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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
侍女たちの本業
103/120

05

「はぁ、そうかい。できれば殺さないでくれよ」

「殺したりはしないさ」

 背後から第三者の声が聞こえ、フィーノが驚き振り返るとそこには眼光が鋭い執事が立っていた。

「ハロルド様!」

 ワントーン高くなった声がガラの口から発せられる。

「ガラ」

「あ、執事長! 見回りですか?」

 先程までの鬼神のようなオーラは消え、見えない尻尾が勢いよく振られるその姿はまるで忠犬のようだ。

「あぁ、野良犬が一匹入りこんだようでな」

「それって、俺のことではないよな?」

 フィーノが尋ねるとハロルドは「あぁ」と肯定した。

「一度()()()()犬は野良ではないからな」

「……そうかい」

「ガラ、この者を連れて来なさい」

 見えない尻尾を振ったガラは「はい!」と年相応な元気な返事をした。

「ハロルド、ね」

 フィーノが言うと、隣でその呟きを聞いたガラが凄まじい勢いでフィーノの方へ顔を向けた。

「ハロルド様だ!」

「お前、あのハロルド、様をどう思ってるの?」

 そう尋ねると彼は目を輝かせて、滔々とハロルドの素晴らしさを語り出した。

「というわけで、とても素晴らしい人なのだ!」

 永遠とも思えるその話を聞き終えて、フィーノは話の振りを間違えたと思った。

「お前もそう思うだろう!?」

「あー、そうねぇ」

 前を歩く姿勢の良い老執事。

 その姿がとある男と重なる。

 今から二十年前。

 背の高い、眼光が鋭いあの男は目の前に広がる多くの死体を眺めていた。

 あのとき、部隊長は多くの部下の死をどう思っていたのだろか。

「素晴らしい人、ねぇ」


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