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屋敷の裏に生えている大きな木の下で盗聴する男が一人。
ちょうどそこは屋敷からの死角になっているので、男は屋敷に気をとめず座りながら盗聴器に集中していた。そして盗聴から、全員がマリーを誘拐するどころかマリーの部屋まで辿り着けなかったことを把握し、大きく舌打ちした。
「役に立たねぇ野郎どもだったぜ」
特にターナー。
軍人であったからこそ期待したのに、死にたがりだったとは予想もしていなかった。
どうやって主人に報告しようか悩んでいると「ねぇ」と背後から声が聞こえると同時に、喉元に月明かりを反射して輝く刃物があてがわれた。
男の喉が鳴る。
いくら盗聴の方に集中していたとはいえ、こんな簡単に背後を取られることは今まで一度もなかった。
「なにをしているの? かくれんぼかしら」
その声は少女の高い声だった。
鳥が囀るような可愛らしい声。
このナイフさえなければ、一曲歌ってみてよと軽口を叩いてみたいくらいだ。
「あの人たちはあなたの仲間?」
ナイフがさらに喉元へ近づく。
そのとき男は本気だということを悟った。
「い、いや、違う」
「そうなの? 仲間じゃないの?」
両手を上げて無害であることを証明する。
「ああ、そうだ」
「そうなの……じゃあ、あなたはアソラを奪いに来たのね」




