表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

9話

「ちょっと!さっきから何度も何度もノックしてるのに!居るんならさっさと出てきなさいよ!」

部屋の扉を開けた瞬間、眼前にティアラの怒った顔があった。

私は彼女の勢いに思わず、のけぞってしまった。

「ごめんなさい。気づくのが遅くなってしまって。」

「まあ、いいわ。それよりも、あなたに聞きたいことがあるんだけど。」

憤然とした態度のティアラが、可愛らしい唇を尖らせている。

「聞きたいこと?」

「ラキュアの事よ。」

そう言うティアラの表情が曇る。

「あなた、ラキュアとどういう関係なの。」

「え?」

思いもよらない問いかけに、思わず間の抜けた声が出た。

「あなた、ギュレンを同行させたらしいじゃない。どういう事なの?」

「それは、ラキュア様が何かあってはいけないと…。」

「だから!なんであなたがそこまでラキュアに心配されるのよ!」

ティアラが顔を赤くして私に迫る。

その時、私は気付いてしまった。

ティアラの綺麗な瞳から、溢れそうな雫の存在を。

そして、その雫はまるで宝石のような輝きを放ちながら、シルクのような滑らかなティアラの頬をポロポロと滑り落ちていく。

「あなたが現れてからラキュアはおかしいわ!私の事よりあなたを優先してる!どうしてよ!」

そう言うとティアラは顔を両手で覆いながら、肩を震わせ泣き出した。

そんな切なさに震えるティアラは今まで私が感じたことのない美しさに溢れていた。

それはきっと純真なティアラの心がそうさせるのだ。


魔女の私には相応しくないものを、目の前のティアラは持っている。

湿っぽい森のなかで、人を殺めるための毒薬を作っていた私には得られないもの。


ひたすらに、ラキュアを愛する心。

そんなティアラの純粋な気持ちが、私の中の琴線に触れた。


沸々と沸き上がる、ラキュアへの苛立ち。

こんなにも素敵な感情を持ったティアラを、ラキュアはなぜ悲しませるのか。

私はぎゅっと、両手を握りしめた。


「ティアラ!行こう!」


「えっ?」


驚きの表情を浮かべたティアラの右手を引っ張り、私は自分の部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この先どうなるか楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ