第98話 ティータイム
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俺は掃除を終えた部屋を出る。俺からすればなかなかの出来だが、ほかの皆さんからするとまだまだらしい。これからも精進あるのみだ。
そして、廊下に目線を向けた時、向こうから歩いてきていた女性と目が合う。
「あ、サキさん。お疲れ様です」
「どうも」
そう言って小さくお辞儀をする。
いつも通り、金髪の前髪は瞳を隠し、表情が良く分からない。だが、その顔半分からでもわかるほどに美形だ。
「……あの? どうしました?」
「いえ、何でもありません」
彼女は、あの事件の時には外出していたのだ。何でも、初めに来てくれた街医者の方にもう一度見てもらおうとしたらしい。
実際に医者を連れ帰って来てみれば屋敷の一部が崩壊してるわ、衛兵の人が来てるわで、てんやわんやだったらしい。
その壊れた所ももう綺麗に直されていたのには驚いたが。
「そう言えば、ローズ様が手が空いたら執務室に来てほしいと」
「分かりました。今すぐ向かいます」
俺はサキさんにお礼を言うと執務室に向かった。
ローズは最近はなんだかんだで忙しそうにしているようで、夕食の時も顔を出していなかった。
精神的な所も心配だ、まず、変な奴に体を乗っ取られていたのもあるが、昔からの恩師が事件の犯人だったのも堪えただろう。
カエル枢機卿の遺体から、聖痕の残滓が確認されたようだ。その能力は精神系に作用する暗示系の能力だということが分かったらしい。俺は、あいつから受けたことがあるから聞くまでもなかったが。
ここから何が分かるかと言うことだが、ローズが飛び降りようとしたのはカエルのせいではないかと言うことだ。
以前からそんな行動をとろうとしては、正気に戻ったとミキさんは言っていた。本来ならばかかったら切れるはずはないはずだが、ローズだけは違った。それが何によるためなのかは分からないが、それで何とか生き延びていたということだろう。そしてその度にローズに会い、掛け直していたのだろう
まず、ローズが家族からいじめられたくらいで飛び降りなんて考えるはずがなかったんだ。
そんな考え事をしているうちに部屋の目に到着した。
コンコンコンとノックをする。
「どうぞー」
綺麗でいて暖かな声が届く。
「俺だ、話ってなんだ?」
俺は道中見繕ってきたティーセットを片手に部屋に入る。
「結構早かったわね。あんたに話があったのよ。あ、砂糖は二つで」
紅いお姫様は片手に持っていた書類を机に置き、部屋にある応接用のソファに座った。
「砂糖二つね……で、また騎士様に話を聞かれるのか? もう知ってること三回は喋ったぞ」
机に二つのコップを並べる。一つはローズのでもう一つは無論俺のだ。
「違う違う。あんたの話よ」
「俺の?」
「今回の事件もあったことだし、本格的にあなたには戦える力を持ってもらうことになったの。前に行った二つの場所覚えてる?」
「道場と魔道施設か。はいどうぞ」
「ありがと。お茶請け、そこの棚にあるから適当にとって。そうそこよ。そこで明日から本格的に鍛えることになったのよ」
「で、俺が剣も魔法も学びたいって話はオッケーだったわけね」
「おっへい?」
口にクッキーを頬張りながら疑問符を浮かべているようだ。
「あ、気にしないでくれ。それにしても明日からか……」
「何か問題でも?」
「問題は無いよ。ただ、どっちも才能らしきものはなかったなと思って」
口につけていた自分のコップを机に置く。
「あの道場のアレンさんの目と魔力の量。二つともかなり信慿性は高いしね」
「取り合えずやれるだけのことはするつもりだよ」
「精々頑張りなさい。特別講師も居るらしいしね」
ローズはそう不敵に笑う。まるで、いたずらっ子のように。
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