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「お友達、逃げちゃったわね」
少女が男に近づく。
「あんなやつ友達、なんかじゃねぇよ」
「素直じゃないのね。言いたいことはちゃんと口にしなきゃダメよ」
「あ?」
目の前に来た少女は、ハンカチで口元を押さえた。
「だってどの会話が最期になるのか、分からないのよ?」
男目掛けてスプレーから煙が放たれる。
男はそのまま眠気に襲われ、路地裏に倒れる。
霞ゆく視界に、とても高そうな綺麗な靴が映る。
「まぁ、もう遅いのだけれどね」
瞼が閉じる。
「あなたが望む殺し方で殺してあげるわ」
その声は彼に届いたかどうか、マリーは知る由もない。
「逃げた男はよろしいでしょうか」
闇の中から背の高い男が出てくる。
「あぁ、いいのよ、多分この辺りに近寄ることもないでしょう」
男は倒れている男を回収する。
そして車のトランクに放り込んだ。
「じゃあ、ハロルド。あとは任せたわよ」
ハロルドは見惚れるような動作で一礼をした。




