06
「あなた、何してるの。ハロルドに叱られるわよ」
「マフィリー様、お久しぶりでございます」
マリーの言葉を無視し、マフィリーに話しかける。
その光景を見たローザが遠くで目を丸くしていた。
「えっと、ロイド君だったかな、久しぶりだね」
マフィリーは執事に話しかけられて機嫌を損なうどころか、笑顔で答えた。
「覚えていただき光栄です」
ロイドが綺麗に一礼する。
「あぁ、君のような綺麗な男はね、嫌でも忘れられないよ」
「この顔に産んでくれた母親に感謝せねばなりませんね。ところで大変申し訳ございませんが、一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「なんだ」
ある品へ視線を向け尋ねた。
「あちらは剣ですか? あまり見ぬ形ですが」
それを見たマフィリーは「あぁ」と頷いた。
「あれは刀だ」
「刀ですか」
マフィリーが鞘を抜くと、鈍い光がロイドの目を惹きつけた。
「これは片側でしか斬ることができない」
部下に布切れの端と端を持たす。
「でも」
その布切れを両断する。
「これだけ綺麗に斬ることができる」
マフィリーがロイドの方へ向く。
「美しいだろう?」
ロイドの頬が紅潮した。
目からは今にも光が輝き出しそうだ。
ハロルドを見つけたガラのような姿にマリーは距離を置く。
「素晴らしい! とても美しい!」
ロイドはマフィリーへ近づき「触っても?」と尋ねる。
「いいとも」
遠く後ろでローザが倒れた気がした。
刀を持つロイドから「はぁ」と艶めかしい吐息が漏れる。
その重み、手に馴染む柄の部分、己が映るほど磨き上げられた刀身、それをおさめる鞘。
そのすべてがロイドを魅了する。
「あぁ、美しい……」
手放せなくなったロイドはマルリットを見る。
「旦那様」
「なんだ?」
「給料前借可能ですか?」
マルリットは笑って「可能だ」と言った。
ロイドはまるで少年のように「ありがとうございます!」と笑った。
ロイドは美しいものが何よりも好きだ。
ちなみに美しいから自分も好きである。




