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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢と侍女と客人
36/120

06

「あなた、何してるの。ハロルドに叱られるわよ」

「マフィリー様、お久しぶりでございます」

 マリーの言葉を無視し、マフィリーに話しかける。

 その光景を見たローザが遠くで目を丸くしていた。

「えっと、ロイド君だったかな、久しぶりだね」

 マフィリーは執事に話しかけられて機嫌を損なうどころか、笑顔で答えた。

「覚えていただき光栄です」

 ロイドが綺麗に一礼する。

「あぁ、君のような綺麗な男はね、嫌でも忘れられないよ」

「この顔に産んでくれた母親に感謝せねばなりませんね。ところで大変申し訳ございませんが、一つお伺いしてもよろしいでしょうか」

「なんだ」

 ある品へ視線を向け尋ねた。

「あちらは剣ですか? あまり見ぬ形ですが」

 それを見たマフィリーは「あぁ」と頷いた。

「あれは刀だ」

「刀ですか」

 マフィリーが鞘を抜くと、鈍い光がロイドの目を惹きつけた。

「これは片側でしか斬ることができない」

 部下に布切れの端と端を持たす。

「でも」

 その布切れを両断する。

「これだけ綺麗に斬ることができる」

 マフィリーがロイドの方へ向く。

「美しいだろう?」

 ロイドの頬が紅潮した。

 目からは今にも光が輝き出しそうだ。

 ハロルドを見つけたガラのような姿にマリーは距離を置く。

「素晴らしい! とても美しい!」

 ロイドはマフィリーへ近づき「触っても?」と尋ねる。

「いいとも」

 遠く後ろでローザが倒れた気がした。

 刀を持つロイドから「はぁ」と艶めかしい吐息が漏れる。

 その重み、手に馴染む柄の部分、己が映るほど磨き上げられた刀身、それをおさめる鞘。

 そのすべてがロイドを魅了する。

「あぁ、美しい……」

 手放せなくなったロイドはマルリットを見る。

「旦那様」

「なんだ?」

「給料前借可能ですか?」

 マルリットは笑って「可能だ」と言った。

 ロイドはまるで少年のように「ありがとうございます!」と笑った。

 ロイドは美しいものが何よりも好きだ。

 ちなみに美しいから自分も好きである。


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