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鉄拳の騎士  作者: sui
第六話 水面に石は投げられた
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第六話 3

「「殉教者達?」」


「はい、今イチバンアツい劇物です」


 時間は少し遡り、嘉地鬨高校の放課後。

晃と麗華が早々に学校を去った後、誰もいなくなった三組の教室に宏と賢治、そして亜由美の三人が集まっていた。


「なんだヨそいつら有名人?晃達と関係あんの?」


「宏知らんの?ネットでたまーに話題になってる、タチの悪いカルトだか半グレだかの怪しい集まりだよ」


「世の中とか人生に絶望した人が集まって、まあ……陰謀論とか世直し論とかを語る、そんな感じのアレですね、はい」


「……それあんま触れない方がいいやつジャネ?」


「そうですね。彼らはシルバーセキュリティーに目をつけられる程度には危険視されていて、基本的に裏インターネットを使って活動しています。だからIPアドレスとプロフィールを偽装したアカウントを使って潜入してたんですけど……残念ながら実態はお遊びグループの域を出ませんでした」


「さらっと何やってんの水島氏……」


「趣味ワリー……」


 自らの好奇心の為なら危険な行動でも平然と行い、悪びれる様子は一切ない。

はぐれ者ながらも常識的な感性を持つ宏と賢治は、そんな亜由美の言動に絶句する。


「……三日前までは!」


 期待外れだった殉教者達の様子を淡々と話していた様子から一変。

喜びと好奇心に満ち溢れた表情で、スマートフォンの画面を二人に見せる。


「おまっ……これ……!?」


「宏のポケットから出てきたやつと同じだ……!」


 画面には殉教者達に所属する、どこにでも居そうな冴えない青年が映されている。しかしその手には青い剣晶を包んだソードホルダーが握られていた。


「詳しい事はまだ書かれていませんが、彼は『人類を導く超存在の遣いから譲り受けた』と語っています。ええと、そっちの……ヤザワくん、あなたもそうだったんです?」


「ヤザワじゃねーヨ!風間な!」


「一ミリも宏本人に興味持たれてないのがわかって悲しいね……」


「……これシルバーセキュリティーのオッサンらにも聞かれたんだけどヨ、オレっちのはいつのまにかポケットに入ってたんだよ」


「じゃあ、彼の言う超存在的な人に入れられる機会があったってコト!?どんな人でした!?」


「いや全然心当たりねーし……身体ぶつかったり触れたどさくさで滑り込ませたんじゃネーノ?そんな変な奴……」


 宏は朧げになっているその日の記憶を遡り、自分にソードホルダーを仕込んだ人間の心当たりを検討する。


「……いや、まさかな。たぶんガッコ行く時の電車ん中か、ゲーセンがチョーマンで人ギチギチだったからそん時だろ。怪しい奴は見てネーヨ」


「なるほどなるほど?つまりヤザワくんのケースと彼のケース、どちらも人為的にこれを持たせた事になりますね、何も知らない相手に……」


「じゃ、じゃあつまりこの写真の人も……」


「オレっちみたいな目に合うってことかヨ!?」


 宏と賢治はわくわくハウスで起きた事故と、自分達が受けた苦痛と思い出しお互いに青くなった顔を見合わせる。


「なにより厄介なのは、彼らがわくわくハウスの一件と現れた怪人、そしてこの道具の関連性に感づいているってコトです。彼らは嘉地鬨市に昔からある怪人の噂と今回の件を結びつけて、何か都合のいい特別な存在だと思い込んでます」


「それヤベージャン!あれはそんな良いモンじゃねーんだ!なんか良くないモンなんだって!!」


 実際に身体でソードホルダーの被害を受け、生命エネルギーを奪われた宏は、晶獣が人類と相入れないものであることを本能的に理解していた。


「人為的に起こして、何かをしようとしているのは確かですね。彼らの秘密集会で、今夜」


「……水島氏?今なんと?」


「今夜、彼らが集まってこれを起動します。シルバーセキュリティーが嗅ぎつけ、阻止する前にね。つまり事が起きたそこには……」


「例の鎧が……たぶん中身やってる晃が来るってワケかヨォ!?」


 昼休みの会話では言わなかったが、実は宏は緑の鎧の中身が晃である事に感づいていた。

生命エネルギーと共に晶獣に閉じ込められた意識の中、ぼんやりとした意識で聞いた晃の声を覚えていた。


「ビンゴ!私の読み通りならきっと羽黒さんも来ます。ここに潜り込めば色んな秘密の正体をひとまとめに知れるってコト!」


 事態のまずさを理解する二人と対照的に、怖いもの知らずの亜由美は嬉しそうに話を続ける。


「いややばいって水島氏!危ないよ!」


「ワケわかんねーカルトの中に飛び込むってだけでもアブネーのヨ!?女に優しいイケメン的にはそれほっとけないって!」


 ソードホルダーの危険性を身に染みて知っている二人は、亜由美の行動を肯定できない。

たがこれで晃の隠している事を知れるという誘惑が頭の中にあり、強く静止しきれない。


「じゃあ……一緒に来て守ってくれます?二人も気になってるでしょ、芽吹さんの秘密」


「「うっ」」


 そんな内心を亜由美に見透かされた二人から、退路が断たれた。




 殉教者達の性質、そしてソードホルダーを手に入れた構成員がいるという話を聞いた晃と麗華。

しかしそこから先、シルバーセキュリティーが未だ踏み込めていない裏インターネットの先にある情報までは掴めず、収穫のないままその日の会議を終えて帰宅した。


 時刻は午後11時。

食事も風呂も終え、眠ろうとしていた晃のスマートフォンから着信音が鳴る。


「はあいもしもしい?夜中に電話してくんじゃねえよ蛇が出んぞ……」


「……芽吹くん!今から迎えに行くわ!!すぐに準備して!!」


 通話相手の麗華の声には焦りが見て、後ろで慌ただしく複数の人間が動く音が聞こえる。


「はあ?寝ぼけてんのかお前?明日にしろや……」


 既に頭が半分寝ていた晃にはこの時間に麗華から連絡が来る事の意味が理解できず、欠伸混じりの寝ぼけた声を返す。


「殉教者達が、動き出したのよ!!

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