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6話

「ふぁ~ん。…あ…ごめんなさい。」


私はヤシの実がたくさん積まれた荷車の端っこで、大あくびをしてしまった。

それを家臣のギュレンに見られてしまい、小さく誤った。

そんな私をギュレンは目の端でチラッとみて、厳しい表情のまま、また前を向いた。


(気を悪くしたのかな?)


いつもラキュアがしている仕事に名乗りを上げたのは私なのに、出発して早々に大あくび。

仕事をなめていると思われたかも知れない。


ギュレンは軍人。

ラキュアと同じ位の年で、体つきもしっかりとしている。

服から覗く腕は黒くて筋肉が幾つも盛り上がっていて、腰には剣を差している。

私はこの国に来て、初めて軍人をみた。

ラキュアはあの村に向かう時に、護衛を付けることは少ない。

今回からは女の私がヤシの実を届ける係りになったので、道中何かあってはいけないと、警護の意味も込めて、ギュレンを同行者に選んでいた。


私が乗っている荷車をひくラクダを操るのは、いつもラキュアと村に向かっている家臣。

後ろに続く荷車2台を操るのもいつものメンバーで、ギュレンだけが新しく加わっていた。


「ギュレン様。少し緊張されていますね。」

ラクダを操っている家臣が振り返り、ギュレンにそう言うとギュレンは少しだけ俯いた。

なんだか、バツが悪そうなそんな反応だった。

「ギュレン様は初めて向かう場所ですもんね。」

(あれ?もしかして…。)

「ギュレンさんは、人見知りですか?」

そう聞いた私の方をギュレンはチラッと見て、すこし恥ずかしそうに顔を背けた。

(意外と…ナイーブなのかな?)

でもそう思うと、厳しい表情のギュレンが少し可愛く思えた。

「私も、人見知りなんです。初めての場所って緊張しますよね。分かります。」

「…いえ…。」

ギュレンが小さく答えた。

私はそんなギュレンに少し気を許して、ついあくびの言い訳してしまった。

「私、昨日遅くまで起きてしまってて…でも、ちゃんとラキュア王子の仕事をお手伝いしますので、よろしくお願いします。」

私が頭を下げるとギュレンが同じ様に頭を下げてくれた。

(良かった。)

私はほっと胸を撫で下ろした。

ギュレンは口数は少ないけど、私とも向き合ってくれそうだと感じた。


村に着くと私と家臣たちはいつものように荷車からヤシの実をおろして、村人に配る作業を開始した。

まだ、緊張の面持ちをしたギュレンは相変わらず険しい表情。

そんなギュレンに村人たちは警戒して、様子を伺っている。

(これでは、ギュレンが勘違いされちゃう。)

私は村人たちにギュレンを受け入れてほしくて、ギュレンにヤシの実を一人一人に配る事をお願いした。

(きっと、これから毎日接していれば、ギュレンが不器用なだけだって、分かってもらえるはず。)

私はそう考えていた。


「私は倉庫にヤシの実を運びますね。」

「いや、そんな力仕事は軍人の私が。」

「いえ、ギュレンさんは村の人たちに声を掛けて上げて下さい。ラキュア王子がいつもしていたように、しっかりと水分補給をするようにと。」

「しかし…。」

ギュレンが何か口ごもっていたけれど、私はギュレンに任せ、倉庫での作業に向かった。


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