05
マリーが眠りにつき、他の使用人たちも眠りにつく頃、屋敷の周りに四人の男がいた。
「三階の一番右端がジョーダン夫妻の部屋で、その一階下が娘の部屋だ」
全身を黒で包んだ男たちが、小声で屋敷の構造を確認している。
「国で有数の資産家といってもでっけぇ犬とか飼ってないんだな」
大柄のジェイガンが屋敷から見えない死角から顔を出す。
「おい馬鹿やめろ」
顔に傷があるサルコがジェイガンの髪を後ろから引っ張る。
「痛っ、てか、見張りとか誰もいなくね」
屋敷の周りは人一人おらず静まり返っている。
リーダー格となるターナーは違和感を覚えつつも、仕事を進めていく。
「俺らの目標は娘のマリー・ジョーダンの拉致だ。各自、それぞれの任務を遂行するように」
「了解」
その声で男たちは屋敷への侵入を始めた。
大柄のジェイガンとサルコが見張りなどを暗闇で襲う役目。
そしてターナーと一番若いショーンがマリーを拉致する役目。
それぞれの役目を担って移動したのだが、見張りがいないという思惑を外された四人は簡単に屋敷へ侵入した。屋敷の中は外と同じように静まり返っており、人が起きている気配がない。
「不用心過ぎですね」
ショーンが小さく呟くと、サルコがショーンの口を塞いだ。
「聞こえるか」
「ああ」
ショーンには聞こえないが、どうやらジェイガンとサルコには何かが聞こえているようだ。
そしてようやくその音がショーンにも聞こえた。
誰かが歩いて来る音だ。
長い廊下から誰かが来る。
「先に行く」
ターナーはショーンを連れ、階段の方へ走って行った。