表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢と侍女と客人
34/120

04

 マフィリーの部下とジョーダン家の執事の手により、大広間は展覧会へと姿を変えた。

「わぁっ!」

 煌びやかなドレス、光り輝く宝石、美しい装飾がされた食器、伝統ある工芸品、見るものを惹きつける絵画、それらすべてを見てマリーは目を輝かせた。

 マリーだけではない、奥方のベルベッドも、そして侍女たちも、そこにいる女性たちがその光景に心を奪われた。

「ほぉ、確かに今年は多いね」

 マルリットはその光景を見て感嘆の息を漏らした。

 娘はさっそく商品を手にし、その輝きに目を奪われている。

「ああ、今年は闇市の方に品が流れていたからな」

 闇市とは奥深い路地裏やスラムなど、普通の人が寄り付かないところで開かれている市場のことである。そこで売買されている物は大半が偽物なうえ、高額で売られているので普通の民間人は寄り付かない。しかし、たまに本物が紛れ込んでいる。だからこそ、マフィリーは足を運ぶのをやめることができない。

「とはいえ、これだけの量がその闇市だけで購入できるものかい?」

「マヒルが私たちの知らない闇市を教えてくれたんだ」

 部屋の隅で静かに立っているマヒルを見る。

 髪は肩にかかる位置で真横に切られ、縛っていない為、アソラよりも黒い髪が目立つ。

 そのせいで使用人たちも近寄らないように迂回しながら仕事をしていた。

「彼女の素性は?」

 兄の言葉に弟は首を左右に振った。

「すべては分からないさ」

 初めて会ったとき、彼女はスラリス王国のスラム街で倒れていた。

 骨と皮だけのその腕を見て、マフィリーは飢えで死んでいると思ったほどだ。

 しかし辛うじて生きていたので、彼は彼女に食事を与えた。するとそのお礼にと、マフィリーの目的であった闇市の場所を教えた。それも何か所も。

「彼女のことで分かっているのは戦争で視力を失ったことと、あとは」

「ねぇ、お父様!」

 弟の言葉を娘が遮った。

「これはなにかしら?」

 遠くでマリーが尋ねる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ