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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
令嬢と侍女と新人
28/120

08

「殺してやる、殺してやる、あの女、絶対絶対絶対」

 鼻血で顔面を汚した男と投げ飛ばされた男は路地裏を行く。

「とりあえず落ち着け。気味が悪いぞお前」

 狂ったように同じことを繰り返す腐れ縁の友に悪態をつく。しかしそれも聞こえてないようで、返事はない。

「絶対殺す、絶対絶対、殺す。許さねぇ」

「ねぇ、誰を殺すの?」

 路地裏にふさわしくない可愛らしい声が聞こえた。

 男二人が振り返るとそこにはローブで顔を隠した少女がいた。

「ねぇ、誰を殺すの?」

 再度問われて、気が狂った男は「メイドだ」と答えた。

「メイド?」

「そうだ、この近くの屋敷のメイドだろ。俺を殴りやがって、絶対許さねぇ」

 男が握り締めた拳から血が流れる。

「ふぅん、どうやって殺すの?」

「あ? とりあえず見つけたら拉致って誰も来ないとこで、ゆっくりゆっくり痛みつけて、泣いて許しを請うまで痛みつけて、そして殺してやる」

「ふぅん、具体的にはどうやって?」

 投げ飛ばされた男は、嫌な汗が背中を伝うのを感じた。

 目の前に立つのはただの少女だ。

 それは間違いないのに、どうしようもない嫌な気持ちになる。

 早くこの場を立ち去りたい。

 ここに、いられない。

「おい、行こうぜ!」

 連れに声をかけるが、そいつはその声も聞こえないのか、どうやって殺すのかという問いに律義に答えている。それしか頭に無いようだ。

 最後まで聞いた少女は、視線を移した。

「ねぇ、あなた」

「っ」

 少女の綺麗な唇が見えた。

「逃げたければ逃げても、いいのよ?」

 その綺麗な唇はにっこりと吊り上がった。

 その瞬間、走り出した。

 連れと少女に背を向けて。

 途中ゴミ箱や何かに突っ込んだ。

 それも気にせず、息が切れるまで、足が鉛のように重くなるまで、己の限界の限り走り抜けた。


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