第五話;諦め
「では、裕也君には特別に女装してもらいましょう」
「はあぁぁぁぁッ!!??」
授業終了のチャイムが鳴る。正確にはなっている。
確かにこれは終わりを告げるチャイムのはずだろ!
「だから、裕也の男のプライドの最後だろう??」
「そこっ!!!!どさくさに紛れて心を読むなぁッ!!そして、何気に上手い事言ってんじゃねー!!」
「そうよ、柚子ちゃん。お楽しみはココから、よ☆」
お楽しみとはなんだぁッ!お楽しみとは!!!!
大体、僕の問題は答えられなかったじゃねーか!!
「人生というのはそんな事だって一度はあることなのよ??私もそぅよ…そう、あれは私がまだ大人になる前の事かしらね」
「突っ込みにくいボケをしなでください!!」
「裕也、君はうるさいなぁ…。もっと静かに出来ないのか!!」
「…え?なんで、僕が怒られてるの??」
そこが気になるよね??
だって、僕が突っ込まなければ誰か突っ込むんだよ…。
大変な事になるだろう??
「いや、柚子なら突っ込める!!(ドーーーーーーーーーン)」
「いや、なに堂々と嘘ついてるの??しかも、ドーンっていらないよね」
「ドーンではない。ドーーーーーーーーーン、だ」
「同じゃん!!!!」
「いや、微妙に『ー』の数と雰囲気が…」
やっぱり、柚子に突っ込みという称号は似合わない。
「こういうのは実践になれば柚子の凄さが分かるってものだよ」
「…大丈夫かぁ??」
「裕也の女装姿のほうが大丈夫かぁ??」
「忘れていた事を引き出すなぁッ!!」
大体の確率で突っ込みの人はいじられキャラになるわけだが、柚子がいじられキャラになるなってないよ。
それに、柚子の突っ込みを想像すると絶対「なんでやねん」しか言わないってオチじゃないか??
うん、きっとそうに違いない。
そう、心中で決めていると、一人でボケている先生の傍に行って言った。
「欧米か!!」
いや、「なんでやねん」よりも使ってはいけないワードだよね!?
絶対、『yahoo』や『Google』で欧米か!!って検索すると「タカ&トシ」というお笑い芸能人が出てくるんじゃないだろうか…。
…これはこれで良いんじゃないか??
先生、さっきから同じ事しか言ってないし、柚子も「欧米か!!」って連発してるだけだし…。
突っ込む相手がいないと結構ラクなんだな…。
ッていうか、柚子は「欧米か!!」って言いたかっただけじゃないのか??
しばらくすると短いため息をつきながら僕の元へと柚子が帰ってきた。
「ん??どぅした??もういいのか」
「うん。飽きた」
あれだけ、突っ込みは任せろって言っていた人の台詞じゃないよね??
やっぱり、突っ込みはボケの人がやっちゃいけないな。
「柚子が突っ込むとスベるもん」
「そりゃあ、欧米か、しか言って無いもんなぁ」
「いろいろ言っている裕也もつまんないけど…」
「…うん。今のは軽く言っちゃいけないぞ」
「柚子にだって、そのぐらいの区別は付くよ」
自覚していってたんだ…。
最悪だ、コイツ…。自覚ないならまだしも自覚してるなんて最悪だよ。
と、柚子がなにやら自分のバックを取り出し何かやっていた。
「なにしてるんだ??」
「飽きたから帰る」
飽きたって…突っ込みもそうだけど学校自体飽きたのかよ…。
最悪なヤツだよ、まったく。
「まぁ、いいや。僕も帰るわ」
「ほう??そんなに柚子様と帰りたいのか??」
「なんで、そんなに自意識過剰なんだよ!!ってゆーか、ちゃっかり自分に様をつけるな!!」
なんやかんやで、僕たちは教室を後にした。
僕たちが帰ってから、何時間か経過し、もう日も暮れて一般では夜と呼ぶくらいの時間帯。
さすがに、先生や皆は帰っただろう、と考えていた。
「私はねぇ、そう教師をやる前だったかしら。先生なりに頑張って生きてきたのよ??なのに、大学に6回も落ちるってどういうことかしら…。説明して欲しいぐらいだったわ」
「それはきっと、先生が馬鹿だったって事だよ。きっと」
「そうですよ、保険の先生が馬鹿でいけないことは無いんですよ!!」
「そうだぜ!!なぁ、皆!!」
「「「「「あぁ!!そうだ!!」」」」」
「…みんな、ありがとう」
まだ、学校で寸劇をしていた。