表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
わがまま令嬢とその侍女
3/120

03

 マリーはアソラをすぐに呼ぶ。

 呼べば絶対来てくれるという自信が彼女にはある。

「ほら、来た」

 アソラの足音が聞こえて振り返ると、いつものように表情を変えないアソラがいた。

「なんで走らないの。私が呼んでいるのよ?」

 頬を膨らませて言うと、アソラは首を傾げた。

「お急ぎの用件ではないのでしょう」

 マリーの眉間に皺が寄る。

「どうしてわかるの?」

「呼ばれる声でわかりますよ」

 その言葉でマリーは目を輝かせた。

「そんなことが分かるの!?」

「はい」

 マリーは嬉しくなってアソラの周りを走り回った。

「アソラは私のことなんでもわかるのねっ」

「いや、なんでもかは分かりかねますが」

 その声は聞こえなかったようで、マリーは頬を紅潮させて飛び跳ねていた。

「マリー様、あまり飛び跳ねますと足をくじかれてしまいますよ」

 ヒールの高い靴を履いていたマリーを心配し、声をかけると、マリーはぴたりと飛び跳ねるのをやめた。そしてアソラの前に立った。

 しかし何も言うことはなく、ただアソラの顔を見上げている。

「ところで、ご用件は?」

 しびれを切らしてアソラが尋ねると、マリーは首を左右に振った。

 その際に柔らかい髪の毛がふわりと揺れる。

「ないわ」

「……用は無いと?」

「ええ、そうよ。ただ呼びたかっただけよ」

 ただ呼びたいだけで、あれだけの声を吐き出すのは疲れないのだろうか。

「だって、アソラは呼んだら絶対来てくれるでしょう?」

 その表情は自信に満ち溢れていた。

「それが仕事ですから」

 人によっては仕方がなく来ている、ともとれる言葉を聞き、マリーは満足そうに頷いた。

「そうよ。アソラは私に呼ばれたら来る。それが、仕事なの」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ