01
「……アソラ」
今日も今日とてアソラを呼ぶが、その声量がいつもの比ではない程小さい。
「はい」
少し離れたところで呼ばれたのでアソラはすぐにマリーに近寄る。
天使のような愛らしい顔が、とても苦いお茶を飲んだような渋いことになっている。
「マリー様」
「……なによ」
「可愛らしいお顔が残念なことになっていますよ」
アソラが自分の顔を可愛らしいと言ってくれたことにマリーは一瞬ときめき、嬉しそうにアソラを見たが、しかしこの後のことを考え、また渋い顔になってしまった。
その一連の表情を見たアソラは、可愛らしい作戦は失敗だということを悟った。
「そんなに嫌ですか?」
マリーが顔を顰める原因が来るまで三十分をきった。
「嫌よ。あいつ煩いもの」
大きなため息がマリーから漏れる。
「体調が悪いって部屋に引き籠っていては駄目かしら」
「マリー様がそう仰るなら旦那様も無理は仰らないかと」
そう声をかけるがマリーは一分ほど考え、頭を左右に振った。
「いや、それはなんか負けた気がする」
何の勝ち負けなのか分からなかったが、アソラは「そうですか」と言った。
「早く帰ってくれることを祈るわ」




