08
「アソラァァァッ」
上から落ちるマリーが叫ぶ。
「はい、ここに」
そう言って両手を広げたアソラに包み込まれる形で二人は地面に倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
半分飛び降りる勢いでニウは大地に足を着けた。そのとき足に鈍い痛みが走ったが、そんなことを気にしている余裕はない。動かない二人に近づく。
すると。
「ふっ」
アソラに覆いかぶさるマリーの背中が小刻みに動いた。
「ふっ、あは、あははははっ!」
アソラの上でマリーは笑い出した。
「あははっ! 高いところから飛び降りるなんて人生で初めて! 凄いわっ」
「もう一度やりたいなんて言わないでくださいよ」
マリーに押しつぶされたままアソラが苦笑する。
「どうして? アソラなら絶対に受け止めてくれるでしょう?」
「駄目ですよ、ほら」
アソラの視線の先をマリーも見る。
そこには青ざめて、涙目になっているニウがいた。
「あっ」
マリーは目を丸くした後、嬉しそうに細めて、アソラの胸に頬をつけ目を閉じた。
「……そうね、もうあんなことはしないわ」
トクトクと心地の良いリズムがマリーの耳に届く。
どんな高級な楽器で奏でられる素晴らしい演奏よりも、美しく愛おしい音。
マリーは「大丈夫よ」と言った。
「私はね、死なないわ」




