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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢と侍女と客人
41/120

11

 外を見て動かないアソラの姿を見ているマリーは胸が苦しくなった。

 今日のあの目は、マリーではない何か別のものを見ていた。

 たまにアソラはその目をする。

 どうしたのかと尋ねても、何でもないと答える。本人さえも忘れてしまっていたアソラに根付いた古い記憶。それがたまに蘇るのだろう。

 そして今日はマヒルという存在がいた。

 アソラが接近した唯一の黒い髪の人間。

 きっと彼女とアソラのルーツは同じところだと思った。

 もう存在しない小さな国。

 百五十年前にタントッラ王国に攻め込み、王国を蹂躙したのち敗北した国。

 彼らはその後も細々とかの国で生きていた。そして先の戦争で完全に地図から名を消した国。

 それがアソラの祖先が生きた国。

「故郷か」

 マリーは部屋へ戻った。

 懐かしむ顔をしたアソラを見るのはつらかった。

 アソラは今のマリーの年齢のときは既に軍人だったと言っていたが、実際に何歳から軍人として生きてきたのか聞いたことがなかった。何年の間、彼女は故郷と呼べる場所で暮らしていたのだろう。幸せなときを過ごしてきたのだろう。

 もし、かの地に帰りたいと思ったら、とマリーはベッドに倒れこみ天を仰いだ。

「部屋に、縛り付けてしまおうかしら……」

 目を閉じる。

 暗闇の中で浮かんでくるのは今よりももっと表情が乏しく、血と火薬の匂いがしたアソラの姿。そんな彼女と初めて会ったのはマリーが三歳のときだった。


四章完。

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