13
「アソラァァァァッ」
今日も今日とてマリーの声が屋敷全体に響き渡る。
そして今日も今日とてアソラがマリーの元へ駆けつける。
「どうされました?」
「あのねアソラ、街へ買い物に出かけたいの。一緒に来てくれる?」
アソラの手を握り、マリーがお願いをする。
「ええ、構いませんが何を買われるのですか?」
「夜寝るとき着る服が欲しいの」
マリーがアソラを引っ張りながら玄関ホールへ向かう。
玄関を抜けると、爽やかな風が吹く。
マリーはアソラの手を離して、自分の帽子を手で押さえながら走った。
そしてしばらく駆けた先で振り返り、手を大きく振る。
「アソラ! 置いていくわよ!」
アソラは置いていくと言いつつ待っていてくれる小さな主人の元へ歩く。
「アソラ!」
「はい、なんでしょう」
二人の距離は徐々に縮まる。
「呼んだだけよ」
嬉しそうに笑う顔が近づき、アソラはマリーの真横に立った。
「マリー様」
アソラが名を呼ぶと、マリーは不思議そうに首を傾げた。
「なぁに? どうしたの?」
その天使のような顔を見て、アソラは笑った。
「呼んでみただけです」
マリーは大きな目をさらに大きくした。
中の瞳が零れて落ちそうだ。
そしてつばの広い帽子を真っ赤になった顔が見えないように隠して叫んだ。
「そ、それは卑怯よ!!」
一章完。




