7話
私が次に目覚めた時、また元の位置に戻っていた。
私の後ろには、こんな砂漠の村になぜか生えている、緑の巨木がある。
私の頬をかすめていく風を感じて、目を開ける。
「大丈夫ですか?…。」
「長老様。」
私はゆっくりと姿勢をただした。
「ここはよく眠れてしまうでしょう?。」
「ええ。」
この木の下は心地のよい風が吹いている。
「しかしここで眠るのは危険です。気をつけてくださいね。」
(そのセリフ、どこかで聞いた…。)
私は記憶の糸を探り、今しがた出会ったはずの美しい金髪の女性を思い出した。
(私は湖にいて、底が抜けて、…。)
「この木は不思議な力を宿しています。ここへ来る者を眠りへと誘い、魔獣を呼び寄せる。」
長老様はあの女性と同じことを言う。
「魔獣と言うのは?」
「狼の頭に人間のような手足を持ちます。」
「それって…狼男?ですか?」
昔、魔女学校で習ったことがある。
狼男は俊敏な動きと強大な力、そして賢い頭で魔獣のトップに君臨する。
また慈悲深い心を持つとも言われていた。
魔女界では神秘的な存在として語られていだけれど…。
その狼男がこの村に現れ、危険視されている。
どうして…?
「よくご存じで…狼男は眠っている者を襲い、その肉体を跡形なく食べてしまいます。」
長老様の言葉に私は驚きを隠せなかった。
(狼男がそんな残酷な事を!)
私の体はガクガクと震えていた。
「ラミさん。すみません。」
そこには私に休むように勧めてくれた家臣の1人が立っていた。
とても申し訳なさそうに手を前にして私に頭を下げてくる。
「俺、何も知らなくて…木陰に行ったラミさんが急に見えなくなって、急いで周りに知らせたら、長老様にその話を聞いて…ほんとにすみませんでした!」
彼はそう言ってなかなか頭を上げなかった。
私を危険にさらしたと気を病んでいる。
そんな彼を見ていたら、震えていることに罪悪感を覚えてしまった。
(もともとは私が夜に町へ出たのが行けなかったんだし。)
「大丈夫ですよ。こちらこそすみませんでした。…あれ?」
私は彼の言葉に引っ掛かりを感じた。
(私が、見えなくなった?そう言っていた?)
「長老様に話を聞いて、また戻ってみたらラミさんが木陰で眠っていて、安心しました。もう食べられてしまったのかと…。」
(私がまた現れた。)
もしかして私が井戸に入ったことや、金髪の女性と会ったのは、夢ではない?
「あれ?ラミさん、ローブに何かキラキラしたものがついてませんか?」
また別の家臣の人にそう言われ、私は自分のローブを見た。
すると私の黒いローブには、所々小さな光が見える。
(これは…金?)
この金は私が湖の底へと落ちていく時に、周りで蛍のようにキラキラと舞っていた物。
それが私のローブに付いている。
私が夢だと思っていた井戸の中での出来事は、本当に私が体験したものなのだと気付かされた。