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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢と侍女と客人
33/120

03

「叔父様!」

 マリーがジョーダン家に到着したマフィリーを歓迎する。

「おぉ、マリー! また綺麗になったな」

 マフィリーは被っていた帽子をローザに手渡し、そのままマリーを持ち上げた。

「んもぅ、叔父様、私もう立派なレディですのよ」

 困りつつも嬉しそうに言う姪を見て、マフィリーは目を細めて笑った。

 その顔は兄であるマルリットとよく似ていた。

「そうだな、もうマリーは立派なレディだな」

 マリーを下ろし、マフィリーは「嬉しいような寂しいような」と呟いた。

 そして階段を降りて来た男を見た途端、真剣な顔つきになった。

「やぁ、よく来たね、マフィリー」

「兄さん」

 二人は握手を交わす。そして離す際にマルリットはマフィリーの肩を抱き、「元気そうでよかった」と言った。

「……兄さんもお元気そうで何よりだ」

 挨拶を交わす兄弟に外から大きな音が聞こえた。

「今日はいつもよりも量が多いんだ。皆に喜ばれる品があればいいのだけれど」

 マルリットから体を離し、外へ出ようとすると外から声をかけてくる者がいた。

「マフィリー様」

「あぁ、マヒル」

 マヒルと呼ばれた女性を見て、マルリットとマリーは笑顔を消し、執事侍女たちの何人かは青ざめた。

 カラスを彷彿させる髪の色のマヒルは、彼らに視線を合わせることもなくマフィリーに荷物の搬送が終えたことを伝えた。

「ああ、ありがとう。マヒル」

 穏やかな顔で返事をする弟に兄が声をかけた。

「マフィリー、彼女は?」

 去年来たときにはいなかった女性。

 一度見たら忘れることはない、その容姿。

「あぁ、彼女はマヒル。スラリス王国へ行ったときに雇ったんだ」

「初めまして、マヒルと申します」

 彼女とマルリットの視線が合わない。いや、マルリットだけではない。この場にいる誰とも視線が合わない。

 マルリットが「あぁ」と呟いてから柔らかい声音で尋ねた。

「失礼ですが、その目は昔から?」

「いえ、戦争で」

 マヒルは小さく微笑みながら答えた。

「全く見えないわけではないのです。濃い色とかは見えたりしますし、ただ人を認識するのは難しいのでご迷惑をおかけします」

 一礼をし、彼女は躊躇いなく外へ戻って行った。


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