02
「うぅむ、もう少し落ちるかと思ったのだがな」
双眼鏡で庭を見下ろしながらボアズは唸った。
「想像よりも襲撃数が多いな。まぁでもあの動きを見ると、そこら辺のごろつきを集めただけのようだが」
次はもう少し数を増やしてみようか、と眺めているとザザッとノイズが走る音が聞こえた。
「デューラか」
『裏も……多い……』
無線機からデューラのため息交じりの声が聞こえて来た。
「数が多い方が、撃ち甲斐があるだろう」
『……楽しい』
パンッと発砲音が向こうから聞こえ、ボアズは「楽しそうでなによりだ」と笑った。
デューラは裏庭の巨大な木の上でスコープ越しに侵入者を見る。
そして迷いなく引き金を引く。それを淡々と素早くこなしていく。
殺しの許可は出ていないので、肩や腕、足など致命傷とならない所を狙っていく。撃たれたごろつきたちは、その痛みに呻き、地に足をつける。
「おいっ」
「馬鹿! 近づくな!」
近づこうとした男の右腕に激痛が走る。
「がぁっ」
「隠れろ!」
騒ぐごろつきたちを見下ろすデューラ。
いつも見苦しいと言われている前髪は十本のピンにより止められ、猫のような目が標的を見つめる。
百発百中。
無駄な弾は一つもない。
暫く経つと、どのような場所でも狙撃されると気づいたごろつきたちは裏から逃げていってしまい、デューラはスコープを覗くのを止めた。
「……つまんない」
ため息をつき、終了の連絡を入れようとした瞬間、デューラの視界の隅に影が過った。
普段から想像のつかない速さでスコープを覗く。
男が一人走っている。
足を狙って発砲するが、近くの窓に飛び込み、男の侵入を許してしまった。
「ちっ」
思わず舌打ちする。
「デューラ」
『どうした』
「一人……侵入を許した」
『そうか』
「……足かすったから、無傷ではない」
命中とはいかなかったが、弾が無駄にならずに済んでよかった、と思った。
『まぁ、中は彼らが何とかする。お疲れ様』
無線が切れる。
デューラは割れた窓を眺めながら前髪を止めているピンを外していく。
「……わがままボンボン」
いつも通りのデューラは欠伸をした。




