05
アソラが立ち去った後、ガチャリと扉が開く音がした。
「ガラ、そんなに騒いでどうしたのだ」
中からその部屋の主であるハロルドが出て来る。
「ハ、ハ、ハロルド様!?」
ガラが驚きのあまり後ろに跳ぶと、そのはずみで少し床が揺れる。
「ここでは執事長と呼ぶようにと伝えただろう」
「し、執事長!」
ピシッと綺麗な敬礼をするガラにハロルドは目元を押さえた。
「ガラ、ここは警察ではないぞ」
「も、申し訳ございません!」
敬礼をやめた部下を見てハロルドは首を傾げる。
「で、こんなところでどうしたのだ」
「ぅあっ」
言葉に詰まるガラに「深呼吸」とハロルドが言うと、ガラは大きな深呼吸を繰り返し、少しだけ落ち着きを取り戻した。少しだけだが。
「え、っと、執事長は、最近お休みをとられておりますでしょうか?」
その言葉にハロルドは「ふむ」と呟き、勤務日数を脳内で数える。
「そう言われると、あまりとっていないな。そんなにひどい顔をしているか?」
「い、いえ! 執事長はいつでも男らしいとても素晴らしいご尊顔でございます!」
マリー並の声量でガラは否定する。
下の階にいたエリーはその言葉に顔を顰めた。
「ただ、その、厚かましいとは思いますが……心配でして……」
先程の声量とは打って変わって、今にも消えてしまいそうな声でガラは言う。
それを見たハロルドはガラの頭を撫でる。
「ぅえっ!?」
奇声が上がるが、ハロルドはやめない。
「大丈夫だ。私が頑丈なことは君がよく知っているだろう?」
「あ、はい」
「ただ、部下に心配をかけるのは上司として失格だな。近々休みをとるようにする。心配してくれてありがとう、ガラ」
鋭い眼が少しだけ柔らかみを帯びる。
それを見たガラは感動に震え、「はい!!!!」と馬鹿でかい声を発した。




