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09

 眠った姿のアソラを見たのは生まれた初めてだとマリーは思った。

 いつも眠った姿を見せるのは自分だった。

 いつ目覚めるのか分からない人を見るのが、こんなにも苦しいものだということも初めて知った。

 一日、一時間、一分、一秒がこんなにも長い。

 説明が下手な教師の退屈な授業よりも長い。

 マリーはアソラの胸に耳を当てた。

 そこからは今にも消えそうな音が聞こえた。

 この音が聞こえる限り、アソラは死ぬことはない。

 死んだように眠るアソラが生きている唯一の証。

「ねぇ、アソラ」

 呼びかけても返事はない。

「あなたにはいつもこんな思いをさせていたのね」

 目を開けると、いつもそこにはアソラがいた。霞む視界の中にいる侍女はマリーを見て、どれだけ安堵した顔をしていたのか。

「ごめんなさい」

 耳を当てたままマリーは涙をこぼした。

「もう、あなたを苦しませたりしないわ」


 だから、お願いよ。

 目を開けて。

 アソラ。


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