第十一話 EX
「主任……私、悔しいです」
晃を激励し、送り出した後の森川さんは唇を噛み、オペレーションルームから研究所の篝火に通話をかける。
「悩める不安定な少年少女に最前線任せっきりな現実が、かな?」
森川さんと長い付き合いのある篝火は、そんな内心を全て見透かしていた。
「この一戦は重要なオペレーションであり、その成否が今後の我々の立ち回りに大きく影響を与える。まァー不安だよね、高校生二人に背負わせンのはサ」
「これが大人のやる事ですか……!言葉だけじゃあの子達を救えない!」
「そうは言うがねェ……ン?」
森川さんの想いに応えられない気まずさで、まるで子供のように椅子に乗ったままくるくると回る篝火。
その時、ふと研究所の隅に転がっている大きめのトランクケースが目に入った。
「使えるか?対晶獣は想定してないが……いや、しかし奴らの認識していないカードではある……」
「……主任?」
声色が変わり、ぶつぶつと呟き始める篝火。
真面目な雰囲気を纏い出した篝火に、森川さんは不安と変化の兆しを感じる。
「恵くン、キミにその意志があるのなら質問が二つある。一つ目はキミのギンギンな愛車、今調子いいかい?
「え?そりゃもう。いつもメンテは万全ですからね」
「そりゃ結構。では二つ目……これは質問というより、JRICC主任研究者としての依頼と言ってもいい」
「今一度、『プロトタイプ』を装備してはくれないか?」




