の執事であるクゥロが屋敷をうろついていたそうです」

 ただ本当に迷子になっていた可能性もあるが、ハロルドからあの話を聞いた以上、何事も疑ってかからなくてはならなかった。小さな情報一つでも、漏らすことなく報告する。

「ボアズからも連絡が来た。屋敷周りをうろつく者が何人かいたと」

 二人は彼らのこの行為が下見であることを察していた。

「ふっ、堂々と屋敷を調べてくれるじゃないか」

 ハロルドの口角が珍しく上がる。

 ガラがこの部屋にいたら、その冷ややかな笑みに「かっこいいです!!」と叫んでいたことだろう。

「前回はマリー様の拉致が目的でした。次もそれが目的になるでしょうか」

「いや、違うな」

 ハロルドは即答した。

「何故そう言い切れますか?」

「此度のアード勲章の受章者が旦那様に決まったからだ」

 アード勲章とはタントッラ王国で十年に一度、国で最も功績を残した人物に送られる勲章である。それに選ばれた者は莫大な賞金と、十年という期間だけだが、国で王家に次ぐ権威を得る。ジョーダン家は先代であるマルリットの父親が一度アード勲章に選ばれた。そしてその賞金を足掛かりに彼は己の事業を拡大し、息子に譲った。

「あの事件の際はまだ受章者が決まっていなかった。だからマリー様を拉致し、もし受章が決まったとしてもおりるよう、脅しの材料としたかったのだろう」

 資産家の娘というだけで利用価値は山のようにあった。

「しかし今はもう旦那様で決まったから、そうなると」

「ああ」

 鋭い眼光がアソラを貫く。

「授章式を迎える前に受章者が仮に殺害でもされ、いなくなれば、それは次の受章者候補に受け継がれる」

 アソラは静かにハロルドの言葉を待った。

「次の受章者、スティーブン・オーランツに」

 その言葉を受け、アソラはあの日ハロルドに言われた言葉を思い出した。


『で、彼らの雇い主だが、我々もよく知っている、スティーブン・オーランツだ』


六章完。

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